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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 細胞生化学研究室オープンラボ
実 施 者: 富山黎、勝見起麟、小林菜々、太田晴香、山中祐季
実施場所: 8号館1階イニシアチブスペース
実 施 日: 2023年 8月 12日
対  象: 来場した一般の方々(高校生や保護者) 約220人

<概要/目的>
オープンラボに際して作成したポスターの掲示と細胞観察体験を行い、訪れた方々に本研究室での研究内容とその意義や実際に行っている実験手法、研究室配属後のおおよその生活リズムを知ってもらう。
研究室配属後のイメージを持ってもらうことで大学入学に際する進路決定やその後配属を希望する研究室選択の助けとなること、また、研究室で使用している細胞を顕微鏡で観察してもらうことで細胞生化学研究室での実験や研究に興味を持ってもらうことを、対象者に対しての目的とした。
企画者としての目的には、専門的な知識を持たない他者に対して研究内容を紹介することでアウトプットの実践とし、分かりやすく説明する能力を身につけること、研究内容のより深い理解を得ること、実際に研究内容を発表する際の練習とすることがある。さらに、現在の研究を振り返り、反省点や改善点を見つけ出すことで今後の研究をより良いものにすることや、観察に使用する細胞について調べ、パネルとしてまとめることでその特性を理解し、今後の研究に活用することも挙げられる。

<方法/企画としての特徴>
事前に作成したポスターを掲示し、訪れた方に口頭で説明をする。質問があればそれがポスターの内容に関することでも、それ以外の受験や勉強、学内の様子などに関することであっても、適宜答えていく。また、細胞の観察ブースへと誘導し、細胞の説明を行いながら3種類の細胞を観察しその違いなどを見てもらうことで、研究室での研究に興味を持ってもらえるように案内した。

<活動内容/具体的成果>
【富山】多くの場合、研究内容やその意義について説明した内容に対し、あまり質問されることはなかったが、偶にかなり鋭い質問をしてくださる方もいて、咄嗟に的確かつ簡潔に説明する事ができ、良いアウトプットの練習になったと感じた。
しかし、掲示したこと以外の内容、特に院の進学率や受験、男女の比率などについては私が外部から院に進学してきた生徒であるため、あまりうまく答えられなかったこともあったと思う。オープンラボが高校生向けのイベントであると分かっていたため、あらかじめある程度は内部進学した同級生に確認しておくべきだったと反省している。

【小林】事前準備では研究室のスケジュールに関するポスターを作製した。卒研生および大学院生がどのような生活を送っているか具体的に知ってもらうことでができた。当日は、主に研究内容についてをポスターに合わせて説明した。来場者は高校1,2年生が多く、特に高校1年生はまだ生物基礎を習っていない人もいるためポスターを見るだけでは「全く分からない」と言われることがほとんどであった。そのため、ポスター展示だけではなく言葉でより簡単に説明をすることでおおまかな研究内容については理解してもらうことができた。高校生も保護者の方も自ら質問をしてくれることは少ないが、話しかけてみると質問があがった。より興味を持ってもらうために自ら声をかけることを意識した。

【太田】事前準備では本研究室で行っている研究内容を紹介するポスターの作成を担当した。具体的には、研究室に所属する全員の研究テーマの軸にある「タンパク質の分解」という現象について、分解されることの意義、代表的なタンパク質分解システム、分解を介した低分子量Gタンパク質の機能制御という3つの項目に分け、それぞれ説明する文章と図を作成した。専門用語の使用は極力避け、イメージを持ちやすいように具体例を提示するなど、この分野についてあまり詳しくない人に「難しそう」ではなく「面白そう」と思ってもらえるようなポスター作りを意識した。また、自分が現在行っている研究テーマの根本にある「タンパク質の分解」の意義などを改めて認識することで、自身の研究の目標についても再確認する良い機会となった。オープンラボ当日はポスターの横に立ち、見に来てくださった方に対してポスターの内容を1~2分程度で簡単にまとめた説明や質問に対する回答を行い、状況に応じて細胞観察体験の案内も行った。ポスターを見てもらうだけでなく口頭での説明を行うことで来場者の方の理解度がぐっと高まったことを感じたため、自身が当日口頭で説明したような要約文がポスターのどこか一部分にあるとよりよかったのではないかと考えた。

【勝見】事前準備では、細胞生化学の研究で用いられる実験手法を紹介するポスターの作成と、参加者に細胞の観察を体験してもらうための細胞サンプルを準備した。ポスター作成に関しては、細胞生化学の研究で広く用いられる「免疫染色」という実験について手法をまとめた。細胞生化学に携わっていない様な方々にも理解して興味をもっていただける様に言葉を選ぶことや、模式図を使用することを意識した。細胞サンプルの準備に関しては、参加者が細胞の形を理解しやすくするため、オープンラボ当日に細胞が培養容器の接着面の70〜80%程度を占めている状態になるように意識した。オープンラボ当日は主に細胞観察の体験を担当した。顕微鏡の操作方法の説明や、実際に観察した数種類の細胞の詳しい説明をおこなった。研究に用いる細胞を何故変えるのかなど、一括りに「細胞」といっても、実際には様々な特徴があるということを理解してもらえるように意識した。その他にも、大学生活に対する質問が多かったので随時対応した。全体を通して、自身の研究についてより深く知ることができたと感じた。手法について、その原理をより詳しく知ることができた。また、自身が使用している細胞以外についても知識が必要だったので良い勉強になった。

【山中】
事前準備では、実験手法を紹介するポスターと観察に使う培養細胞のサンプルを用意した。ポスターでは細胞生化学の研究で広く用いられているウェスタンブロッティングについて紹介した。基礎的な知識がない人でも分かるように、できるだけわかりやすい言葉や表現を使うことと、それぞれの手順が何のために行われているのかを伝えることを意識した。観察に使うための細胞サンプルについては、HeLa細胞を細胞密度が80%程度になるよう準備した。さらに、勝見さんの他にも研究室の人に協力してもらい、HEK293細胞も用意してもらった。
オープンラボ当日は主に細胞の観察を担当した。観察してもらう際は細胞の形態に注目してもらうよう促した。説明の際は、研究によって細胞を使い分ける理由や、それぞれの細胞の特徴について紹介した。勝見さんと合わせて3種類の細胞を用意したことで、細胞の形態を比較しながら観察してもらうことができ、形態が違うことを実際に見て確かめてもらったことで、その後の説明がスムーズになり、説明を理解してもらうことができた。


<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
【富山】今回のオープンラボで掲示した内容は高校生にとってはかなり難しい内容であったと思う。しかし、その内容を私たちが口頭で説明することで、内容について簡単にでも理解して貰えた様子であったため、目標であった相手に合わせて必要な説明をするという部分はおおよそ達成でき、非常に有意義な体験を得られてと思う。

【小林】研究室のスケジュールを示した内容のポスターは珍しいのか、写真を撮っている人が多かったので来年も継続して掲示したいと感じた。なるべく簡単な言葉を使っていても高校生にとってポスターを読んで研究内容を理解することは難しく、研究内容には高校で習う内容から記載する方がより興味を持ってもらえるかもしれないと感じた。細胞を実際に観察してもらうという体験型にすることで、多くの人にお話を聞いてもらうことができたと感じた。ラボ全体の研究内容を説明するため、自分で使っていない細胞や実験方法の知識を得ることができた。

【太田】研究内容と実験手法を紹介するポスターは高校生にとっては少し難しい内容であったと思うが、私たちが口頭での説明を加えることによってある程度は理解していただけたようであった。説明する回数を重ねるごとによりスムーズに、要点を明確にして話せるようになり、来場者の方の反応を見ても、分かりやすく、かつ興味を持ってもらえるように研究内容を伝える能力を養うという自身が掲げていた目的は達成できたと感じた。ただ、特にオープンラボ開始直後に来てくださった方に対しては、午後にいらっしゃった方に比べて拙い説明になってしまった部分があり、これは反省すべき点である。混雑時の動線なども含め、当日を迎えるまでの間に自分が何をすべきかシミュレーションをしておくとよかったと思う。また、徐々に来場者の方に自然に、積極的に話しかけられるようになり、質問をしやすいような会話の進め方というのも分かってきて、コミュニケーション能力の向上という効果も得られたのではないかと考える。研究に対して「面白そう」と言ってくださる方や「ためになった」と感謝を伝えてくれる方がいらっしゃって、非常に嬉しく感じ、自信につながった。

【勝見】実験手法に関するポスターは、高校生や生物学に携わっていなかった方々には少々難しかったのではないかと感じた。概要はある程度理解してくださる方も多かったが、その実験を行う理由や細かい原理などは伝わる様に説明することができていなかったと感じた。参加者の今ある知識への理解が足りなかった。難しい実験種法ではなく、「何を知りたいのか」や「なにを知るために用いる研究手法なのか」など更に噛み砕いてメインに説明するべきだったと感じた。細胞の観察では、興味をもってくださる方が非常に多かったと感じた。漠然と知ってる「細胞」というものを実際に見ることで、驚く方や興味をもってくださる方も多かったので嬉しかった。

【山中】
当日は次々に人が来ていたので途中で持ち場を交換することが難しく、私は細胞の観察の担当が中心になってしまい、自分が作成したポスターを使って説明をする機会があまり得られなかった。これに関しては、事前にオープンラボ当日の人員配置をよく考えるべきだったと反省した。
また、来場者の多くは高校1,2年生だったため、ポスターを見ただけではわからないことも多く、研究内容の紹介を担当していた人は、かなりかみ砕いた説明をしなければならなかった。実験手法の原理を中心に紹介するポスターではなく、研究内容を補足するために実験の目的をメインにしたポスターを作成したほうが良かったのではないかと考えた。この件についてはオープンラボに来る人に研究の背景知識がないことを考慮して、ニーズをきちんと把握するべきだったと考える。
しかし、細胞観察は多くの人に興味を持ってもらうことができ、説明をする中で質問をしてくださる人や面白いと言ってくれる方も多かった。説明のしかたについて、初めの方は私が一方的に話してしまったことは反省点だが、途中からは相手に問いかけをしながら説明することができた。相手に問いかけをしながら説明したほうが、相手の反応を見ながら説明を付け加えることができたうえに、興味を持って話を聞いてもらうことができた。この点はコミュニケーション能力の向上につながったのではないかと感じる。
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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