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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 東京都医学研究所 主催 サイエンスカフェ 微生物から光る色素を抽出しよう!
実 施 者: 長谷部愛佳(M1)、船田淳太(M1)、江川優花(M1)
実施場所: 東京都医学総合研究所
実 施 日: 2023年 12月 2日
対  象: 近隣の小学校に通う生徒30名

<概要/目的>

 東京都医学総合研究所の近隣の小学生30名(実際は4歳〜13歳までの30名)を対象に「微生物から光る色素を抽出する」というテーマで微生物が持つクロロフィルやフィコシアニンといった光受容体の働きやUVライト(紫外光)を当てたときに何色として人間の目に見えるのかを実際に実験してもらうことを通して、理科の面白さを知ってもらう。また、私たちが常日頃から見たり触れたりしている蛍光漂白洗剤や使用済みのはがき、蛍光インク、蛍光ペンにUVライトを当てて何色に光るかを自分で調べてみることを通して、理科を詳しく学んだことがない子供たちにも楽しみながら、日常のサイエンスに触れてもらうきっかけを提供する。企画者の視点としては、分かりやすく説明することが求められるため、説明能力の向上が期待されると同時に、子供たちの様子に気を配りながら安全に実験を遂行する実験コーディネート力が重要であると考える。

<サイエンスカフェ実施に関しての安全対策>
・用意したもの:防護メガネ、手袋
実験を行う小学生には防護メガネ、手袋をつけ、水溶液が体に付着することがないよう細心の注意を払った。
・小学生30人を5グループ(6人/1テーブル)に分け、アシスタント大学生が各テーブルにつき2人常駐し、実験補助。
・UVライトでの観察時には直接UVライトを見ることがないように、注意喚起を怠らず、細心の注意を払った。UVライトの漏れこみを低減するため、教育用UVライトを使用し、黒いテープを用いて投射に使う部分以外を覆った(参考資料図1)。


参考資料図1 紫外線ライトの安全対策

<方法/企画としての特徴>
1.        [講義形式]微生物が持つ光合成色素の働き
講義形式でまず、「光とは」の導入の部分から、私たちの目で物体の色を認識するとき、どのようにして色を認識しているのかをパワーポイントを用いて説明した。次に地上に届く太陽光の特徴や目に見えない紫外線、赤外線、蛍光とは何かについて説明を行った。最後に、今回の実験試料であるスピルリナという微生物の特徴を話した。
2.        微生物が持つ光合成色素を抽出して、UVライトで何色に光るか見てみよう
スピルリナの錠剤を水または70%エタノールに溶かし、フィコシアニンとクロロフィルを抽出する。また、ビタミンの粉末を水に溶かして用意する。それぞれの溶液をUVライトに当てたとき、何色に光るのかを観察する。
小学校低学年から中学生まで、誰でも一人ですべての操作を行える実験を目指した。自分だけで手を動かすことで、より実験の面白さを感じてもらえるように留意した。

用意した溶液:スピルリナの錠剤・ビタミンの粉末・水・エタノール・ろうと台・コーヒーフィルター・ろ紙・UVライト
@        スピルリナの錠剤(瓶の中に入っている状態)を水50mlに溶かし、コーヒーフィルターを使ってフィコシアニンを抽出する。班員6人分に15ml分ずつ分注する。
A        同じようにスピルリナの錠剤(瓶の中に入っている状態)を70%エタノール100mlに溶かし、ろ紙を使ってクロロフィルを抽出する。班員6人分に15ml分ずつ分注する。
B        ビタミンの粉末(瓶の中に入っている状態)を水に溶かし、班員6人分に15ml分ずつ分注する。
この作業を班員6人の子供に分担して行ってもらった。
C        それぞれの溶液が何色に光るかを予想してもらった上で、UVライトを当てて確かめる。

3.        日常生活に身近なものにUVライトを当てて、何色に光るのかを試してみよう
日常生活でよく目にする洗濯用粉末洗剤や使用済みのはがき、パスポートは蛍光を発することが知られている。それらの蛍光を実際にUVライトで観察し、なぜ蛍光を発するのか、その意義や仕組みについての理解を深めてもらう。
用意した溶液:2種類の洗濯用粉末洗剤(蛍光増白剤有無)、液体用洗剤、ブラックライトインク、蛍光ペン、はがき、パスポート、ブロッコリー、みかん等
@        1.の実験と同じ班編成で、学生アシスタント主導の元、UVライトを当てて何色に光るかを観察してもらう。適宜、予想をしてもらいながら、進行を進め、小学生らに自分の考えを発表してもらう場を設けた。



<活動内容/具体的成果>


今回は長谷部さんが司会を務めてくださいました。スライドと実験器具を用いてわかりやすく説明してくださいました。「それでは始めてください」の合図がかかると、子供たちの目は一斉に机の上の実験器具にそそがれ、わくわくした表情でリサーチアシスタントの説明を聞いていました。


ろうととフィルターを用いて生物由来の色素を水に溶かして抽出しました。ろうとの真ん中から少し離れたところをめがけて注いでるように声を掛けると、次第に上手に注げるようになりました。


リサーチアシスタント同士で協力しあい運営しました。子供たちは知的好奇心が強く、不思議に感じたことや原理についてアシスタントに次々に訊いていました。



「微生物が持つ光合成色素を抽出して、UVライトで何色に光るか見てみよう」の実験結果
左からフィコシアニン、クロロフィル、ビタミン溶液。通常時は青色、緑色、黄色の透明な液体である。これにUVライトを照射すると、それぞれ薄い桃色、赤色、黄色(黄緑色)に変化した。


「日常生活に身近なものにUVライトを当てて、何色に光るのかを試してみよう」の実験の様子
葉書、漂白洗剤、蛍光消しゴムなどの日用品にUVライトを照射し、観察を行った。葉書は通常時では見られない特殊な印字が観察された。漂白洗剤にUVライトを当てると、明るい青白い光が観察された。


最後に参加者にアンケートを行った。










<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>

【長谷部】
今回のサイエンスカフェでは、前回の企画での反省点(小学生からの理科の質問に対して答えられるような知識を蓄える)を活かし、小学生に対して「どうして?」と積極的に問いかけることを大事にしました。小学生にどうなるのかの予想を考えてもらい、発表する機会を設けることで、小学生視点で自分の考えを筋道つけて考える能力を磨くことができたと思います。また、実験を通して[予想→実験→結果]の研究に必要なサイクルを体感してもらうことが叶ったのでは考えます。そのため、小学生にとって日常生活に潜む科学の面白さに触れてもらうという本企画の目的が達成されたと思います。
一方、企画者として子供たちの考える力をさらに引き出すための適切な声掛けの重要さを学ぶきっかけとなりました。こちらから一方的に「○○色になったね!」と声を掛けるのではなく、「何色になると思う?」「なぜその色になると思ったのかな?」と声掛けを重ねることで、対話形式で楽しみながら小学生自身が考えを発表できるような環境づくりに貢献できたと思います。また、研究所に勤務する親御さんからの光合成色素に関する質問にも自分の考えを自分の言葉で伝える言語表現力を養うことができました。今後、小学生の興味に沿ったテーマで開催できるように準備していきたいと思います。

【船田】
2回目のサイエンスカフェを開催するにあたり、前回の反省点である「準備」に特に力を注いで取り組みました。前回同様、参加者の年齢層が若く、私たちの持つ知識を分かりやすく伝えることに大変苦労しました。今回は特に実験に使用する材料や反応を観察する機会を増やし、その結果、参加者だけでなく保護者からも質問が増加したように感じました。また、今回のイベントでは「なぜ医学研で研究をしようと思ったのか」や自身の研究に対して多くの方に興味を持っていただいた印象がありました。そのため、分かりやすく説明することの大切さを前回よりも感じることが出来ました。これらの経験を通じて、より効果的に相手に知識を伝えるスキルを向上させたいと考えています。加えて、今後も多くのイベントに参加し、コミュニケーション力や説明力を更に高めていくつもりです。

【江川】
2回目のサイエンスカフェのアシスタントとして、今回は紫外線を蛍光色素に照射する実験を行いました。今回は蛍光を観察するために会場の照明を暗くする必要があったので、実験中にものを倒したり、衝突したりなどの不測の事態が起こらないか不安でした。しかしながら本番では、紫外線を当てた時の色の変化に皆夢中で、無事に楽しい時間を過ごすことができました。
イベント内容はとても興味深いものでした。UVライトを当てると身の回りの物が意外な色に変わるのを観察できたので、自分自身もとても楽しみながら参加していました。
蛍光物質が使われている日用品は様々ありますが、漂白洗剤に使われていたことが個人的には驚きでした。その原理も司会のアシスタントの方が説明してくださり、納得しました。一番楽しかったのは野菜のUVライトを照射する実験です。緑色の色素であるクロロフィルにUVライトを当てると赤色蛍光が検出されることは授業で聞いていましたが、ブロッコリーにライトを当てて赤色のブロッコリーになったときにはとても不思議な光景でした。
このサイエンスカフェを開催する直前に、前回の経験を活かして初めての試みを提案しました。それは、フォトスポットの設置です。子供用の白衣と実験器具を用意しておき、帰る際にイベントの思い出を残せる場所を設置しました。前回は帰宅の際に写真を撮影されるご家族もいましたが、適した撮影場所ないかと探す父兄さんが多かったのです。そこで改めて提案をしたところ、事務の皆さんとリサーチアシスタントの皆さんのおかげで実現させることができました。最初は通り過ぎる人も多かったですが、誰かが白衣を着て写真を撮ると他の子も撮影したい、と連鎖していき、結果予想よりも多くの人に楽しんで頂くことができました。写真撮影を楽しまれる子供たちを見ることができ、またイベントを成功させることができてよかったです。また次回の機会があれば、これまでの経験を活かしてイベントの運営をしていくとともに、参加して頂いた子供たちに最高の体験をしていただけるように努めていこうと思います。
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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