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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 飯能市立奥武蔵小学校の児童を対象とした、地域の川の生き物観察会
実 施 者: 動物生態学研究室 岩浪 創
実施場所: 埼玉県飯能市坂石地区高麗川
実 施 日: 2020年 6月 18日
対  象: 飯能市立奥武蔵小学校3年生10名

<概要/目的>

 奥武蔵小学校がある吾野地区は、荒川の支流である高麗川の上流域に位置し、豊かな自然に囲まれている。企画者は奥武蔵小学校の卒業生であり、在学中に近隣の山や川で遊ぶ中で郷土の自然環境や文化に触れてきた。また両生類や魚類、植物等多様な生物にふれることで分類学や生態学に興味を持ってきた。そのため企画者は、幼少期に身近な自然に触れることは、自身の知的好奇心を高め郷土の自然を理解する上で重要な役割を果たすと考えている。しかし同学校の教員によると、近年の児童は自然の中で遊ぶ機会が非常に少なく身近にある自然がどのようなものか理解していない場合が多いという。そこで本企画では、総合学習の時間を利用させていただき、学校の側を流れる高麗川にて魚類や水生昆虫の採集、観察を行い、児童が吾野地区の自然環境に触れるきっかけを作ることを目的とする。また川の中や川岸を歩く中で自然の危険さを理解してもらい、児童が安全な自然観察の方法を学ぶことを目的とする。さらに採集した生き物の形態や行動をじっくり観察する機会を設けることで、生き物の進化や適応を考える面白さを感じてもらうことも狙いとする。

<方法/企画としての特徴>
はじめに、生き物が豊富に見つかるポイントや網の正しい使い方を講義形式で伝え、その後各自自由に生き物を採集した。
また共同企画者で飯能市の自然観察指導員をされている近藤昇・京子氏にご協力いただき、水槽、プラケース等を多数準備することで、捕獲した生き物の形態や行動の観察が有効に行えるよう工夫した。

<活動内容/具体的成果>
 各自が採集した生き物を水槽やプラケースに入れ、各種、各個体の形態観察を行った。特に沢山採集できたサワガニを材料とし、オスとメスの形態的な違いについてクイズを出して解説を行った。またそのような性的二型が生じる要因を考え意見を出してもらうことで、生態学や行動学の面白さを感じてもらうことが出来た。またヘビトンボに寄生するクビワユスリカの幼虫の観察を行い、生物の生態の多様性を感じてもらうことが出来た。
 さらに、水深が深い場所や流れが早い場所が危険であることを、多くの児童が生物採取うを行なう中で自ら学んでいる様子が確認出来た。したがって本企画の目的の一つである、安全な自然観察が行える児童を育成するという点も達成されたと考える。
 
<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>

 本企画で掲げた3つの目的は、観察会を通して概ね達成されたと感じる。
児童からは、サワガニの雌雄の形態の違いが理解できて面白かったという感想が多かったため、観察を通し生態学や行動学の面白さを伝えられたという達成感があった。また本企画を通し、近年の児童たちは、自然豊かな環境で生活していてもほとんど川や森で遊ぶことが無く、生物に関する知識もほぼ皆無であることがわかった。児童が生き物に興味を持ち山や川で遊ぶ機会が増えることは、彼らの知的好奇心を高める効果がある他、今後の地域の自然や林業等を維持する人材を育成する上で重要であると考えられる。そのため本企画は今後も継続的に行い、多くの児童に生物の面白さや地域の環境の多様性を理解してもらいたいと感じる。

©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
TOKYO METROPOLITAN UNIVERSITY