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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 聖光学院中学校・高等学校における、夏季自然体験授業の講師
実 施 者: 吉峯知歩 (21846438)、長縄健(21846425)
実施場所: 寺家ふるさと村四季の家
実 施 日: 2021年 12月 19日
対  象: 神奈川県横浜市の聖光学院中学校・高等学校の学生(約30人)

<概要/目的>
 神奈川県横浜市の聖光学院中学校・高等学校は、スーパーサイエンスハイスクール(SSH)に指定される進学校であるが、座学の知識の豊富さに比して、生徒たちの自然に対する実体験が希薄である。そこで、同校の課外実習授業「聖光塾」の枠組みを用いて、生徒たちを実際に自然の中に連れ出して自然体験を経験させ、生態学の知見と自分の体験を結びつけるためのワークショップにつなげたいと考えている。
 この活動を通して普段生物学を意識しない人に対してどのように伝えると効果的か、教育的な観点を知る。


<方法/企画としての特徴>
 聖光学院はSSHに指定されている学校であるが、学生たちは理科の勉強と経験を結び付けて考える事ができていない場面が多々見られた。それを踏まえ学生たちに実際に自然下にて観察をしてもらい、それについてこちらから質問を投げかけたり観察された現象について考察してもらうことで生態学的な思考の基礎に触れてもらう。
 午前中に野外で自然観察、冬場に活動する小さな生物から野鳥まで、普段の生活で目にしていても注目しないような身近な生き物に対する様々な角度からの視点を提示する。午後は野外で各自興味を惹かれた対象を選びスケッチをしてもらい、選んだ理由を説明してもらう。生態学的な観点やスケッチの良い点についてコメントをする。それらを通して身近なものでも観察、疑問提起によって研究テーマになり得ること、有用なスキルであることに気づく機会を提供する。


<活動内容/具体的成果>
安全管理や自然観察指導のアシスタントとして参加する
スケジュール 12/19(日)・26(日)
横浜市青葉区の寺家ふるさと村を実施フィールドとする
9:00-12:00 生徒たちと里山を歩きながら、自然観察の方法を解説する 一本の木にどれだけ生き物が見られるか、森の中でどんな音が聞こえるか、スズメはどんな顔をしているか、双眼鏡の使い方、ヒヨドリの食べていたセンダンを触ってもらうなど、五感を使って自然を“体感”してもらう。
12:00-12:45 昼食・休憩
12:45-13:30 里山で各自の「面白いもの」を探してもらい、ジップロックに入れて持ち帰る。
13:30-15:30 室内で各自の選んだ「面白いもの」をスケッチ、その後、なぜ面白いと思ったかを言ってもらい、それに対してこちらから生態学的な観点に触れられるようなコメントやスケッチの表現についてコメントする。最後に「ティンバーゲンの4つの問い」の話を元に身近な現象から問いを立てることはどんな分野でも基盤であり生態学に限らず体系的な物事の理解が大切であると知ってもらう。
15:30-16:00 里山を歩いて寺家ふるさと村のバス停に戻り、解散
野外での解説や、聴衆の興味を引く話術、問いの投げかけ方、結論への誘導など、自然教室や観察会で主催側に必要な技術について知ることができた。特にそれまで自然にさほど興味を持ってこなかった人をいかに引き込むか、次回以降も試行錯誤を繰り返すことでより良いやり方を探っていく必要がある。


<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
勉強が得意で、分からないことは教科書を読んで理解するという習慣がついている生徒たちだった。そこで、目の前にある自然から疑問を出してそれに答えてもらったり、自然から自ら選んできた生物のスケッチをすることでその生物がどのような形態なのか詳しく観察する目を養わせたりしたのは普段とは違ったアプローチでの学び方を知るいい経験になったのではないかと思う。
また、スケッチはその生物がどのようなおもしろい特徴を持っているのかを探し、それが伝わるように描いて最後にプレゼンをしてもらった。私はアシスタントとして生徒たちに対してひと言ずつ声をかけて行ったが、その際に言った内容をプレゼンに取り上げられてしまうことが何度かあった。自分がスケッチに対して言及する前に、まず生徒に問いかけを行うなど、次回以降は生徒たち自身に考えさせるような言葉掛けを心がけたい。(吉峯)

野外で特定の現象を説明するには工夫が必要だと学んだ。特に話題の誘導の仕方について、生徒たちに“自分たちで考えた感”を持たせるために質問を投げかけ回答してもらう。その時に情報を与えすぎると答えを提供してしまうのと変わらず、足りないとレスポンスがなかった。ちょうど良いバランスで問いを投げかけるには訓練が必要である。
スケッチの実習で最初の説明で基本的なルール(今回は白黒の2色で表現すること)だけを伝えた。今まで絵を描いた経験があまりない相手に高度な条件を与えても難しくてつまらないだけで終わってしまうかも知れない、と考え自由に描いてもらうことにしたのは正解だった。この説明は相手によって内容を変える必要があると感じた。講評も行い、生徒たちのスケッチについて良い点を解説できたのは、自分のイラストレーションの経験を活かした役割を担えたと思っている。(長縄)
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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