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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 八王子いちょう祭りにおける生命科学専攻の研究紹介|進化遺伝学研究室(経営企画演習)
実 施 者: 小川雅文(21846404)、山本廉太(21846436)
実施場所: 八王子市陵南公園(いちょう祭り会場)
実 施 日: 2021年 11月 15日
対  象: 八王子いちょう祭りの来場者(約600名)

<概要/目的>
自らの研究の意義を説明し、専門知識を必要とする事象に対して市民にわかりやすく伝える力を高め、私たちが学んできたことを社会に還元することを目的とする。これは研究者として求められる責任の内、社会的責任と説明責任を果たすことにもつながる。
(1) 生き物に興味・関心をもってもらい、生き物の多面性や不思議な点について学んでもらう。
(2) 都立大生命科学専攻において、どのような生き物で、何を明らかにするために研究をしているか認知してもらう。

進化遺伝学研究室では主にショウジョウバエを使用して生物の進化を遺伝子レベルで解明するために研究を行っている。ショウジョウバエは1900年ごろから遺伝学を中心として様々な分野の研究材料として使用され、研究の歴史の中で様々な突然変異体が作成されて現在まで有用な材料として維持されている。また、一口にショウジョウバエと言っても種によってその特徴は様々であるため、様々な生命現象の研究に対して有用な種がいるのも特徴である。しかし、生物学の研究者でなければ、ショウジョウバエという存在を知る機会は少ない。
東京都立大学では、東京都の事業として系統保存を1962年より行っている。都立大が維持する系統は他のストックセンターにはない種を多く含み、国内外での研究において重要な役割を担っている。
以上のことから、ショウジョウバエ研究者や生物学研究者ではない方々に、私たちが学び、現在研究していることを紹介することは非常に重要であると考える。本企画のショウジョウバエ紹介では、@ショウジョウバエの採集方法、A様々なショウジョウバエ種の紹介とその利用の2点を紹介することを目的とする。

<方法/企画としての特徴>

@ショウジョウバエ採集方法の紹介|動画と道具の展示
ショウジョウバエを用いる研究者は世界中に多くいるほか、高校の生物の授業でも使用されるほど一般的なモデル生物であるが、実際にショウジョウバエを野外から採集する方法を知っている人は多く無い。都立大では長年、野外からショウジョウバエを採集して研究を行なってきており、ショウジョウバエ採集の方法を紹介することは都立大進化遺伝学研究室の活動内容を紹介するのに良いトピックである。そこで、採集に関する動画を作成し、現地で上映する。また、ショウジョウバエの採集に使用する網や、牛乳パックで作成されたトラップを展示する。

A様々なショウジョウバエ種の紹介|ポスターとハエの展示
小学生やそれ以下の方々を含め、幅広い年齢層の来場者に理解していただけるよう、見た目に特徴のある種を中心に9種を取り上げる。これらの種の特徴をA0ポスターにまとめて掲示する。また、脱走を防止するためにテープで厳重に蓋を固定したプラスチックバイアルに入れて展示する。これは、どのようにショウジョウバエを飼育しているかを実際に見ていただきたいという意図がある。

<活動内容/具体的成果>

展示風景


いちょう祭りの参加者のうち小学生以下の方々とその保護者、50代以上の方々に多く見学していただいた。主に子どもの皆様にはバイアルに入ったハエに興味を持っていただき、ご年配の皆様にはポスターに関心を持っていただいた。ショウジョウバエは見た目が家に出てくるコバエと非常によく似ているため、コバエの駆除方法について尋ねられる場面があった。また、以前生物学の研究をされていた方からは、現在のシーケンス技術についてのご質問をいただいた。ショートリードシーケンサーやロングリードシーケンサーに関して非常に興味を持っていただき、進化遺伝学研究室の研究手法についてご理解をいただけた。
この展示を通じて、小学生以下の皆様に興味を持っていただける話し方を身につけることができた。特に、ショウジョウバエのどの形質に注目すると種間の違いに気付けるかという視点で話しかけることは、実験生物への興味を引き出すのに重要だったと考える。また、ご年配の皆様や保護者世代の皆様からは、コバエの駆除方法について問われる場面があった。私たちが研究で使用しているショウジョウバエは人家性のものでは無いため、駆除方法について詳しい知識を持ち合わせていなかった。今後ショウジョウバエの展示を一般の方々の前で行うときは、駆除方法についての質問が来ることを想定して準備しておきたいと考えた。

<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
ショウジョウバエの展示ということで、一般の方々、特に子どもたちは興味を持ってくれないのでは無いかと考えていた。そこで、極力見た目でわかりやすいDrosophila quadrilineataD. busckiiなどを用意したが、種の選択は良かったと感じた。小さい子どもたちほど、「この種は眼の色が違う!」「大きさが違う!」などとこちらが期待しているリアクションをしてくれた。直接触ることもできないし、小さくで興味を惹かれにくいながらも、ハエの面白さを伝えられたと感じている。今後同様の企画を行う際には、もっと体験を重視した催しを追加したいと感じた。例えば、プラ板を使ったハエのキーホルダー作成のように、さらに子どもたちが楽しんでくれることができれば良いと感じた。(小川雅文)

本企画を通してショウジョウバエおよび都立大でどのような研究かがれているかを地元の方々に説明できてよかった。多くの方がショウジョウバエのことを詳しく知らず、特に子供たちに説明や興味を持ってもらえるように接することが出来たのはいい機会になったと思う。また今後もこのような機会があればぜひ参加させていただきたいと思った。(山本廉太)
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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