＜協力者＞
神経生物学研究室：奥溪真人、久保茂男（学部4年）、発生プログラム研究室：志村智、中村瞳、山﨑卓哉（学部4年）
＜概要／目的＞
都立桜修館中等教育学校では、首都大学東京の学生を指導員とする臨海実習を実施しており、今年で40年目を迎えた。
海はほぼ全ての動物門の動物が存在しているため、生物の多様性を学ぶ上で非常に重要なフィールドである。その中でも干潮時の潮間帯では、様々な種類の生物が見られるため、わざわざ海の中に入らなくても容易に数多くの生き物を観察することができる。
本実習では、磯に生息する様々な動物から藻類までの多様な生物を自分の目で見て採集し、その生物の生息環境や行動、多様性などについて学習する。そして、普段はなかなか見られない動物門の動物を積極的に観察する事により、動物門間や種間の体構造の違いや生息場所など、生物多様性の意義について学んでもらう。
＜方法／企画としての特徴＞
臨海実習に先立ち、2012年6月1日に同学校で事前授業を行っている。
授業では、当日の注意事項、生物の系統分類、当日見られる生き物などの説明を行った。
＜活動内容／具体的成果＞
◎指導員の事前勉強会（6月4日）
採集における注意点などの説明を行い、生徒に指導するべき内容を共有した。また、これまで鐙摺海岸で採集した生物のリストを改訂し、実習で見つかる生物の名前や特徴、危険な生き物などを確認した。特に、安全面の指導を重点的に行うように心掛けた。
◎臨海実習（6月8日）
・採集準備（9:30～10:30）
生徒の到着前に指導員各自が事前に磯の下見を行い、前もって生物のいる場所や、行動していい範囲、そして危険な場所の確認を行った。
生徒が到着したら、指導員はあらかじめ決めておいた班（一班あたり8-10人）の元へ行き、お互いに自己紹介をした後、注意事項、危険な生き物などの説明をあらためて行った。
・磯採集（10:30～12:30）
班毎に磯に出て採集を行った。指導員は班員の安全を確認しながら、なるべく多くの生物を採集するように促した。生徒は初めて見る生物や奇妙な生物などに驚きながらも、非常に積極的に生物の採集を行っていた。開始後すぐは潮が満ちていたため手前側の観察から始め、潮が引いていくのに合わせて沖に出るように指示し、12：30になったら陸に戻るように促しながら、採集を終えた。
・採集後の解説（12:30～13:00）
班毎に採集した生物をバットに移し、生物の分類・同定を行った。図鑑で調べる事と並行して、指導員による解説を行った。
観察や簡単なスケッチの後、採集した生物を海に戻させ、最後に挨拶をして班を解散した。
＜感想／課題など（企画力／評価力／自主性等の向上を含む）＞
今年は開始前から棒を持っている生徒や、釣竿を持ってきた生徒など、実習に来たという意識がない生徒が数人いた。また、ウニのトゲが刺さったという生徒もいて、事前の指導不足や大人数に説明する難しさを痛感した。それほど大きな問題は起こらなかったといっても、一歩間違えれば大きな事故につながりかねないので、来年は更にきちんと指導を行いたいと思う。（山田沙佳）
昨年度の反省を生かし、採集を始める前にできるだけ浅瀬で種類がかぶらないよう多くの種を採るように指導したためか様々な生物を集めてもらうことができ良かったと考えている。
しかし班自体がバラけてしまい、全員に行き届いた指導ができなかったことが反省としてあり、以降の教訓としていきたいと考えている。（厚海貴裕）
今年は例年に比べて潮の引く時間が遅かったため、序盤の採集では思うように種類が集まらなかった。結果として採集した生物種に偏りが生じてしまった。また、班の人数が多かったため眼が行きとどかず班員がバラバラになってしまったことも、安全確保の観点において反省すべきである。良かった点としては解説時になるべく生徒の質問を引き出すよう心がけたことで、より海の生物に対する興味関心を持ってもらう事が出来たと感じている。（末吉美佐）
初めてこの実習へ参加したが、複数人を野外で指導する難しさを痛感した。生徒毎の興味の対象の違い意欲の違いなどが有り、特定の生物を求めて一人が遠く沖の方に行ってしまう、ひざ丈ほどの比較的深い磯部を隔てて班が分断する等のトラブルが生じた。指導の質や量も生徒毎に差が出てしまい、実習指導員としても至らない点が多々あったと思う。
今回の教訓を今後のこうしたアウトリーチ活動へ生かしていきたいと考えている。(鈴木航)
私は特定の班につかず、全体を見回る役として、他のTAが困っていないかを確認したり、高校生の安全に注意して回った。また、種類の特定できない生物の同定を手伝ったり、生物の生態を教えたりもした。ウニのとげが刺さってしまった高校生がいたが、持ち合わせていた爪切りと針で対応した。次回はこのような怪我に備えて救急セットを持っていくと良いと感じた。（秋元優希）
昨年より採集できた生物種が少なかったが、高校生は楽しんで採集していたように感じた。人数が多く、班員がばらけてしまったために全員に均等に指導することができなかった。採集後、生物の同定を行なう時間が少なかったと思う。もう少し時間が取れれば、学生自身で図鑑で調べたり動きの観察をするなど、より深く学べるのではないかと思った。（森田千裕）
採集中に班員へ平等に解説などの指導を行き渡らせることが困難であることは、昨年の経験からわかっていたので、採集に入る前の注意喚起や、採集終了後の解説など、全員に指導できる場を十分にこなせることに比重を置いていた。採集中に班が分かれてしまった際も、班員の行先を確認し何度かに分けて巡回することで、誰がどこで何をしているかの把握に努めた。課題としては、班行動をするということや時間の使い方など、当たり前のことを当たり前のことと思わず、細かく指導することだと思う。（佐藤光）
今年度は、昨年度の生徒より生物の採集に高い関心を持っているように感じた。しかしながら、その分生徒が勝手に動き回り、私の目の届かない時間が生じてしまった。事前に安全面に関して指導していたとはいえ、これは良くなかったと反省している。また、系統名や生態の説明、スケッチの時間はあまり興味がないような印象を受けた。もっと生物の魅力について伝えられればよかったと思う。（佐藤浩一）
予め班でまとまって行動するよう喚起し採集を始めたが、班の生徒各々のペースによって班がばらけてしまうことが何度かあった。生徒の安全を考えると、目の届く範囲内でしっかりと班をまとめ行動しなければならないと思った。今年は潮の引く時間が昨年よりも遅かったからか、見つけられた生物種が少なく感じられた。特に生物が苦手な女子生徒がもっと興味ももって磯採集に取り組めるような工夫があればと感じた。採集後３０分ほどで、採集した生物の同定と分類、その解説をしたが、もう少し解説の時間がとれればと思った。今回はこの解説の時間に、生物の分類や特徴・磯の特徴・採集した生物にまつわる問題などをまとめたスケッチブックを活用してみた。クイズを盛り込むなどして、全班員の興味を引くような工夫もした。同定や分類、スケッチで時間を取られてしまったため、解説の時間があまり取れなかったので、時間配分に気をつけられたら良かった。もしかしたら、２時間の磯採集の時間を少し短くして、この解説の時間に充てることができたら、有意義に時間が使えるのかもしれないと思った。これからもこうした磯採集を通して、生徒に生物に触れ合うこと、生物を知ることの楽しさを伝えられるような活動をしていきたいと思う。（塩入直也）
予めどのような生物がどこにいるかをチェックしたので、高校生に採集ポイントなどをアドバイスできた。これにより、短時間の中での様々な生物の採集に貢献できたと思う。反省点は、班員がすぐにバラバラになってしまい、彼らの安全確保に目を配れなかったことである。また、採集生物の中でTAが分からないものがいくつかいたことである。次回には、班員がバラバラになる前に声をかけたり、しっかりした予習したりすることで改善したい。（大沼耕平）
採集前に、より多くの生物を見つけること・怪我に気をつけることを特に強調して指導し、生徒もそれを守ってくれたので、有意義な実習となった。途中、班が多少分かれてしまったが、巡回しながら全体に目を向けるよう努めた。採集に飽きてしまった生徒には、よく観察してみると小さい生物も見つけられることを教えたところ、興味をもって再び採集してくれたのはよかった。皆とても積極的で、私に多くの質問を投げかけてくれたのだが、生物の構造についてなど、答えられないものもあった。ＴＡとして事前にもっと十分な予習をするべきだったと反省している。(中澤啓一)
好奇心旺盛な高校生の集団をまとめるのがいかに難しいことであるのかを感じた。最初に、靴が汚れるのが嫌だと言い海へ入るのをしぶる者、生き物に触れるのが苦手だと言う者もいた。逆に、すごく海洋生物に詳しく、小さい釣り竿を持参してきた者もいた。それぞれ興味や積極性がバラバラで、班が完全に二分してしまった。なるべく声をかけて目を離さないようにしていたが、なかなかに大変であった。だが、最後に採集した生物を観察する段階になると、全員真剣に話を聞いてくれたり、それぞれで活発に議論をしていた。今まで生物にあまり興味がなかった人が、この実習をきっかけに少しでも生物を好きになってくれたらと思った。（鈴木由季）
