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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 山崎中学校 水生生物実習2023
実 施 者: 津田啓佑
実施場所: 山崎中学校
実 施 日: 2023年 7月 8日
対  象: 山崎中学校 8組の生徒 15名

<概要/目的>
地球上で陸の10倍以上の面積を占める海では、地球上に存在するほぼすべて動物門を観察することができる。海藻の上、磯の岩の下や、海底の泥の中など、様々な場所に動物の多様性を見ることができる。本企画の目的としては、生徒達を実際に磯に連れて行き、彼らに五感を使い磯採集することで多様性を実感し、動物の系統分類についての理解を深めてもらうことが理想である。しかし、特別支援学級である点や、アフターコロナである点を踏まえて集団で磯採集に向かうことは難しい。そこで、私たちが磯採集を行い、捕まえた生物と標本を中学校に持ち寄ることで、観察、分類をおこなう実習を企画した。また、事前授業では実習における注意点の説明、生物の系統についての講義、臨海実習で見られる生物の紹介クイズなどを行った。これにより、事前に学んだ知識を生かして、実習当日に自ら実習の意義等を考えながら、生物に触れる事が期待できる。
一方企画者は、生徒の海の生き物への興味を高めるため、事前に海の生き物クイズや、系統学的な知識がない生徒への指導をおこなう経験を通して、指導力や企画力の向上を目指す。

<方法/企画としての特徴>
(事前指導)7月8日
パワーポイントによるスライドを用いて、山崎中学校の理科室で行った。生徒に興味を持ってもらうため、生徒参加型の講義を意識し、講義中に全体に向けて質問などを行い、スライドは実物の写真を多く取り入れて作成した。実習時に知っておいてほしい知識は穴埋めにし、配ったテキストに書き込んでもらう形式をとった。また、より興味を持ってもらうために、生物はクイズ形式で紹介した。クイズもただ座りながら解くのではなく、答えだと思うところに行くといった体を動かしながら解答を行う択一形式にした。さらにクイズの中で、特に重要な内容は、カラー印刷のしおりを用意する事で、より一層内容を強調した。
(実習)7月13日
動物や生徒の安全のため、個々の受講者(中学生15名)への細やかな指導が求められる。本企画で企画協力者(3名、大学生2名、大学院生1名)の協力を依頼し運営した。実習は、3つの班に分かれていただき、1時間ごとに実習をおこなった。

<活動内容/具体的成果>
(事前指導)
15人の生徒を3グループに分けた。1グループずつ、プレゼンテーションを行った(50分の授業)。内容は以下の通りである。

1:生物の系統分類
系統分類学とはどういう学問かについて、分類を行うことにより、生物種をより理解しやすくなることや、進化の課程の推測につながる事などを中学生に分かるようにかみ砕いて説明した。生徒参加型の講義を意識し、写真や図を多用したスライドや、特に重要な部分をしおりに載せるなど、わかりやすさ、理解しやすさを重視した。

2:実習に関するクイズ
本実習で見られる生物の写真を用い、門ごとに生物の分類や特徴を、クイズ形式で紹介した。クイズはすべて選択問題にした。解答は生徒が正解だと思う先生の近くに行き、別途用意した解答用紙シールを貼ってもらう形式をとった。体を動かしながら、生徒参加型のレクリエーションを行い、飽きさせず印象に残るよう努めた。最後に正答数に応じてランク付けし、生徒の興味を引き付ける工夫をした。


事前授業の様子1


事前授業の様子2


事前授業の様子3

3:中学生からの質問会
大学生と関わる機会がなかなかないと考える。実際どのような生活をしているかなど、ざっくばらんな質問会をおこなった。


質問会の様子

(実習)
15人の生徒を3グループに分けた。1グループずつ、実習を行った(50分の実習)。内容は以下の通りである。

1:実習準備
実習に向けて、標本の展示や海水、バットの準備、採集した動物に異常がないかを確認した。
動物は水槽に入れた。肉食や草食などを考え、同じ水槽内でけんかが起きないようにした。また、カニなどの危ない生物は別の小さい水槽に移すなどの対策を講じた。

2:実習
事前授業の知識をもとに、この種類の生物は水槽のどこにいるかなど質問し実際に指さしてもらう形で実習をすすめた。そして、動物をバットに移し、実際にさわることで、軟らかいや硬い、あるいは特徴的な形を確認するという形式をとった。


実習の様子1


実習の様子2

<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
水生生物を目で見て、実際に直接手で触り、生物に対しての興味や疑問が生まれる有意義な機会を中学生に提供することができたと考える。かわいい、気持ち悪い、さわり心地が良いなど中学生らしい率直な反応を示しながら、嬉々として生物を触る中学生の姿を目の当たりにして、苦労して企画した甲斐があったと思った。こういった経験が、生物への探求の一助となれば嬉しいと思う。また、事前授業では昨年と違い、中学生からの質問コーナーがあり、そこで質問を通して、交流を深めることができた。お互いに打ち解け、緊張もほぐれたところで実習が行えたところが、非常に良かったと考える。さらに、昨年の課題として挙げられた時間管理という点もグループ分けを行い、少人数に対して集中して行えたため、解消することができた。しかし、当日に至るまでの企画の段階で不備や詰めが甘い箇所があり、先生方や事務の方に迷惑をかけてしまった。そうした点は、今後の反省点である。なにはともあれ、自ら企画した実習を満足して終わらせることができた。企画者として貴重な成功経験をつめたと考える。
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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