都立大学の標準飼料

 都立大学からはたくさんの系統が国の内外に分譲されていますが、ハエを受け取った人達から、餌の調子が大変良さそうなので処方を知りたいという問い合わせがよくあります。国内の大学や研究機関では、都立大学のレシピがすでに広く採用されていますが、まだご存じない方のために紹介します。


処 方

作り方

 鍋に、水の約2/3量、乾燥ビール酵母、寒天を入れ、よく撹拌して酵母をできるだけ溶かしてから火にかけます。残りの水にとうもろこし粉を入れ、だまができないようによく撹拌しておきます。鍋が沸騰したら、溶いておいたとうもろこし粉とグルコースを加え、再び沸騰するまで加熱します。加熱中は、常時、撹拌するようにします。火を止めてからプロピオン酸とボーキニンB溶液を加え、よく混ぜます。

参 考

  1. この餌の最大の特徴は、糖源としてグルコースを用いることにあります。これによっていたるところにいるLeuconostocなどの野生酵母の繁殖を抑えられるため、エサの表面がベタベタになったりするトラブルを防ぐことができます。
  2. 試薬のグルコースは目の玉が飛び出るほど高価で、とてもハエには食べさせられません。でんぷん転化糖というのが菓子原料などとして市販されていますので、それを入手するようにします。砂糖の半値程度が相場です。都立大では、サンエイ糖化(株)で作っている「ダイアモンドシュガー」という銘柄を使っています。このブランドは細菌や酵母などの培地用にも広く使われていますので、出入りの業者に注文すれば入ると思います。
  3. 乾燥ビール酵母は、都立大ではアサヒビール薬品(株)のY3という銘柄のものを使っていますが、他社のものでもかまいません。家畜飼料や菓子の原料として出回っていますので探してみてください。なお、エビオスという商品名で市販されているのは人間用の医薬品で、ハエに食べさすのはぜいたく過ぎます。小規模な場合には、市販のドライイーストを使うのも手ですが、この場合、菌が生きていますので、煮る時間をかなり長めにする必要があります。
  4. 都立大ではキイロショウジョウバエ以外の種も多数維持していますので、飼育が困難な種に合せて酵母の量を多めにしてあります。キイロショウジョウバエの飼育には、酵母の量を20〜30gに減らした方が具合がいいかも知れません。また、寒天の量も10g程度まで増量した方がいいかも知れません。いずれにせよ、上記の分量にあまりこだわらず、自分のところの条件に最適なレシピを開発して下さい。
  5. この餌の難点は、産卵があまりよくないことです。系統を維持する目的にはかえって好都合ですが、大量の卵を必要とするような仕事には向いていません。そのような目的には別掲の「イーストの餌」を用いた方がいいでしょう。