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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 東京都医学研究所 主催 サイエンスカフェ 身の回りのものを使って虹色を作ろう!-酸性・アルカリ性?-(23/07/29)
実 施 者: 江川 優花(M1)、長谷部 愛佳(M1)、船田 淳太(M1)
実施場所: 東京都医学総合研究所
対  象: 近隣の小学校に通う生徒30名

<概要/目的>
 東京都医学総合研究所の近隣の小学生30名(実際は4歳〜12歳までの30名)を対象に「身の回りにある溶液を使って酸性かアルカリ性を予想しPHを調べる」というテーマで溶液の性質や理科の面白さを知ってもらう。また、私たちが常日頃から扱っているPH試験紙や水溶液の性質を、理科を詳しく学んだことがない子供たちにも分かりやすく説明することが求められるため、説明能力の向上が期待される。


<サイエンスカフェ実施に関しての安全対策>
・用意したもの:防護メガネ、手袋
実験を行う小学生には防護メガネ、手袋をつけ、水溶液が体に付着することがないよう細心の注意を払った。
・小学生30人を5グループ(6人/1テーブル)に分け、アシスタント大学生が各テーブルにつき2人常駐し、実験補助。
・毒性が高い水溶液(水酸化ナトリウム溶液など)に関しては、大学院生が実験を行い、安全に留意した。
・用意した発表スライドでは、酸性のトイレ用洗剤と塩素系漂白剤を混ぜることがないよう、家庭での自由研究の際の注意喚起を行った。


<方法/企画としての特徴>

0. オープニング
参加者を各グループに案内し、自己紹介などのアイスブレイクを行う。
その後、酸性・アルカリ性、pHなどの簡単な説明をして、机に用意した7種類の水溶液についてのpHの予想をしてもらう。

1. 身の回りの溶液のPHを当てよう
身の回りに存在する水溶液(レモン果汁、アルカリ性洗剤)などを用意し、各水溶液のpHを予想してもらう。その後、PH試験紙を使って答え合わせする。

材料:
レモン果汁、白ワイン、食塩水、重曹水、トイレ用酸性洗剤、弱アルカリ性洗剤、水酸化ナトリウム溶液、pH試験紙、スポイト









2. 紫キャベツ抽出液を使って虹色を作ろう
紫キャベツ抽出液は添加する水溶液の性質によって色が異なる。そこで、紫キャベツ抽出液に1の様々な抽出液を入れることで虹色を作る。

材料:
レモン果汁、白ワイン、食塩水、重曹水、トイレ用酸性洗剤、弱アルカリ性洗剤、水酸化ナトリウム溶液、紫キャベツ抽出液、スポイト、紫キャベツ、ハサミ、皿、ビーカー








<活動内容/具体的成果>

応募総数:48名
当選者:30名
欠席:5名



1.身の回りの溶液のPHを当てよう
 最初に簡単な自己紹介をしてから、次に行う実験作業の説明をしました。スライドでは写真と文で流れが書いてありましたが、子供たちにとっては慣れない作業だと思ったので、聞き取り易い話し方を意識し、ポインターで視線誘導しながら説明をしました。とくに安全面を強調するために、安全ゴーグルやグローブの着用の際には声のトーンや抑揚を意識しました。実験ではスポイトの扱いに慣れていない子供たちもいて、強く握りすぎることで1滴以上滴下してしまうこともありました。pH試験紙は参加者ごとに切っておいた方が広がりすぎずよかったのかもしれないと、次回の体験時の参考になりました。しかしながら滴下する前に試験管内で練習をしてもらうことで皆上手くできるようになり、無事にpH試験紙の色の7色の変化が観察されました。
一通りの実験が終わった後に再度登壇し、色が何色に変化したのか結果を共有しました。最後に、実際の研究ではpHを正確に計測するためにpHメーターを使うことを写真とともに説明しました。

2.紫キャベツから抽出液を使って虹色を作ろう
 各班で実験を行う前に、パワーポイントを用いて手順について説明してから行うことで、実験に対するイメージを持たせることを目指しました。また、イベント当日は電子レンジを用いて実際に紫キャベツからアントシアニンを抽出するところを参加者に見せ、溶液の色の変化でアントシアニンを確認することができました。イベント当日は前日に同様の手順で抽出したアントシアニン溶液を用いて実験を行い、今回のイベントで使用した溶液が各班で予想したpH順になるかを実際にアントシアニンと混ぜて確認しました。
 具体的な成果として、6班全部の班で目標である虹色の作製に成功したことです。溶液を混ぜ間違えることなく、実際に色が変化するときに歓声が上がりました。一人もケガすることなくイベントを終えることができたことが何よりの成果だと思います。

【アンケート結果】
実験の後にアンケート用紙を配布し、シールで設問の投票を行ってもらいました。
また、次の実験の参考にするために興味のあることを自由に書いてもらいました。




<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>

【江川】
 イベントの企画から実施まで全ての段階に関わり、1つのイベントを作り上げるというのは私にとって初めての試みでした。今回の企画のターゲットは年齢が大きく離れている子供たちであり、彼らは何に感動するのか、なんの現象に興味があるのか、さっぱり未知の状態でした。初期では知識や情報が全くない0の状態でしたが、様々な方からのご助力やご支援を頂き、無事に成功させることができました。お世話になった皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。
 活動を振り返ると、安全面を考慮することと、複数人との連携については、自分の納得のいく活動ができたと思います。しかしながら個人的な課題として、マルチタスクの中で企画の準備を計画的に進めること、頻繁にメールを確認が上手くできなかったと反省しています。5月から7月に渡り準備を行ってきましたが、研究活動、就活のタスクもあり、時には自分の計画性がなかった故に企画について考える余裕がなかったりしました。今考えると、子供たちが楽しんでもらえるようなコンテンツを更に用意できたのではないか、興味が湧くようなプレゼンを出来たのではないかとあります。また、企画の連携は主にメールで行っていましたが、私は頻繁にメールチェックする習慣が出来ていませんでした。これらの反省を生かし、また次の機会があるときは、計画的に自分のタスクを進め、時間の余裕を意識的に作り、新しい企画やコンテンツを考える余剰時間にしていきたいです。
 企画書で目標としていた、参加者に科学の楽しさを実体験してもらうことについて達成できたと思います。また、企画者としても、企画を成功させるための想像力、共同能力を成長させる良い機会になったと思います。今回の経験を通して「難しい話をわかりやすく、楽しく伝えること」の大切さを学ぶことができました。専攻も興味関心も背景も全く異なる一般の方に説明するときには、どのように導入の話を持っていけばいいのか、どの用語について補足する必要があるのかなど、自分以外の誰かを考える想像力が必要になってきます。今回は子供たちの背景を考え、興味を持ってもらえることを想像し、話をかみ砕き補足することなど実践できました。この力は社会人として様々な人たちと出会う場面で必要な力になってきます。社会で必要な力を今学べたことを幸運と考え、広い視野を持つ人になるためにも心に留めておこうと思います。


【長谷部】
 初めてサイエンスカフェの企画立案から当日の運営に携わり、最初は上手く子供たちと打ち解けられるか、心配でした。しかし、理科に興味を持っている子供たちが大勢来てくれ、そのような心配をしている暇もなく、たくさんの質問を投げかけてくれ、楽しくディスカッションできました。中でも、鋭い質問だと思ったのが、小学校5年生の男の子の、
なんで/どうやって紫キャベツは普通のキャベツを違ってアントシアニンを作るの?
です。私自身、なんで紫キャベツだけがアントシアニンを作って紫外線から体を守る機構を取り入れたのかまで、調べていませんでした。小学生からの純粋な質問から、日常生活でのなぜ?という疑問をもっと大事にしようと気づかされました。
 今回のサイエンスカフェでは、実際に手を動かして実験してもらい、小学生が水溶液をPH試験紙に垂らしたことによる色の変化を楽しんでいる様子が見られました。[予想→実験→結果]の研究に必要なサイクルを体感してもらうことが叶ったのでは考えます。そのため、小学生にとって実験の面白さに触れてもらうという本企画の目的が達成されたと思います。また、企画者としては、「水溶液を予想する」部分では日常のどんな場面で水溶液が使われているか、何をしているのか(汚れ落とすetc.)などを話し合う中で、相手に分かりやすくPH試験紙の仕組みを伝えたりなどの説明力が磨かれたと感じました。また、親御さんからのアントシアニンなどの色素に関する質問にも自分の考えを自分の言葉で伝える言語表現力を養うことができました。今後、小学生の興味に沿ったテーマで開催できるように準備していきたいと思います。


【船田】
初めて自分たちでイベントを企画し、成功させるまでの体験は初めてで新鮮でした。イベントの参加者が主に小学生と若い年齢層だったため、専門的な内容や現象を分かりやすく説明することに苦労しました。参加者の大半が理科に興味を持っていたこともあり、参加者の考えや興味を大切にしたイベントになったと思います。最初は小学生向けにイベントを企画していましたが、保護者からの質問や要望が多かったため、より幅広い対象に向けた活気あるイベントにすることができたと感じます。私が担当した「紫キャベツからアントシアニンを抽出する」実験では達成感を味わうことができましたが、同時に改善点も見えました。当初、リハーサルでは全参加者が同時に、1番から6番までの溶液とアントシアニンを混ぜて色を確認する予定でした。しかし、イベント当日は班ごとの進行や年齢のばらつきが影響して実験の進度がバラバラになり、急遽班ごとの実験に変更せざるを得ませんでした。これは、計画段階で参加者の立場から状況を想定しなかったためのミスと反省しています。さらに、台本の準備不足も課題でした。リハーサル時よりも時間が余ってしまい、アドリブで時間調整する術が足りず、無駄な時間が発生しました。次回のサイエンスカフェでは、予期せぬ事態にも柔軟に対応できるように、「準備」の大切さを再認識し、万全の状態で行いたいと思います。
今回の経験と学びを次回のサイエンスカフェに活かし、より臨機応変に対応できるよう心がけます。参加者のニーズや状況をより深く考慮し、よりスムーズなイベントを実現したいと思います。
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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