TMU logo
生命科学専攻
トップ
「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 2023年度進化遺伝学研究室オープンラボ「ショウジョウバエ展」in みやこ祭
実 施 者: M1内田友夏、M1唐木書子、M1辻愛莉紗、M1萩野里奈
実施場所: 12号館202室
実 施 日: 2023年 11月 3日
対  象: 大学祭テクノスクエア・オープンラボ来訪者(約390名)

<概要/目的>
 大学祭という地域の方や一般の方、また大学受験を考えている高校生など幅広い層の方がいらっしゃるイベントの一環としてオープンラボを行うことで、来訪者に生物学分野に対する興味・関心を持ってもらうことを目的とする。メイン企画として、実は身近にいて種ごとに面白い特徴を持つショウジョウバエを多数種展示することで、ショウジョウバエそのものに興味を持ってもらう。さらにショウジョウバエのように生物を用いた研究、および本研究室の分野である進化遺伝学にも関心を持ってもらうことを目的としている。展示だけでなく、来訪された方とコミュニケーションを取れるスペースを作り人員を配置することで、有意義な時間を提供できるようにする。そして、ショウジョウバエに関する知識がない方でも楽しめ、理解できるような企画を準備し、自身の企画発案・運営力を養う。


<方法/企画としての特徴>
上記の目標を達成するために、企画を行った。
1. 多種多様なショウジョウバエの展示
 モデル生物であるキイロショウジョウバエを含め、主に日本に生息するショウジョウバエを中心に、形態的に特徴のあるショウジョウバエ14種を展示する。それぞれの種の特徴を記載したポップと合わせて展示することで、生物の多様性や進化を実感してもらった。また、顕微鏡で実際に細かい特徴まで見てもらうことで、ショウジョウバエにより興味を持ってもらえるようにした。
2. ショウジョウバエの生態や分類方法の展示
 そもそもショウジョウバエとはなにか、どこに生息しているのかなど、基本的な情報を展示した。この企画では本研究室が作成したホームページ“ショウジョウバエに学ぶ生物多様性と環境”を参考に、資料を作成した。
3. 採集方法の展示
 ショウジョウバエの採集方法について展示した。採取方法については2021年国際研究アウトリーチ企画『Fruit Fly Lab Channel@Youtube』にて作成した動画を見せた。本企画では、ショウジョウバエが意外と身近な存在であること、さらに野生種を使用した研究も可能であることを知ってもらうことを目的とした。
4. ポスター展示
 本研究室の3グループそれぞれの研究内容に対応したポスターを作成し、展示した。今回は研究成果ではなく研究概要をメインにしたポスターにすることで、知識のない方でも理解しやすく、進化遺伝学の研究に興味を持ってもらえるよう工夫した。
5. 好きなショウジョウバエ投票アンケートの作成
 今回のオープンラボで興味を持ったショウジョウバエの投票欄を作成した。本企画は、小学生のような低学年の来訪者にも楽しんでもらうこと、来場者数の集計を目的とした。
6. 来訪者に向けたアンケート作成
 来訪者に向けて、今回のオープンラボでショウジョウバエについて意識が変わったがどうか、また企画内容や運営について感想・意見を聞くアンケートを作成し、次回のオープンラボへの応用、また自身の活動のフィードバックに使用した。


<活動内容/具体的成果>
来場者:約390名
 7月に行ったオープンラボとは異なり、今回のオープンラボでは特に家族連れの方が多く、幼稚園から小学校の低学年の来訪者もいれば、年配の方も多くいらっしゃっていた。そのため、来訪者に合わせた説明や声掛けが必要となり、企画運営者としての臨機応変な対応力を求められる場面が多かったように感じた。今回は顕微鏡を用いたショウジョウバエ観察の企画が最も人気があり、小さい子から大人まで誰でも簡単に楽しむことができる内容のため、気軽に興味を持ってもらえたのだと思う。また広い教室であったため、ショウジョウバエやポスターを含め、余裕を持った展示スペースになっていたことも、多くの方にお越しいただけた理由の一つではないかと考える。

オープンラボ当日の様子

 企画内容の一部として行ったショウジョウバエ総選挙の結果をFigure. 1に示した。全体の投票数は212票で、1位はミズタマショウジョウバエ(48票)、2位はテナガショウジョウバエ(31票)、3位はナガレボシショウジョウバエ(22票)であった。主に形態的な特徴が顕著な種が人気の高い傾向にあった。これらの種は顕微鏡でのショウジョウバエ観察でも、来場者の方が見分けやすく、かつこれまでに出会ったことのない新鮮な種であったように感じた。一方で、オウトウショウジョウバエやアカショウジョウバエなど、展示は行っていないが実際に研究に使用している種も投票数が多く、積極的に来訪者とコミュニケーションを取ったり、質問対応を行ったりした結果になっているのではないかと考える。

Figure 1. ショウジョウバエ総選挙の結果
 さらに、来訪者に向けたアンケートの結果は以下のようになった(Figure 2-4)。アンケート回答数は40件であった。来訪者の割合(Fig. 2)は高校生が多く、中でも受験を控えた高校2, 3年生が多い結果になった。今後は大学受験に特化した企画を考える必要があるかもしれない。最も印象に残った企画(Fig. 3)では、顕微鏡を用いたショウジョウバエの観察が半数を占めており、多くの方に楽しんでいただけたことが分かる。「肉眼で見ると区別のつかないハエたちの特徴をしっかり目で理解することが出来た。」「わかりやすい言葉で丁寧に説明してくれたので、楽しかった。」などのコメントもいただき、多種多様なショウジョウバエを展示し生物の多様性の面白さを実感してもらえたと思う。また、オープンラボ参加前と比べて、ショウジョウバエの存在が身近になったかどうかを問う設問(Fig. 4)では、85 %の方が以前より身近に感じると回答していた。このことから、モデル生物であるキイロショウジョウバエをはじめとした、ショウジョウバエを身近に感じてもらうという私たちの目的は達成されたのではないだろうか。最後に、今後取り上げてほしい内容、企画内容や運営に対する意見・感想では、家のコバエ対策を知りたいとの提案があったため、可能であれば来年のオープンラボに反映させたいと思う。

Figure 2. 来訪者の所属の内訳

Figure 3. 最も印象に残った企画

Figure 4. ショウジョウバエへの意識変化の有無
 私たち自身の成果としては、地域密着型のみやこ祭で幅広い年齢層の方にお越しいただき、小さい子から大人まで多くの方にショウジョウバエを身近に感じていただくことができたことから、目標としていた企画者としての企画能力の向上は達成できたと考える。また、アンケートでは「説明文が面白かった。」との声もあり、一般の方にもハードルを感じさせずに興味を持ってもらえる展示物を作成することができたのではないかと思う。また、7月のオープンラボの約2倍の来場者を応対したことで、コミュニケーション能力や対応力を養うことができた。


<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
 今回のオープンラボは、前期のオープンラボとほぼ内容は変えず、追加の企画をいくつか考案した。追加した企画はショウジョウバエ総選挙と来場者アンケートである。このうちショウジョウバエ総選挙に関しては大きな成功を収めたと言って良いだろう。この理由として、来場者約390名に対し、投票数が212票と、非常に投票数が多かったことがあげられる。来場した方の半数以上がこの企画に参加してくださり、企画は非常に盛り上がったと言える。
 一方で、今回のオープンラボの反省点は、アンケートの回答数が来場者数に対してあまりにも少なかった点である。帰りがけにアンケートの回答を呼びかけたが、ほとんどの人が回答を拒否した。拒否した理由として、スマホを持っていない、スマホの充電が切れそうなどの理由でスマホでのアンケート回答が不可能であると言う来場者が多かった。そのため、次回アンケートを作成する際は、Googleフォームに加え、紙でのアンケートも作成し、どちらかを回答してもらう形式をとると回答者が増えるのではないかと考える。
M1内田友夏

 7月に実施したオープンラボでは、受験を意識した高校生やその保護者が来訪者の多くを占めていた印象があったが、今回は学祭ということもあり子供からご年配の方まで幅広い来訪者とコミュニケーションを取ることができた。企画を経験する全員に理解を深めまた興味関心を持ってもらえるよう、来訪者によって説明の仕方を変えその反応を見てさらに対応を工夫するよう心掛けた。はじめはハエにあまり良いイメージを持っておらず観察を嫌がっていた方が、最後には楽しかったと言って帰っていただけるのを見て私自身、深い充実感を感じた。
 本研究室の研究概要説明ポスターのブースでは、普段自らの研究のうちでは当たり前に感じていたことを質問され、返答に困ることがあった。当たり前のことを当たり前と捉えずに時には基礎から考えを振り返ることの必要性と、専門性がないが故に鋭い意見を思いつく発想力について考えさせられた。
 今回のオープンラボ、また7月実施時からの変更を通して、来訪者のことを考えて企画の発案、改善、運営を行う力を向上したと感じた。相手の立場に立って物事を考え、相手に寄り添って行動する力は、今後の人生で必要となる汎用性の非常に高いスキルだと考える。学業だけでは得られ難いスキルを、オープンラボの実施を通して得ることができ、非常に有意義な機会になったと感じる。
M1唐木書子

 今回のオープンラボは文化祭内での企画ということで、幅広い年齢層の方にわかりやすい説明をすることを目標としていた。そこで、大きな枠組みからかみ砕き徐々に詳細な説明になるよう流れを意識して説明することを心がけた。具体的には実際に生きているハエを展示しポップでハエの説明をご覧いただいた後に、顕微鏡で肉眼では見ることが困難な模様などを見ていただき、研究内容やポスターの内容につなげていくことができた。
 興味を持っていただけるような背景から入り、徐々に詳細へ説明を展開していくことは、研究活動の説明のみならず、発表スキルとして重要なものだと感じた。今回得た経験を今後の研究活動や社会人生活に生かしていきたい。
M1辻愛莉紗

 今回のオープンラボの企画・運営は、前回のオープンラボを基に進めたため、よりスムーズに行うことができたと思う。昨年の大学祭のオープンラボには小さい子や低学年の来訪者も多かったと聞いていたため、新しい企画としてショウジョウバエ総選挙を提案した。予想以上に多くの方に面白いと言っていただき、家族連れに好評であったため、自身の発案力の向上を実感することができた。また、よりポップな展示物になるよう説明文を練り直したところ、アンケートで「説明文が面白かった」との声をいただいた。ショウジョウバエに対する知識がない一般の方でも楽しんでもらえるような展示物を作れたのではないかと思う。
 反省・改善点としては、積極的に声掛けを行ったにもかかわらず、Googleフォームのアンケートの回答数が来訪者数に対して大幅に少なかったことが挙げられる。中には、スマホを持っておらず回答できないという来訪者もいらっしゃった。回答数は少なかったが参考になる意見や感想が多かったため、出来れば次回も取り入れたいと考えている。そこで、より多くの方にご回答いただけるよう、会場内に貼るアンケートご協力のチラシの数を増やすだけでなく、入口で配り出口で回収するできるような紙タイプのアンケートを用意する案を考えた。次回はこれらを考慮した上で企画を考えたい。
M1萩野里奈
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
TOKYO METROPOLITAN UNIVERSITY