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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 都立桜修館中等教育学校臨海実習2011
実 施 者: 神経生物学研究室:山田沙佳(M2)・秋元優希(M1)、発生プログラム研究室:後藤悠太(M2)・末吉美佐・豊田千春・露木翔太(M1)、神経分子機能研究室:石田愛美(M2)・平田ゆい・山崎麗奈(M1)、環境微生物学研究室:岩田聡実・川合瑞希(M1)、微生物分子機能研究室:厚海貴裕・佐藤浩一・清水隆之(M1)、動物生態学研究室:松山龍太(M1)、動物系統分類学研究室:佐藤光(M1)
実施場所: 神奈川県葉山町鐙摺海岸
実 施 日: 2011年 6月 3日
対  象: 同5年生160名

<協力者>
吉田慶太(発生プログラム研究室特任RA)、松浦まりこ(進化遺伝学研究室卒業生)、塩入直也・鈴木由季・森田千裕(B4:発生プログラム研究室)、稲垣晶子(B4:運動分子生物学研究室)

<概要/目的>
都立桜修館中等教育学校では、毎年首都大学東京の学生と共同で臨海実習を実施しており、今年で39年目を迎えた。
海にはほぼ全ての動物門の動物が存在し、生物の多様性を学ぶ上で非常に重要なフィールドとなっている。その中でも、干潮時の潮間帯では、様々なヴの生物がタイドプールの中で見られたり、むき出しになった岩に張り付いていたりするため、わざわざ海の中に入らなくても容易に数多くの生き物を観察することができる。
本実習では、磯に生息する様々な動物から藻類まで自分の目で見て採集し、その生物の生息環境や行動、多様性などについて学習する。そして、普段はなかなか見られない動物門の動物を積極的に観察する事により、動物門間や種間の体の構造の違いや生息場所など、生物多様性の意義について学んでもらう。

<方法/企画としての特徴>
臨海実習に先立ち、2011年6月1日に同学校で事前授業を行っている。
授業では、当日の注意事項、生物の系統分類、当日見られる生き物などの説明を行った。

<活動内容/具体的成果>
◎指導員の事前勉強会(5月27日、31日)
採集における注意点などの説明を行い、生徒に指導するべき内容を共有した。また、これまで鐙摺海岸で採集した生物のリストを改訂し、実習で見つかる生物の名前や特徴、危険な生き物などを確認した。

◎臨海実習(6月3日)
・採集準備(9:00〜10:30)
生徒の到着前に、指導員各自が事前に磯の下見を行い、前もって生物のいる場所や、行動していい範囲、そして危険な場所の確認を行った。


生徒が到着したら、指導員はあらかじめ決めておいた班(一班6-8人)の元へ行き、お互いに自己紹介をした後、注意事項、危険な生き物などの説明をあらためて行った。
・磯採集(10:30〜12:00)
班毎に磯に出て採集を行った。指導員は班員の安全を確認しながら、なるべく多くの動物門と植物を採集するように促した。生徒は初めて見る生物や奇妙な動物などに驚きながらも、全員が非常に積極的に生物の採集を行っていた。自分とは違う班の生徒とウミウシなどの珍しい生物を見せ合う光景や、互いに見つけた生物とその場所の情報交換を行っている姿もよく見られた。潮が引いていくのに合わせて沖に出るように指示し、12:00になったら陸に戻るように指示しながら、採集を終えた。

・採集後の解説(12:00〜13:00)
班毎に採集した生物をバットに移し、生物の分類・同定を行った。図鑑で調べる事と並行して、指導員による解説を行った。他の班が採集した生物も互いに観察し合い、多くの門にわたる多種多様な生物を観察する事ができた。また、班の指導員が説明した内容を、他の班の生徒に教える生徒や、指導員に熱心に質問して多くのメモを取る生徒が多くいた。
観察や簡単なスケッチの後、採集した生物を海に戻させ、最後に挨拶をして班を解散した。


<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
今年は学年全員を指導しなければならず、必ずしも生物に興味がある生徒ばかりではないということが不安だったが、実際磯採集を始めてみると、全員班の指導員の話をよく聞き、積極的に海に入っていく姿が見られた。採集中もあちこちで熱心に生き物を探す姿が見られたが、特に、岩場の影を熱心に覗き込み、カニやエビなどの甲殻類を何種類も採集している生徒達がいて、磯採集の意義を理解してもらえていることがわかって嬉しかった。
今年は泳ぐ生徒はいなかったものの、岩で足を傷つけたり、滑ったりした生徒が何人かいたので、もっと安全面に気を付けなければいけないことを痛感した。また、もともと怪我をして採集を見学していた生徒がいたのだが、そういった生徒のためのフォローも何か考えられていると良かったと思った。(山田沙佳)


 自分自身、人に教えるという経験がなかったため、自分の説明がちゃんと人に伝わるだろうかという不安がありました。さらに実習当初は生物に触れるのを怖がる子がおり、指導していくことができるか心配しました。しかし、こちらから積極的に生物について説明していくことでだんだんと興味を持ってもらうことができ、蓋を開けてみれば全員が熱心に採集を行ってくれました。一種ごとに質問を投げかけてくれて、それに対して説明を行ったり、一緒に図鑑で調べてみたりすることで、実習当初よりも生物に興味を持ってもらうことができたと実感することもできました。
 指導員という立場としていかに生徒達に安全に、そして効率的に磯実習を行ってもらうかを実践するために、常に生徒達の先を歩いて、一番バランスを崩しやすいバケツなどの持ち運び方などを指導することで、自分の担当した生徒達に怪我人が出ることはありませんでした。しかし、ゆっくり進みすぎたためか時々生徒が違う場所に行ってしまうことがあり、自分に足りない指導力を発見し、改善していきたいと思いました。(厚海貴裕)


 磯の生物の知識についてはほとんどないが、生徒と一緒に採集を進めていくうちに自身の勉強にもなったので良い経験になった。磯の生物は想像以上に多様で、手持ちの資料以外に分からないことが多数あり、その場で同定出来なかった種については生徒とともに図鑑で調べた。生徒も班行動をしていてくれたお陰で、指導しやすく助かった。磯採集を始める際も、岩場の安全な歩き方、採集の仕方、観察の仕方などの基本的な指導も理解していただき、指導員として困ることはなかった。採集後も、生態的な磯の環境に関する話に対して熱心にメモを取っていただいて、興味をもって聞いてくれていると実感した。
 採集後のスケッチは、多少時間がなくてもしっかり描くべきだと思った。また、30分程度の少ないスケッチの時間であったが、実際に動いている生物を観察してみるのも良いと思った。また、生徒の安全を見守るために、周期的に採集中の各生徒たちの場所へ巡回したのは良かったと思った。その際、指導や生物の説明以外に、雑談を入れながら積極的に会話していったことで、リラックスした雰囲気になれたと思った。(松山龍太)

 高校生たちが思っていたよりも積極的に磯採集を行っていた。そして、とても楽しそうだったので、良かったと思った。想像していたよりも、高校生が、私を頼り、たくさん質問してきたので、始めはどのうように答えればよいのか戸惑ってしまった。しかし、高校生と接しているうちに、どのように指導したらよいのか、どのように質問に答えたらよいのかが、だんだんと分かってきた。磯の生物についても、始めはプリントを見ながら答えるのが精いっぱいだったが、最後の方には、神経生物の方々の助けもあり、高校生が興味を持つような豆知識とともに生物について話すことができた。今回、臨海実習に参加して指導の仕方や磯の生物について学ぶことができたと思う。次回、また臨海実習に参加する機会があった場合、今回のように始めに戸惑うことなく、高校生がより充実した臨海実習を行うことができるようにしたいと思った。(平田ゆい)

 予想していたよりも高校生たちが積極的に採集に取り組んでくれた。その分、予想よりも生徒たちがどんどん沖の方へ行ってしまったため、自分の担当している班員を見失わないように注意した。生徒の興味がウミウシやタコなどに偏りがちであったため、他の動物に注目させることも気を付けた。今回の実習では指導するだけでなく、自分も生徒と一緒に海の生物について学ぶことができた。生徒たちはあらゆる事を質問してくれて、この実習を通して生物への興味を深めてくれたと感じた。最終的には時間が足りないと思うくらい、充実した実習にすることが出来たと思う。課題としては、自分の知識が少なく十分に指導することが出来なかった部分があった為、次の機会ではもっと勉強してから臨まなければいけないと思った。(豊田千春)

実習前は学生達が積極的に参加してくれるかどうかや危ない行動をしないかなど心配が多かったが、実際に行ってみると始めは腰が引けていた生徒も次第に楽しんで採集をしていて良かった。数名遠くの岩場へ行こうとしていた生徒がいたが、頭まで浸かって泳ぐようなことはなく、「泳がない」というルールを一応守っているように見えた。
しかし班の人数が比較的多かったため常に班全体で行動することが出来ず、次第にメンバーがバラバラになってしまったのが反省点である。とりあえずそれぞれの居場所を把握するようにはしたが、安全面を考えるともう少しまとまって行動するように注意すべきだったと思う。
最終的には多くの生物種を採取することが出来、それらの同定や分類を通して生物の多様性や面白さを多少なりとも伝えることが出来たかと思う。また機会があれば、今度はもう少し詳しい説明が出来るようにしたい。(末吉美佐)

私が担当した班には生物が苦手な生徒はおらず、全員が楽しんで採取を行っているようだった。海に入る前に、よりたくさんの門の生物を集め、観察することを班の目標としたので、一つの門にこだわらず、多くの動物門の生物を採取することができたと感じている。また、採取した生物の分類時にはその生物の特徴から属する門を推定してもらうことで実際にその生物門の特徴を学んでもらうことができた。
生徒たちは系統だけでなく、様々なことに疑問を持ち、積極的に質問をしてくれた。その中に生物によって作られたであろう構造物や穴などについて質問があったが、答えることができなかった。系統の知識以外にも磯の生物の生態について より勉強する必要があると感じた。(露木翔太)

事前指導では系統分類についての説明を、クイズを用いて行った。生徒は興味を持ってクイズ参加しており、中には全問正解する生徒もいた。この指導で動物門における分類(どの動物が門で分類した場合に仲間になるか)を理解してくれたのではないかと思う。磯採集当日も、生徒は多くの門に亘って動物を採集しており、偏った動物門だけを採集していることもなかった。また、採集した動物を並べながらどの動物が何門に属するかを尋ねたところ、大方答えられるようにはなっていた。これらのことからも事前指導を行って良かったと感じた。自分自身もクイズを作成する際により興味を持ってもらえるようさまざまな小ネタを用意して行ったので、改めて気がついたことや勉強になることも多々あった。全体を通して160人と大勢の生徒を対象とした企画であったため、中には興味を持てない生徒もいるかと予想していたが、磯採集当日は全員楽しそうに採集をしていた。中高通して6年のうち唯一の学校外での実習であるので、理科の授業の一環というだけでなく、学校生活の中での楽しい思い出となってもらえたのではないか思う。(秋元優希)

今回の臨海実習で私が目的としたことは、生徒に生物の面白さを実感してもらうことと自分のティーチング能力の向上を図ることである。私の担当した班は、積極的に未知の生物を知ろうとする姿勢の生徒ばかりだった。初めは海の中まで入ることを嫌がる生徒もいたが、沖の方が体長の大きな生物(アメフラシ、タコなど)の多いことを知ると、腰の辺りまで海の中に入っていき、楽しそうに海の生物を採集していた。採集後の質疑でも、質問やスケッチを積極的にし、海の生物に興味をもったようだった。質問では、異なる生徒が前にも出たような質問をすることが度々あった。
臨海実習を通して、多くの生徒が磯採集や海の生物の面白さを実感していたと感じた。初めは海の中に入ることをしぶっていた生徒もだんだんと腰の辺りまで水に浸るようになっていったのがその表れだと思う。自身のティーチング能力については、異なる生徒から同じような質問をされたことから、情報を全体に伝えきれていないと感じた。その原因として、声が小さかったや言い回しがわかりにくかった、ということが挙げられる。このフィードバックから、1対1のディスカッションと少し異なり、1対多では、全員がわかるようにに情報を発信するということが必要だと考えた。また、全員が理解できるよう、同じことを何度も繰り返して言うことも重要だと学んだ。(岩田聡実)

今回の臨海実習は、昨年に引き続き2回目の参加だった。昨年よりも、生徒の数が増え、指導が大変だと思っていたが、積極的に磯採集を行う子が多く、指導しやすかった。私の指導した斑は、男女の仲もよく、役割分担して採集を行っていた。採集後には、動物の名前を聞き、班員全員が復唱して、名前を覚えるよう努力していたのが印象的だった。しかし、夢中になるあまり、沖のほうまで採集に行ってしまい、終了時間になっても、なかなか海から出てこなかった。時間を守らせるということは、授業を行う点でもっとも重要なことなので、もう少し、指導を徹底して行う必要があると感じた。比較的早くから、生徒と打ち解けることができたので、実習自体はとても楽しかった。(石田愛美)

 今回の臨海実習で私が指導を担当した班は、女子生徒のみで構成されており、実習を始める前は、生徒たちが生物を採集することができるのか、不安に感じていた。実際に実習が始まると、最初は手足が海水に触れることにさえ嫌悪感を覚えていたようだったが、岩を退かすことでその下に隠れていたヤドカリやカニといった動く生物を見つけると、次第に生徒たちが自ら生物を採集し始めた。最終的には、他の班の生徒たちの活気にも触発され、足を深々と海の中に入れて、大変積極的に生物採集を行っていた。生物採集後の観察でも、各々の生物の特徴を良く捉えたスケッチをし、その生物を採集した周囲の環境について互いにディスカッションも行っており、大変感心を覚えた。
 今回の実習を通じて、自らのコミュニケーション能力や指導力を向上させることができたと感じた。しかし同時に、生徒たちからの生物に関するいくつかの質問の中には、答えられないものもあり、事前にもっと広い知識を準備しておくべきだったと反省した。また、生徒たちが楽しんで生物採集を行うことを優先させたため、同じ種類の重複が生じてしまったことも反省点だと思う。このような反省点を次のアウトリーチの機会に活かし、指導者・受講者ともに実りのある活動を行いたい。(川合瑞希)

 私が指導を任されたのは「注意が必要な生徒がいる」という班だったために、いざ班員と顔を合わせるまで実習の指導を行うということが非常に不安だった。しかし、いざ生徒たちと会い、事前に注意事項の再確認を行ったところ、拍子抜けするほど素直な反応が返ってきたために、不安が一気に吹き飛んだことが、今回の実習で最も印象に残ったことだった。
 班は男子の方が女子よりも多い構成であったが、班員同士が非常に仲が良く、積極的に採集を行っていたため、男女の差はあまり感じなかった。また、顔をあわせた時には水に浸かることを躊躇していた生徒も、少し目を離したすきに膝まで海に浸かって採集に打ち込むほどだった。最終的には班員全員が各々の手で磯の生物に触れ、自らの手で採集を行っていた。採集を終え、浜で生物の観察を行った時も、生物の名前や特徴、採集した環境について熱心にメモを取っており、多くの質問が上がった。生徒が熱心な分、その質問の一部に快活に答えられないことが非常にもどかしく感じるほどだった。
 今回の実習で、私が一番学んだことは一人一人と顔を合わせて会話をすることの大切さであった。注意してほしいと言われていた生徒も、採集を躊躇していた生徒も、直接話をしてみると素直に意見を述べ、そして話を聞いてくれた。今後またこのような機会があるのならば、事前に様々な知識を得て、もっと多くの会話を行えるようにしたいと思う。(佐藤光)

私は今回の臨海実習において、生徒にどのような指導をしたら注意事項などの話をきちんと聞いてくれるのかということに着目していた。しかし、実際に会ってみると、私のグループの生徒は男女共に活発な子が多く、生き物に対して興味をもち自分からどんどん私に質問してくるような子たちばかりだった。最初はどんな指導をしたら一番いいのか戸惑ったりもしたけれど、採集に夢中になっている高校生に対して安全面での指導をしつつ、1人1人の生徒達と話すことでちゃんと向き合うことができた。採取した生物と同一のものを辞典で一生懸命探して仕分けを行い、スケッチなどにも熱心に取り組んでおり、生物の形態についてとても興味をもっている様だった。怪我もなく、無事に実習を終えることができてよかった。(山ア麗奈)

 今回の臨海実習では、生徒に生物種の多様性について分かりやすく説明するように心がけて行った。私の担当した班では明るく活発で積極的な生徒が多くコミュニケーションがとり易く感じた。進んで採集を行い、採ってきた生物の名前を質問してきたり、生物の特徴や系統分類といった私の説明を熱心に聞いてくれたりと、生物に大きな関心をもって実習に取り組んでくれたのではないかと思う。このことから双方にとって実りある実習が行えたと感じた。
 しかし、生徒全員に指導が行き渡らなかったり、目を配らせることができなかったりと指導力や引率力などに課題を見出した。複数の人の視線や集中を自分に向けるように、たとえば大きな声を出して注意をこちらに引き付けたり、あるいは全員の視線が集まるまで説明を始めないなど工夫を凝らした指導を行えたら良かったと思う。今回感じた反省点を改善し、この経験を今後に生かしていきたいと思う。(佐藤浩一)

生徒たちが予想していた以上に熱心で、非常にやりやすかった。もともと生物に興味があるのだと思うが、実際に目で見て手に取り、五感を使って生物と接することで、より関心・理解が深まったと思われる。そういった意味では、実際に接することで生物への関心・理解を深めるといった当初の目的はクリアできたと考える。
ただ、生徒によって興味の度合いや積極性に差があるため、それぞれの生徒の性質を勘案して対応を変える必要があった。今回は、班員全員に同じ対応をしていたため、この実習がより有意義になった生徒とおそらくそうでない生徒が出てしまったように感じた。今回の実習のやり方(班に分けて、生物を探し、分類・生態観察をする)は良かったと思うので、指導者の指導の仕方を改善していくべきだと感じた。6人程度の班ならば、生徒によって対応を変えていくことは可能であると思われるため、安全への注意も大事だが、生徒の性質を見抜いていくことも必要だと感じた。
今回の反省を生かし、次回企画するときは、何のためにやる企画なのかということももっと考えて行いたい。(清水隆之)
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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