<概要/目的>
本企画は当研究室准教授の福田公子がSSH(スーバーサイエンスハイスクール)に指定されている熊谷西高等学校で行う特別講義の一貫として行う。この企画では、高校生が自ら研究を計画し実験、発表する事で研究の面白みや発生学の考え方を身につける事を目的とする。
<方法/企画としての特徴>
これまでの企画ではニワトリ胚の観察や、胚を用いた実験方法について講座を行ってきた。また、それらの方法を用いて自らがどのようなテーマについて研究を行いたいのかを議論してきた。
今回はこれまでの内容を踏まえて、より具体的な研究計画を立てることが目的となる。そのためのプレゼンテーションやディスカッションを通して、論理的思考を鍛えるとともに、質疑応答などで積極的な発言力を身につける。
<活動内容/具体的成果>
高校生の班による発表と質疑応答を行った。その後質疑で挙がった意見を元にもう一度班議論を行った。発表内容は今後の研究テーマやその背景、実際に行う実験とその意味、日程など具体的な内容をまとめたもの。
生徒は自分たちの発表はもちろん、他の班の発表に対しても意見を述べるため積極的な発言や短時間での論理の整理など研究コミュニケーションにおける重要な能力を鍛えることができたと思う。
企画者も高校生の発想を意識しながら幅広い視点でディスカッションに参加し、その中で実現性なども踏まえた指導を行った。
<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
我々にはないような自由な発想を持っている生徒が多かったため、ディスカッションは自分たちにとってもなかなかに難しいものだった。今後も研究を続けることを考えると、他者の興味に対して興味を持つことや、発表を聞いてその発表中に理解し質疑で議論することなどは高校生の経験以上に自分たちの今後に必要なことである。そのため今回のように様々な新しい意見がある中で多くの発表に対して議論を行うことは生徒にとっても、我々大学院生にとっても非常に有意義だったと感じた。(志村智)
遺伝子がいつ何処で転写されるのかを知る事は、発生の分野で欠かす事のできないエッセンシャルなテーマである。それぞれの器官が秩序だった組織を形成する為には何が必要なのか考える事は高度な問題で、生徒たちが理解してくれるのかやや不安であった。しかし、驚いた事に体節の分節メカニズムについて考えついた生徒がいた事だ。彼らは90分に1回分節する為には、何らかのシグナルがまだ割れる前の後方の中胚葉からでているのではないかと自ら仮説をたてていた。そして、その研究方法についても未分節中胚葉の一部を切り抜く等を思いついていた。少しのヒントと観察する試料を与えただけでアイディアが次々とでてくる事にとても驚き、私自身もこの心を失っていたのかもしれないと深く考えさせられるアウトリーチになった。(栗下大三)