＜概要／目的＞
都立桜修館中等教育学校では、約４０年間、首都大学東京の学生・院生を指導員とする臨海実習を実施している。
海はほぼ全ての動物門の動物、及び多様な植物が存在しているため、生物の多様性を学ぶ上で非常に重要なフィールドである。その中でも、干潮時の潮間帯では様々な種類の生物が見られるため、わざわざ海の中に入らなくても容易に数多くの生物を観察することができる。
本実習では、磯に生息する様々な動物から藻類まで、多様な生物を自分の目で見て採集し、その生物の生息環境や行動、多様性などについて学習する。そして、普段はなかなか見られない動物門の動物を積極的に観察する事により、動物門間や種間の体の構造の違いや生息場所など、生物多様性の意義について学んでもらう。
＜方法／企画としての特徴＞
臨海実習に先立ち、2012年5月15日に同学校で事前授業を行っている。
授業では、当日の注意事項、生物の系統分類、当日見られる生物などの説明を行った。
＜活動内容／具体的成果＞
◎指導員の事前勉強会（5月16日、22日）
採集における注意点などの説明を行い、生徒に指導するべき内容を共有した。また、これまで鐙摺海岸で採集した生物のリストを改訂し、実習で見つかる生物の名前や特徴、危険な生き物などを確認した。今回は例年よりも対象学年が一つ下がった（高校２年生から１年生になった）ため、特に当日は安全面を重視するように説明した。
◎臨海実習（5月27日）
・採集準備（9:30～10:30）
生徒の到着前に指導員は集合し、各自が事前に磯の下見を行い、前もって生物のいる場所や、行動していい範囲、そして危険な場所の確認を行った。
生徒が到着したら、指導員はあらかじめ決めておいた班（一班は約10人）の元へ行き、お互いに自己紹介をした後、注意事項、危険な生き物などの説明をあらためて行った。
・磯採集（10:30～12:00）
準備ができた班から順に磯に出て、採集を行った。指導員は班員の安全を確認しながら、なるべく多くの生物を採集するように促した。生徒は初めて見る生物や奇妙な生物などに驚きながらも、積極的に生物の採集を行っていた。今回は最初からかなり潮が引いていたため、先に潮が引いた沖の方で採集を行う様に生徒達に指導し、終了時間が近付いた頃に陸に戻りながら採集をするようにと呼びかけた。
当初の予定では12:30まで採集の予定だったが、どの班も12:00までにはかなりの生物が採集できていたため、予定を切り上げて12:00で採集を終えた。
・採集後の解説（12:00～12:45）
班毎に採集した生物をバットに移し、生物の分類・同定を行った。図鑑で調べる事と並行して、指導員による解説を行った。
観察や簡単なスケッチの後、採集した生物を海に戻させ、最後に挨拶をして班を解散した。
＜感想／課題など（企画力／評価力／自主性等の向上を含む）＞
昨年までと違って今回の対象は４年生（高校1年生）だったので、遊び気分で海に来る生徒が多いかと思っていたが、思ったよりも大人しく、真面目かつ熱心に実習に臨んでくれる生徒が多かった。しかし、泳ぎはしないものの海の中ではしゃいでいる生徒や、生き物を投げて遊んでいる生徒も一部にはいて、指導不足を感じた。何より、軽傷ではあるものの、転んで傷を負う生徒が昨年よりも多かったので、安全面の指導を強化する必要があると思った（山田沙佳）
事前指導の時は、生徒たちは興味を持って話を聞いているようであったが、当日になると講義の内容はほとんど頭の中からぬけているようだった。インパクトのあるように生き物クイズを実施するという工夫をしたが、動物門の名前や分類の話はやはり高校生には難しいようなので、クイズの内容を工夫する必要があると感じた。今後どのように変更するかは、他のTAとも相談して検討していきたい。今回は、昨年と違い4年生（高校1年生）が対象であり、安全面での心配をしていたが、勝手な行動をする生徒はいなかった。しかし、生き物を投げる生徒やはしゃいで気付かないうちに擦り傷や切り傷を負っている生徒がいたため、こちらからの注意喚起を徹底するのはもちろんのこと、高校の先生方にももっと指導をしていただきたいと感じた。特に、事前指導では海での危険について話す時間をもっと増やす必要があるのではと感じた。高校生は楽しい実習をすることができたようので、また機会があればこれらの反省点を活かして是非参加したいと思う。（奥溪真人）
昨年も桜修館の臨海実習に参加させて頂いたが、去年に比べて、今年は真面目な生徒が多かった。その為、指導をする際、安全面での負担は少なかったと感じた。また、個々の生徒で磯採集への積極性にばらつきがあった。積極性の高い生徒には、更に興味を持ってもらう為に色々と助言を行えたと思う。しかし、積極性の低い生徒に、どうやって磯採集に興味を持ってもらうかという点には課題が残ったと感じる。(山崎卓哉)
生物再発見。これがこの日、高校生に対して与えたものです。
海に生物がいるのは知っている。ヒトデや貝が磯に生息しているのは知っている。
だが、その他にもいろんな門の生物がいることを知っていただろうか。
また、その生物たちがどのような生活をしていることも。
今回の臨海実習では、そのような一歩踏み込んだ「知」を経験させることを意識しました。そして、今後自分から踏み込んでみたくなるような。そのために、磯の生物に対する知識を、「どこがおもしろいのか」という所に重点を置いて与えました。班員の生物に対する新鮮な反応から、再発見はみんなできたと思います。ですが、みんな踏みだすようになるかは分かりません。そのなかでも一人、自分から一歩踏み込むようになりました。うちのオープンキャンパスにも関心示してくれました。
今後、このようなTAをやる機会がありましたら、班全員が生物学に興味を持ち始めるような実習をしたいです。（山本謙太郎）
昨年、一昨年もTAとして参加したため、実習の流れはわかっていたが、今年度も磯採集中に班がばらけてしまったこと、足を怪我してしまった生徒が出たことが反省点としてあげられる。実際の採集により、磯には様々な生き物がいることを学べたと思う。しかし、それらの生き物について詳細に観察したり、TAから説明をする時間があまりにも短いと感じた。せっかく多くの種類の生き物を採集できても、すべてをスケッチする時間がなく、もったいないと思った。生き物の観察においてスケッチが重要であることは事実だが、採集できたすべての生き物に目を向けるためには、必要に応じてスケッチの代わりに写真を撮ることも方法の一つかもしれない。（森田千裕）
今回、初めてこの臨海実習に参加したが、個人的に指導する側として知識がとても足りないと痛感した。生徒側も事前授業を受けているようだが、基本的な分類知識やスケッチの方法が分かっていないように感じた。その点をもっとTAとして指導できればよかったと反省している。また、担当した班員に女子が多かったので、開始時水に濡れることに躊躇していたため、スムーズに開始できなかった。前もって、どのくらい濡れるかの説明や着替え持参を徹底すべきであると感じた。（高橋絢子）
この実習に参加したのは初めてだったが、熱心に採集を行う生徒が多く、指導側としても楽しい実習であった。生徒らにはただ解説を行うのではなく、採取した生物の体構造を見せながら、生徒と共に他の生物との共通点・差異を探していくように指導を行った。生徒自身が、疑問を持ち、独自で調べ、考察し、答えを見出していく楽しさを感じてくれていれば幸いである。(大西由之佑)
昨年も参加させてもらい思ったことだが、大人数の高校生をまとめながら指導していくのは大変なことだと改めて思った。人数がいれば生徒の興味も様々で、もちろん積極性も様々だったので、全ての学生に良い指導をするということは本当に難しいことだと学ぶことができた。指導をする上ではただ知識を与えていくだけではなく生徒自身に興味を持ってもらうことが重要だと思い、自分で探すのではなくなるべく生徒自身にいろんなものを見つけてもらえるように促しながら指導することができた。わかりやすく動く生物だけでなく様々なものに目を広く向けることで、様々な種類の生物に興味を持ってもらえるように促すことが重要であると感じた。（志村智）
今回初めて実習に参加させていただきました。生徒達にとっては実習と言っても殆ど遊びに近い気分で参加していたようで、こちらの思惑がなかなか伝わっていないと感じました。せっかくフィールドに出ているので生徒達の自由にさせることも大切ですが、見ておくべきものや見せておきたいものに到達しない生徒が出てしまっては元も子もありません。上手く誘導する必要がありました。私自身が生徒達と距離を置き過ぎていたこと、解説が分かりにくいものになってしまったことに深く反省しています。生徒達が実際に海へ入る前に進化や系統に関する知識を付けておくことも必要ではないかと感じました。また、スケッチに関しては時間の余裕もなく、「対象の理解」よりも単に「書くこと」が生徒達の中で優先されてしまっているようで、学習の順序や時間の使い方を把握しておくべきだと感じました。(大門夢果)
今回、初めて臨海実習に参加させて頂きました。生徒たちが磯の生物に関心をもって積極的に採集していたことは良いことだと思いました。しかし、系統や体構造などの事前に学習しておくべき知識が無かったと感じました。学習した知識と実際の生物を照らし合わせてより理解が深まるような目的で実習を行うことが必要だと感じました。（古田顕尚）
今回、初めての実習参加でしたので生徒の安全確保を最重要としていた点には緊張しましたが、生徒たちが熱心に採集を行い、生体へ興味をもって臨んでくれた姿を見ることができ、非常にうれしく思いました。また、鐙摺海岸で観察されうる代表的動物門を採集し、それについて生徒への説明が行えたことは良かったと思います。しかし、事前指導が入っているにもかかわらず系統分類ができないようで、せっかくの臨海実習での経験が身につきにくいのではとの懸念が残りました。今後の実習に活かせられるよう、事前・事後指導について考えていきたいと思いました。(高橋 美由紀）
今年の臨海実習は４年生ということもあり、生物学に対する知識、安全に対する意識、両方の観点で心配であったが、事前指導が行き届いていたのか、スムーズに観察ができたと思う。ただ、熱心な生徒とそうでない生徒の差が例年より激しく、今後の課題として、生物学に対する面白みを知ってもらう為に、事前指導と実習の工夫をしていきたい。(久保 茂男)
今年、初めて実習に参加させていただきました。高校生に教える機会はほとんどないため実習前は少し不安でしたが、熱心に採集を行う生徒が多く、うれしかったです。普段は研究室内で実験を行っているため、フィールドに出て生物を間近で観察することが出来、私自身良い経験をすることが出来ました。今回の実習が生徒たちの生物に対する関心を深める機会になってほしいと思います。(牛尾 ちづる)
TAとして本臨海実習に関わるのは3回目でした。これまでの反省を生かして、班の全ての生徒の興味をひく指導をすることと、生徒が主体的に参加できるような工夫をすることの2点に留意して今回の実習に臨みました。なるべく身の回りのことと結び付けられるようにし、質問を投げかけて生徒参加型にする等、採集後の解説も工夫することができたと思います。採集前に、どのような生物がどこにいるのかといった簡単な指導ができれば、生徒がさらに目的意識を持って磯採集に取り組めるようになると感じました。（塩入 直也）
今回、初めて本臨海実習のTAとして携わらせていただいた。ただ「知っている」ということと「誰かに教える」ということは全く異なるので事前準備を怠らないようにしたが、実習当日は同定の難しい個体も採集され、説明が疎かになってしまった種もあったことが反省点である。安全面においては学校側の事前指導が行き届いていたようで、私の担当した班では怪我や危険な行動に出る生徒はおらず、安心して採集に集中することができたと思う。実習開始直後は乗り気でなかった生徒もいたが、採集作業を進めるにつれて海の生き物に対して興味を持ってもらえたので、これからもこの実習をぜひ続けてほしい。（志賀 優）
今回初めて本臨海実習にTAとして参加しました。班員の中でもたくさんの種類を集めようとする生徒、ウミウシだけを必死に追いかける生徒、ある特定の区画中の生物だけを採集をする生徒など、同じ磯採集をするのにも持つ視点が違い、面白いなと感じました。また、「これは何ですか？」と疑問をすぐに投げかけてくれ、熱心な生徒が多い印象を受けました。しかし、指導する側としては安全面を第一に考える必要があり、班単位の磯採集であることから必ずしも生徒の自由にさせることが良いわけではないと思いました。大きな事故等がなかったから良かったですが、何かあってからでは遅いので集団行動であるということは常に念頭に置いておかなければいけないと改めて感じました。（明石 澪）
今回初めて本実習にTAとして参加した。磯で採集した生物の説明をすることになっていたが、いかんせん自身の知識が少なく、事前に勉強はしていたもののきちんと説明できなかった生物も数多くあった。この点について、まず1つ反省である。また、実習中に大けがをした生徒はいなかったものの、足などに切り傷を負うなど軽傷の人がおり、安全面についてもう少し気を配るべきであった。しかし、多くの生徒が生物や採集に興味を持ってくれていたので、実習はスムーズに進んだと思う。本実習を通して、参加してくれた生徒が生物の新たな一面に気づいたり興味を持ってくれれば幸いである。(松本 翔一)
この臨海実習では皆楽しそうに海の生き物を探し、採集することをしてくれていたので良かったと思います。私は高校生が見落としてしまった生き物がいたら教えてあげたり、種類を多く取るために探すコツを教えたりと、採集についてサポートはしっかりできたと思います。しかしながら、けがをしてしまう生徒がいたり、班行動がおろそかになってしまったりと問題がなかったとは言えませんので、そういった点については次回以降TAは留意しなければならないと感じました。注意しすぎても実習が楽しくなくなってしまうので、TAが近くで気を張ってサポートしてあげることが大切だと感じました。（新田 竜斗）
