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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 第19回みやこ祭『動物生態&系統ラボ×都立大いきもの園』企画内展示
実 施 者: 長井聡道, 戸田美緒香, Bounsanong Chouangthavy
実施場所: 12号館205〜208室
実 施 日: 2023年 11月 1日
対  象: 第19回みやこ祭1日目及び3日目の来場者

<概要/目的>
 東京都立大学第19回みやこ祭1日目・3日目のテクノスクエア『動物生態&系統ラボ×都立大いきもの園』にて、動物系統分類学研究室として陸上節足動物の展示を行った。各企画者が自身の研究する分類群に関する展示を設置し、来場者への解説や質疑への対応を行った。また、みやこ祭開催の前日に準備日を設け、その日に主な準備を行った。
 本企画では、都立大大学祭の来場者を幅広く対象とし、展示を通じて土壌動物や動物系統分類学を知り、親しみを持ってもらうことを目的とした。また企画の準備や実施を通して、企画者が自身の研究内容や幅広い分類群に対する理解を深めることも目的であった。さらに研究室の日本人学生と留学生らがともに企画を実施することで、英語力、伝達力、コミュニケーション力の向上を図った。

<方法/企画としての特徴>
 各企画者が自身の研究する分類群やより広範な関連分類群に関わる展示を設置し、来場者に対して解説や質疑への対応を行った。生体も含めた標本を展示し、写真やパネルなども用いて視覚的に目を引く展示とした。また、来場者に対して、企画の満足度や解説への理解度などを尋ねるアンケートを紙と、QRコードを用いたGoogle formの2通りで実施した。さらに留学生と企画を行い、日本国内に留まらない生物標本を展示した。生体のふれあいコーナーも設置され、体験的な学びにもつなげた。
 本企画は動物生態学研究室、いきもの!サークル東京の展示と合同で行われた。これらの展示と合わせて見ることにより、来場者はより多様な生物の存在やそれらのつながりを知ることも可能になっていた。


<活動内容/具体的成果>
 生体を含む標本やパネルなどを展示し、来場者へ解説や質問対応を行った。
 企画を開催した2日間で、計953名(11月2日:117名/11月4日836名)が来場した。

会場では本企画に対するアンケートを行った。その内容は、
・Q1:企画の満足度を問う5段階評価(とても不満〜とても満足)、
・Q2:企画内容への理解度を問う5段階評価(まったく理解できなかった〜とてもよく理解できた)
・Q3:特に良かった・印象に残った展示の自由記述
・Q4:企画への意見・感想の自由記述 であった。
計36名(11月2日:12名/11月4日24名)から回答が得られ、その内訳は小学生7名、高校生1名、大学生・大学院生15名、社会人/その他12名、無回答1名であった。全来場者数に対する回答率は3.8%であった。Q1とQ2への回答は以下のグラフに示す。


【写真1】動物系統分類学研究室の展示スペース@


【写真2】動物系統分類学研究室の展示スペースA


【写真3】展示を鑑賞する来場者2名


【写真4】ふれあいコーナーにてゴキブリを手に乗せた来場者(左)と解説する長井(右)

 Q3の自由記述式回答では、ふれあいコーナーでの体験や、クモ、ヤスデ、ラオスの昆虫など様々な標本が印象に残った展示として挙げられた。Q4の自由記述回答では、様々な生物を見ることができた楽しさや興味深さが挙げられていた一方、脊椎動物やさらなる生体標本や体験的な展示を求める回答もあった。
 これらのアンケート結果からは、幅広い年齢層の来場者に土壌動物への興味・関心を持ってもらう上で、本企画が概して効果的であったことが見受けられる。特に生体標本やふれあいコーナーでの観察体験が来場者の印象に残ったことが伺える。節足動物や生体標本に対する好意的な意見が寄せられたことも、土壌動物への興味と親しみが増したためではないかと考えられる。展示はほとんど日本語のみで作成したにもかかわらず、英語での回答も得られた。


<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
【長井】
 今回の展示では、使用可能スペースが予想よりも狭かったことや、展示直前・展示中に飼育生体が多数死亡したことなど不測の事態が多く起こり、準備日を含めた全日程を通じてその対応に追われることとなった。ただ、そのトラブルと初日時点でのアンケート結果を受けて、初日の展示終了後に追加採集し、賑やかしとして配置した生体が、自分の意図に反してのちの集客や解説の起点として役立ったことは、来場者視点で展示を考えるよいきっかけとなった。反して何の役にも立たなかったトラブルとして、スペースの関係から当初計画していた採集用具コーナーを展開できなかったのは個人的に残念である。洞窟内採集で用いるアイテムには特殊なものが多く、見ごたえのある展示を作れるだろうと予想しているため、次の機会には必ず用意しようと考えている。
 アンケートへの回答率は、回答方法にGoogle Formでの入力を加えたにも関わらず前回(7/17)にもまして低かった。前回は展示ブースが大部屋でひとまとまりになっており、口頭でアンケートへの記入を促せたことが回答率上昇の原因ではないかと考えている。来場者は我々のブース以外にも様々な魅力に晒されながら大学祭を回っており、ましてや次の部屋への期待が高まっているタイミングで、展示の末尾に置いてある小さなアンケート用紙には目が行きづらいのかもしれない(展示列の始点・中間地点などに紙を置いて記入ブースを末尾に設けるなどの対策が考えられる)。自分はオープンラボに限らずサークル活動の一環としても学外での展示を行うことがあるため、いかに多く来場者からのフィードバックを得るかは今後の大きな課題である。
 総括としては、どのような展示があると来場者の目に留まりやすいか、また、どのようなトラブルが発生し得て、その場合にどうするかについて改めて考える機会を得られた有益な展示であった。今後に役立てていきたい。

【Bounsanong】
Based on the observations made during this exhibition, it was surprising that numerous individuals visited our arthropod exhibition. They thoroughly enjoyed viewing and interacting with the real specimens. However, explaining certain aspects to each visitor individually proved to be challenging, as many visitors arrived at the same time and explored various arthropods. The number of visitors varied during each hour from the first day to the last day, with a notable increase, especially in the morning and afternoon, when it reached hundreds of visitors. Additionally, visitors had the opportunity to draw and write their impressions on whiteboards about what they saw, with a particular focus on arthropods they found fascinating, especially the young and teenage visitors. My team and I learned a great deal from this exhibition activity, with a focus on key lessons related to event planning, management, social communication, teamwork, and Japanese language communication skills. This activity entailed organizing and presenting an arthropod exhibition, which demanded meticulous planning, effective teamwork, and clear communication with both team members and the audience. These elements contributed to our success in this exhibition activity.

【戸田】
 大学祭ということで、幅広い世代の方が来場した。どの世代においても、生体展示や大型の標本が特に注目されていた。来場者の多くは実物標本を観察したのちに解説にも目を通していたため、まずは来場者の目を惹く標本展示が必要であると感じた。小さな標本や動きの少ない標本には生体であることを、その他の液浸標本等には手に取って見てよいことなどを明示しておけば、より関心を持って観察してもらえたように思えた。来場者で混雑している際には一人一人に解説することが難しく、より分かりやすく興味を持てるような解説パネルを用意する必要もあった。その際には、漢字にルビをつける、文字だけではなく図やイラストを用いるなど、幅広い世代の来場者が読みたくなる工夫をすることが重要である。また、一部の来場者が期待していた脊椎動物自体の展示は難しいものの、展示する分類群との関連や環境との結びつきの中でそれを示すことができるのではないかと感じた。展示の中に複数の要素を散りばめることで、幅広い層の来場者が関心を持ち、素通りする来場者を減らすことができるのではないかと考えられる。
 来場者が普段目にする機会の少ない節足動物を間近で観察し、標本に触れたり解説を聞いたりする中で生き物への関心を高めている様子が感じられた。生物の生態や分類についての解説が求められる場面もあり、少ない人数ではあるものの研究テーマや分類学について尋ねる来場者もいた。展示物そのものだけでなく、さらに踏み込んだ内容にまで興味を持っていただける企画に近づくことができたのだと思われる。今回用意したのは来場時のみ見ることのできる展示物だけであったが、持ち帰ることのできる資料なども用意すると、来場後の学習にも効果的であったかもしれない。
 アンケートを実施したものの、全来場者に対する回答率は3.8%と非常に低かった。紙とQRコードの併用により回答機会を増やし、質問数を絞ることで回答への負担を減らしたが、そもそもの回答率を高める工夫に欠けていた。QRコードからの回答率は回答数全体の2割弱であり、オンラインアンケートの活用は予想していたほど回答率の向上にはつながらなかった。アンケートの存在に気付いてもらう必要もあるが、展示や企画内容と連動させて回答を促すための工夫も重要であるとわかった。またアンケートは日本語のみで作成したものの、英語での回答も数枚得られた。また小学生からの回答も複数見られた。幅広い来場者を想定する際には、アンケートにも2言語対応やルビ振りが必要だと感じた。
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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