TMU logo
生命科学専攻
トップ
「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 2023年度進化遺伝学研究室オープンラボ「ショウジョウバエ展」
実 施 者: 内田友夏、唐木書子、辻愛莉紗、萩野里奈、山本春菜
実施場所: 8号館4階エレベーターホール
実 施 日: 2023年 7月 17日
対  象: オープンラボ来場者(計196名)

<概要/目的>
 大学説明会という規模の大きなイベントの一環としてオープンラボを行うことで、来訪者に生物学分野に対する興味・関心を持ってもらうことを目的とした。また、種ごとに面白い特徴を持つショウジョウバエを数種展示し、ショウジョウバエを用いた研究、および本研究室の分野である進化遺伝学に興味を持ってもらうことも目的の一つであった。さらに、来場者が東京都立大学への入学を考えている高校生とそのご両親であることから、来場者と積極的にコミュニケーションを取り、大学生活や勉強方法など気になることを質問していただく環境を作ることで、高校生の進路決定の助けとなることを第二の目的とした。そして、生物学やショウジョウバエに関する知識がない方でも楽しめ、理解できるような企画を準備し、自身の企画発案・運営力の向上を図った。


<方法/企画としての特徴>
上記の目標を達成するために、企画を行った。
1. 多種多様なショウジョウバエの展示
 モデル生物であるキイロショウジョウバエを含め、主に日本に生息するショウジョウバエを中心に、形態・生態的に特徴のあるショウジョウバエ14種を展示した。それぞれの種の特徴を記載したポップと合わせて展示することで、生物の多様性や進化を実感してもらった。また、顕微鏡で実際に細かい特徴まで見てもらうことで、ショウジョウバエにより興味を持ってもらえるようにした。
2. ショウジョウバエの生態や分類方法の展示
 そもそもショウジョウバエとはなにか、どこに生息しているのかなど、基本的な情報を展示した。この企画では本研究室が作成したホームページ“ショウジョウバエに学ぶ生物多様性と環境”を参考に、資料を作成した。
3. 採集方法の展示
 ショウジョウバエの採集方法について展示した。採取方法については2021年国際研究アウトリーチ企画『Fruit Fly Lab Channel@Youtube』にて作成した動画を見せた。本企画では、ショウジョウバエが意外と身近な存在であること、さらに野生種を使用した研究も可能であることを知ってもらうことを目的とした。
4. ポスター展示
 本研究室の3グループそれぞれの研究内容に対応したポスターを作成し、展示した。今回は研究成果ではなく研究概要をメインにしたポスターにすることで、知識のない方でも理解しやすく、進化遺伝学の研究に興味を持ってもらえるよう工夫した。


展示の様子T


展示の様子2


展示の様子3


<活動内容/具体的成果>
来場者:196名
 14種ものショウジョウバエを展示し、その他にもポスターや展示物を作成したことで、当研究室の研究内容やショウジョウバエの魅力を伝えることができたと感じる。ポップを使ったショウジョウバエの展示ブースでは、「こんなにも多くの種類がいるのか」と驚かれることが多かった。また、最初はショウジョウバエに抵抗を示していた方でも、種ごとに個性あふれる特徴があることを説明すると、皆様興味をもって質問してくださった。ショウジョウバエ展示も、標本だけでなく実際に飼育しているハエビンを置いたことで、より目で見て楽しめる企画を運営することができたのではないかと思う。ただ、開催場所がエレベーターホールであったことから、普段20℃または25℃で飼育しているショウジョウバエ達が午後には暑さで弱ってしまい、企画終了時にはほとんど瀕死状態になってしまっていたため、次回は開催場所を考え直す必要があると思った。また、今回は計6枚あるポスターをポスターボード3枚で展示したため、裏にあることに気が付かず、表だけ見て帰ってしまう方もいらっしゃったので、呼びかけなどの人員配置やポスターの展示方法、動線を再考する必要があるだろう。
 また、読んで理解できるような展示物作成を心がけたことで、昨年度のオープンラボの課題であった、説明に過剰に時間を取られる問題を解決し、来場者の方とのコミュニケーションが取りやすくなったと感じた。結果として、なぜショウジョウバエを使っているのか、皆虫が平気なのか、など素朴な疑問を多くいただき、質問しやすい環境を作ることができたと思う。また、去年より圧倒的に大学受験や受験勉強の方法、大学での講義やサークル活動などについて質問を受け、お話することが多かったことから、高校生に学生の生の声をお届けできたと感じる。
 私たち自身の成果としては、生物学の専門的知識がない一般の方、それも東京都立大学への入学を考えている高校生に、大学や研究室の魅力を伝えるためにはどのようにすればよいかを考えることができ、目標としていた企画者としての企画能力の向上は達成できたと考える。また、ポスターや展示物作成時に専門用語をかみ砕き、分かりやすい図の作成を心がけたり、質問されたときに答えられるよう各々が事前に準備をしたりしたことで、専門的知識を一般化する発表力が身についたと思う。また、196名という多くの来場者を応対したことで、コミュニケーション能力や対応力を養うことができた。


午前の様子


午後の様子


顕微鏡を用いたショウジョウバエ観察の様子


<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
 今回のオープンラボの企画のメインはショウジョウバエの展示であった。去年のオープンラボで、他研究室が研究に関する生き物を展示する企画を行っており、参加者が気軽に研究室を知ることができる良い企画であると考え、今回の企画に取り入れた。一方で、展示する生き物がハエ、ということもあり、参加者が興味を持たないのではないか?という不安があった。しかしそれは杞憂だったようで、196名という多くの来場者が来てくださり、皆様ハエに興味を持ってくださった。また、初めは怖いもの見たさで参加した方が、ハエの観察をしていくうちにかわいい、面白い、などのプラスのイメージを抱くようになり、展示の目的であるショウジョウバエを用いた研究への関心を抱いてもらう、という目的も達成できたのではないかと思う。
 ショウジョウバエの展示とともに生息場所や分類方法などの基本的な情報を様々な方法で展示した。また、各グループで研究内容をポスターにまとめ、展示した。これらの作業は、参加者層を意識し、基盤知識の程度や言葉の選びなどにも気を使い行った。この作業を通して、表現力を身に着けるという企画者としての目的も達成できたのではないかと思う。しかし、事前知識が足りないと感じたり、要望に答えきれなかったりと準備が足りないと感じることも多々あった。次回のオープンラボでは、参加者の視点からどのような質問や要望をいただくか予想したうえで準備をする必要があると感じた。
M1内田友夏

 ショウジョウバエ展を通して、普段は話す機会のない中高生やその保護者の方とお話しでき、自分の研究や普段の大学院生活を顧みる良い機会になったと感じた。来場者は、大学受験を見据えた学生とその保護者の割合が多かったため、受験や生活に関することも含めて質問はないかと自然に声をかけるよう心掛けた。
 今年度のオープンラボは前年度までと全く同じ企画ではなく、前年度までの反省を生かして新たに企画を行った。具体的には、前年度は研究室内に展示物を置き研究室見学と展示説明を兼ねるというものであったが、来場者が増えると列ができて展示説明までに時間を要してしまい、来場者を待たせしてしまっていた。そこで今年度は、エレベーターホールで展示を行い研究室見学は希望者だけという形を取った。また机に展示物を並べ、来場者が自由に展示できるようにし、人の流れが滞らないように工夫して企画した。
 今回オープンラボを実施して、企画段階に期待していた以上に来場者の方に楽しんでいただけたことを実感した。多様なショウジョウハエを顕微鏡でより詳細に見ていただくことで種による違いを理解してもらえ、私たちの生活に身近なショウジョウバエに対し興味を持ってもらえたと感じた。また、ポスターの内容がよく分からないのでと質問を受けて口頭で説明したところ、ご理解いただき面白そう!とのお声をいただいた。研究内容に共感いただけたことがとても嬉しく、また昨年度参加したときに比べて自分の説明力の向上を実感した。一方で、ポスター展示だけではなかなか内容が伝わらないことを身に染みて感じ、文章のみで伝えられるよう書く力の向上に改めて尽力しようと身を引き締めた。
M1唐木書子

 今回のオープンラボは来場者が生命科学科に興味を抱くようなわかりやすい研究活動の説明と、関心を抱くような展示を行うなかで、自身の研究活動の説明能力の向上と、わかりやすいポップ作製力の向上を目的としていた。昨年度は、ポスターを利用した研究内容の説明・研究室内で実験器具を用いた基礎的な生物学の説明を行っていたが、研究室に多くの来場者を誘導することが困難でお待たせしてしまった点、研究内容の発表ポスターの説明が詳細まで書いてあり解説に多くの時間を要した点が問題であった。そこで、今回は前年度と内容を変更し、研究対象であるハエの展示を行うことで日ごろ研究に触れていない来場者に興味を抱いていただけるようにした。また、研究内容のポスターも研究の詳細ではなく、概要がわかるように作り直した。ショウジョウバエの展示のためのポップ作成では、そのハエのキャッチ―な特徴を記述することを心がけた。結果として来場者の方が展示の前で足をとめ、ポップを読んでくださることで展示のハエをきっかけにコミュニケーションをとることができた。興味を示してくださった方にはさらに研究内容のポスター説明を行った。概要を示したポスターであったため、昨年度より理解していただけたように感じた。当日は9時30分から準備を行い11時から16時まで展示をおこなっていたが来場者が途切れることなく来ていただき、自身の研究活動の説明能力とわかりやすいポップ作製力が向上したと考えている。
M1辻愛莉紗

 オープンラボ代表者としての責任や役割を果たすため、大変な部分や苦労する部分も多かった。しかし、発案から準備・運営まで、研究室を総括しながらスムーズに企画を行うことができたと思う。この成功は、共同企画者やその他のラボメンバーの助けがなければ成し得なかった。企画を無事に終えた今、多くの人と助け合う大切さを改めて感じた。
 企画発案の段階では、昨年度のオープンラボの反省点を先輩方から自主的に調査した。そのため、改善策を考えながら企画を立案することができ、自身の企画力の向上を図ることができた。特に、ポスターの内容を研究結果から研究概要に変更したことで、度々来場者の方から「分かりやすい」とのお声をいただき、自身の発案力、専門用語を分かりやすく伝える力の向上を実感した。また、私たちが来場者に説明するのではなく、来場者が私たちに気になることを質問できるようなコミュニケーションを心がけたことで、普段自分たちでは思いつかないような質問をいただき、改めて自身の研究について考えさせられるよい機会となった。
 今回のオープンラボでは顕微鏡でより詳細にショウジョウバエを見ていただくブースが想像以上に人気だった。そのため、次回のオープンラボでは顕微鏡台数や標本を増やすなどして、より力をいれ、企画力を磨いていきたいと思う。
M1萩野里奈

 オープンラボの企画・運営に関わるのは今回が初めてだったこともあり、自身だけでは至らない点も多々あったが、研究室のメンバーの助けを借りることで資料の作成や準備などをスムーズに行うことができた。企画書やポスターの作成において多くの人の助けを借りさせていただき、研究室のメンバーに助けられたことを改めて実感した。
 展示は午前11時から午後4時まで行ったが、午前午後を通して多くの方に来ていただくことができ、研究室における実験やショウジョウバエの生態・多様性について知っていただくことができたと思う。それに加えて、ショウジョウバエという生物をあまり見たことがなく興味関心が薄かった高校生やその保護者の方々が、研究内容や様々なハエを見比べる中で様々な質問を我々に投げかけてくださったことから、生物学への興味関心が薄かった層に対して十分に働きかけることができたと感じる。また、展示で扱う多種多様なショウジョウバエの学名やその姿かたちなどを観察し、研究室のポスターを案内する中で、自身が研究で用いているショウジョウバエや研究室の研究テーマへの理解、興味関心が深まったと実感することができたことも大きな収穫だったといえる。
 今後のオープンラボでは、ショウジョウバエや研究における知識を深めるとともに来場者の方たちの興味関心をもっと引き出せるような説明ができるよう、自身の能力を磨いていきたいと思う。
M1山本春菜
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
TOKYO METROPOLITAN UNIVERSITY