＜概要／目的＞
都立桜修館中等教育学校では、約40年間、東京都立大学および首都大学東京の学生・院生を指導員とする臨海実習を実施している。
海はほぼ全ての動物門の動物、及び多様な植物が存在しているため、生物の多様性を学ぶ上で非常に重要なフィールドである。その中でも、干潮時の潮間帯では様々な種類の生物が見られるため、わざわざ海の中に入らなくても容易に数多くの生物を観察することができる。
本実習では、磯に生息する様々な動物から藻類まで、多様な生物を自分の目で見て採集し、その生物の生息環境や行動、多様性などについて学習する。そして、普段はなかなか見られない動物門の動物を積極的に観察する事により、動物門間や種間の体の構造の違いや生息場所など、生物多様性の意義について学んでもらう。
＜方法／企画としての特徴＞
臨海実習に先立ち、2014年5月28日に同学校で事前授業を行っている。
授業では、当日の注意事項、生物の系統分類、当日見られる生物などの説明を行った。
＜活動内容／具体的成果＞
◎指導員の事前勉強会（5月26日）
採集における注意点などの説明を行い、生徒に指導するべき内容を共有した。また、これまで鐙摺海岸で採集した生物のリストを改訂し、実習で見つかる生物の名前や特徴、危険な生き物などを確認した。今年度も高校１年生が対象であったため、特に当日は安全面を重視するように説明した。
◎臨海実習（5月30日）
・採集準備（9:30～10:30）
生徒の到着前に指導員は集合し、各自が事前に磯の下見を行い、前もって生物のいる場所や、行動していい範囲、そして危険な場所の確認を行った。
生徒が到着したら、指導員はあらかじめ決めておいた班（一班は約10人）の元へ行き、お互いに自己紹介をした後、注意事項、危険な生き物などの説明をあらためて行った。
・磯採集（10:30～12:00）
準備ができた班から順に磯に出て、採集を行った。指導員は班員の安全を確認しながら、なるべく多くの生物を採集するように促した。生徒は初めて見る生物や奇妙な生物などに驚きながらも、積極的に生物の採集を行っていた。今回は最初からかなり潮が引いていたため、先に潮が引いた沖の方で採集を行う様に生徒達に指導し、終了時間が近付いた頃に陸に戻りながら採集をするようにと呼びかけた。
・採集後の解説（12:00～12:45）
班毎に採集した生物をバットに移し、生物の分類・同定を行った。図鑑で調べる事と並行して、指導員による解説を行った。
観察や簡単なスケッチの後、採集した生物を海に戻させ、最後に挨拶をして班を解散した。
＜感想／課題など（企画力／評価力／自主性等の向上を含む）＞
例年、事前指導の時は、生徒たちは興味を持って話を聞いているようであったが、当日になると講義の内容はほとんど頭の中からぬけているようなので、生き物クイズの解説を例年よりも簡潔にわかりやすく伝える工夫をした。また、高校生には難しい動物門の名前や分類などの細かい話よりも海での危険や安全面についての話に重点を置くよう心がけた。今回も4年生（高校1年生）が対象であり、当日は安全面での心配であったが、予め高校の先生から注意して見て欲しい班を聞いていたので、どの班にどのTAをつければ良いか、考えることができ、特に大きな問題は発生しなかった。しかし、はしゃいで気付かないうちに擦り傷や切り傷を負っている生徒や、泳いでしまう生徒がやはりいたので、こちらからの注意喚起を徹底するだけでなく、高校側にももっと厳しく指導をしていただきたいと感じた。高校生には非常に満足してもらえたようなので、また機会があればこれらの反省点を活かして是非参加したい。（奥溪真人）
今回初めて実習に参加させていただいた。磯採集でとれる生き物は普段イメージするような海の生物とは少し違うものであったようで、生徒たちは非常に興味を持って参加してくれた。一部遊び感覚で参加してる生徒もいたが、多くの生徒は熱心に岩陰や潮溜まりを探索していた。磯採集は系統的に広い種類の生物を間近で観察する非常に良い機会であったが、その系統や種類に関する説明をもっと自分にできたら生徒側の理解がもっと深まったはずだ。それでも熱心に説明を聞いてくれた生徒がたくさんいたので、この磯採集を通して生物を好きになるきっかけになってほしいと感じた。
（堀口航平）
今回は、高校生たちがあまり知らない生き物を紹介することを心がけた。昨年参加した時、ヒトデやウニなどの馴染みのある生物のみに注目している生徒が多い傾向を感じた。その為、せっかく磯に来ているので、今回は馴染みの薄い生物にも注目してもらいたいと思った。そこで、積極的にカイメンやヒザラガイといった馴染みの薄そうな生き物を紹介した。高校生の反応は思っていたよりも良く、幅広い門の生物について興味を持ってもらうきっかけになったと思う。（山崎卓哉）
今回、初めて実習TAとして参加した。高校生の人数が思ったよりも多く、班ごとに行動するように何度も注意したもののやはり単独や別れて行動されてしまい、それぞれを見失ってしまうタイミングが多々あったことが反省点である。高校生は見た目に派手であったり面白い特徴を持つ生物を見つけやすい傾向にあった。これは予想できたので、地味なものや一見生物に見えないものを自ら採っていったり見つけさせるように心がけた。スケッチを行う際には、スケッチの意義やどういうところを見て描かなければならないのかなどを描いているところを見ながらアドバイスすることができた。少しでも生物についての理解や興味が深まったことを期待したい。(秋山礼良)
高校生が触れたことのない生物について特徴や生息場所など細かく説明するように心がけた。高校生の多くはタツナミガイやアメフラシといった大きくて特徴のある軟体動物に興味をもち、タコやウニといった生物を見つけようとする傾向にあった。そのためもっと小さな生物に目を向けてもらえるように観察場所を指導した。TAに対して高校生の数が多く、海の中で遊んでしまう高校生もいた点が反省点である。しかし、多くの高校生は海の生物に触れ、知ることを楽しんでいた。この臨海実習によって生物にもっと興味をもってもらえたと思う。(市川里紗)
事前指導の内容を覚えている生徒がほとんどいないことが実習を通して感じられた。しかし、生物の体のつくりや暮らし方を教えながら採集させることで、彼らが知らなかった人気のない生物にも少しは興味を持ってもらえた。スケッチは生物の全体像を描く生徒が多かったが、特徴を捉えて書くよう促すことでそれぞれの部位の形状の意味を理解してもらえたと思う。教えることは簡単だが、興味を持ってもらえる工夫をすることが難しいと感じた。（古田顕尚）
本実習に参加したのは今年で二回目となる。生徒の大半は、小魚やタコといった大型の活発的に移動を行う動物に目を向け、それを追いかける。捕えようものならば、雄たけびを挙げ、狂気乱舞まるでお祭り騒ぎである。彼らに、そのような有り触れた（実際に普段よく見かける）生き物ではなく、注意深く観察すると現れる摩訶不思議な（実際には沢山見かけるが注意を向けないと気付けない）生き物達の素晴らしさを伝えることが、私の本実習での務めと考えた。注意深く、磯を観察するよう促し、捕えた生物が、ヒトとどこが異なり、どこが同じであるのか、生徒らの興味を引くように説明を行った。
（大西由之佑）
私自身本実習で必要な海の生物の知識をあまり持ち合わせていなかったので、自分の知らない分野に触れられる良い経験となった。さらにその知識を自分以外の、加えて生物をあまりやっていない人に教えなければならないため苦労の連続だったが、あまり興味のない人にでも、どうしたら興味を持ってもらえるのか、本実習を楽しんでもらうにはどうしたらよいのか等を考えることは非常に良い刺激となる体験だった。この経験を、オープンラボ等に活用していきたい。（宮下孝幸）
昨年に引き続き、本実習に参加しました。昨年、最後に採集した沢山の生物について一度に説明しても、なかなか集中が持たなかったり、メモを取るのが大変そうだったので、今年は生物を捕るたびに時間をとって説明をすることを心がけました。高校生は捕まえる時が最もその生物への関心を持ち、よく観察してくれるので、とても手応えを感じました。逐一説明していくと同時に生息環境を見ることができ、また後で似た生物を見たときに比較する知識ができることもメリットだと思います。高校生はエネルギッシュで取りまとめるのは大変ですが、採集時間は充分にあるので、採集をゆっくり丁寧に進めるようにTAが舵を取ることでより充実した実習にできると思いました。
（新田竜斗）
私は去年に引き続き二回目の参加でした。今年は去年と方針を変えて、全てを説明してしまわずに、高校生達が自分で考えて観察をするようなやり方で実習を進めました。そのかいあってか、みんな独自の視点で観察していました。
（山本謙太郎）
昨年に引き続き、本実習に参加しました。今年の学生はおとなしく、最初のうちは採集に消極的でしたが、いくつかの生物を私が説明しながら採集すると、その後は楽しそうに実習に取り組めていました。鐙摺海岸で採集できる門を網羅できたことで、いかに海には多くの動物が生存しているのか理解できたと思います。また、スケッチを行う時間が足りなく、ラフな全体像になりがちだったので、特徴的な部分を詳細に描くことを指導しました。来年度は、もう少しスケッチを描く時間を長めに設定したほうが、より充実した実習になると思います。
（高橋美由紀）
初めてTAとして高校生と接した。初めに生物が多くいそうなところを説明し、見た目が派手な生き物以外も探すように指導した。そのため今回の磯採集ではかなり多くの門を採集することができたと思う。しかしスケッチの時間が少し短かったため採集したすべての門をスケッチすることができなかったの反省点です。
（中村遙）
生物がいかに多様であるか感じてもらうことと、安全面に気を配ることを最も意識した。生物多様性について学ぶためまだ採集していない門の動物を探すよう誘導した。はしゃいでいる生徒には怪我をしないよう注意喚起し、度を超えて遊ぶ生徒については厳しく注意した。結果生物多様性について興味を持ってくれた生徒と、そうでない生徒がいた。また磯採集終盤に足を踏み外し、怪我をしてしまった生徒がいた。幸い大事には至らなかったが、注意が行き届かなかったことを深く反省した。また生物が苦手な生徒にも興味を持ってもらえる話を考えるなど、より工夫する必要を感じた。
（神谷直毅）
