TMU logo
生命科学専攻
トップ
「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 都立桜修館中等教育学校臨海実習2015
実 施 者: 奥溪真人(神経生物学研究室D1) 今泉典子、富田千景(神経生物学研究室 M1) 名取由加(発生生物学研究室 M1) 秋山礼良、市川里紗(進化遺伝学研究室 M2) 岡宮久規(動物生態学研究室 M2) 伊藤睦美、岸本渓、吉岡真人(動物生態学研究室 M1) 神谷直毅、堀口航平(環境微生物研究室 M2) 新井沙和、川村のぞみ(環境微生物研究室 M1) 中嶋玲菜(植物系統分類学研究室 M1) 高橋美由紀(神経分子機能研究室 D1)
実施場所: 神奈川県葉山町鐙摺海岸
実 施 日: 2015年 6月 2日
対  象: 都立桜修館中等教育学校4年生160名

<概要/目的>
 動物界には様々な門が存在し、海にはほぼ全ての門の生物が生息している。そのため、多くの動物門を観察するには海産動物採集が最適である。本実習は実際に磯へ行き、生活環境も含めた生物の観察を五感を使って行う。それにより生物の多様性を実感し、系統学的な動物界の構成についての理解を深めてもらう事が、本実習の目的である。
 一方企画者としては、生物の系統学的知識を再確認し、丁寧かつ生徒が興味を惹くような説明を心掛ける事で、プレゼンテーション能力を向上させる事が目的である。また、一班(7〜8名)の引率を行うことで、指導力及び引率力の向上、安全面の指導を心掛ける事も目指したい。


<方法/企画としての特徴>
臨海実習に先立ち、2015年5月27日に同学校で事前授業を行っている。
授業では、当日の注意事項、生物の系統分類、当日見られる生物などの説明を行った。



<活動内容/具体的成果>
◎指導員の事前勉強会(5月25日)
採集における注意点などの説明を行い、生徒に指導するべき内容を共有した。また、これまで鐙摺海岸で採集した生物のリストを改訂し、実習で見つかる生物の名前や特徴、危険な生き物などを確認した。今年度も高校1年生が対象であったため、特に当日は安全面を重視するように説明した。

◎臨海実習(6月2日)
・採集準備(9:30〜10:00)
生徒の到着前に指導員は集合し、各自が事前に磯の下見を行い、前もって生物のいる場所や、行動していい範囲、そして危険な場所の確認を行った。
生徒が到着したら、指導員はあらかじめ決めておいた班(一班は約10人)の元へ行き、お互いに自己紹介をした後、注意事項、危険な生き物などの説明をあらためて行った。


・磯採集(10:00〜11:30)
準備ができた班から順に磯に出て、採集を行った。指導員は班員の安全を確認しながら、なるべく多くの生物を採集するように促した。生徒は初めて見る生物や奇妙な生物などに驚きながらも、積極的に生物の採集を行っていた。今回は最初からかなり潮が引いていたため、先に潮が引いた沖の方で採集を行う様に生徒達に指導し、終了時間が近付いた頃に陸に戻りながら採集をするようにと呼びかけた。



・採集後の解説(11:30〜12:15)
班毎に採集した生物をバットに移し、生物の分類・同定を行った。図鑑で調べる事と並行して、指導員による解説を行った。
観察や簡単なスケッチの後、採集した生物を海に戻させ、最後に挨拶をして班を解散した。




<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>

今年で4の回目参加であった。事前指導の進め方を例年と大きく変えたことが効果があったのか、事前指導で説明した動物の姿や動物門の名前が頭に残っている生徒が例年よりも多かったように感じた。一番の課題は安全面で、今年も泳いでしまう生徒がいた。TAによる注意喚起
が不足しているようには感じなかったが、そのような事態が発生してしまったため、桜修館の教員の方との連携をもう少しうまく取れるようにする必要があると感じた。(神経性物 D1 奥溪真人)

今回の実習では、TAひとりで最大10人の班を持っていた。生徒は高校1年生で、積極的に質問をしてくる生徒もいるが、興味・関心の程度にはばらつきがあるように感じた。そこで解説する際には、細かい情報に偏りすぎないよう、概要や面白いと感じてもらえそうなポイントを中心に話すようにした。また、スケッチや観察・まとめの際に、テストのように"正解"を求めるような質問が出たことがあったため「どうしてだと思う?」というように、自分で考察してみるよう促したり、自分の気づいたことを活かしてまとめてみるよう提案することを試みた。
関心の度合いの異なる多くの人数をまとめて相手にするのは難しく、手がまわり切らないこともあったため、統率は課題だと感じた。(環境微生物学研究室 M1 川村)

磯で見られる生物,特に無脊椎動物について種名などの知識があまりなかったため,指導しきれるかという心配もあったが,思ったより生徒が積極的に取り組んでいたため,採集してきた生物の大まかな門について形態的に分類する指導を行えた.班分けされていたものの,実際には採集の時間は班員が離散してしまっていたので,班分けの意味を考える上ではもう少し班でまとまって集団行動できるように指導できればよかったと感じた.(動物生態学研究室 M1 吉岡真人)

生徒が安全かつ楽しんで採集を行えたので第一の目的は達成できたと思う。実際に採集活動を行うことによって海の生物に興味を持ってもらえた。系統分類の解説の際は、ただ知識を教え込むのではなく、生徒に考えさせることを意識した。しかし、短い観察時間で系統分類への理解を深めるのは難しかった。ポイントを絞って指導することの大切さを実感した。(環境微生物学研究室 M1 新井沙和)

「生物を採集することが目的ではない。生物がいるその場で自然な状態を観察することが大切」ということを生徒たちには強調したつもりだったが、どうしてもハンティングに夢中になってしまうようだった。ただ自作のワナを作ってきている子がいたり、積極的に生物を探したり、解説の時にはしっかりメモを取るなど意欲が高い子が多かったと思う。私自身には系統分類の際にもっと生徒に考える時間を与えるべきだったかなという反省点があるが、全般的に見ると生徒たちは大きなケガもなく楽しめたようだったので良かったと思う。 (神経生物学研究室 M1 富田千景)

座学で生物の多様性等を学ぶだけではなく、生徒たちが実際に自分の手で様々な生物を採集し観察することで、多様な生物についてより深く理解をすることができたと思う。高校生は思っていたよりも元気で、班員がバラバラになってしまうことがあった。時々声をかけていたので、長時間はバラバラにならなかったが、班員の一人がかなり遠くまで行ってしまったこともあったので、班員をまとめるのは難しいと思った。また採集後の解説では、もう少し生徒たちが考えれるように解説していければよかったと思う。(植物系統分類学研究室 M1 中嶋玲菜)

一部の班員が泳ぎにいってしまい、注意するのが大変だった。観察の時間はヒトデをひっくり返すとどうなるか?など簡易的な実験を行って、海の生き物に興味を持ってもらえるよう工夫した。もっと生徒を見ながら動物の解説をしたほうがよかったのではないか、自分本位な話になってしまったのではないかと反省している。自分自身の知識の浅さを痛感した。 (神経生物学研究室 M1 今泉典子)

様々な動物門を見てもらえるように、動きが素早く見つけやすい動物だけでなく、石の下や岩肌に付着している生物にも注目するように呼びかけた。また、どのような生物がどのような場所にいたかも記録するよう呼びかけた。しかし、節足動物や軟体動物は多く採取できたが、海綿動物や紐形動物は採取できなかったので、もう少し細かくアドバイスすべきだったと反省した。解説は、動物門ごとの特徴やそれぞれの動物の性質、生息場所などを中心に行った。この時、自分の知識不足を痛感したので、事前学習はもちろん、他のTAとコミュニケーションをとり、互いに分からないところを補うことが大切だと実感した。(発生生物学研究室 M1 名取由加)

まずは野外で生物と触れ合う楽しみを思い出してもらうため自由に採集してもらうようにした。高校生はもう少し冷めた年頃のイメージであったが、想像以上に積極的に取り組んでくれたと思う。また後半の解説に備えて対象の分類群を網羅的に採集できるようにアドバイスを行った。解説の際は資料の系統樹を確認してもらい、系統関係について視覚的に理解できるよう心がけた。(動物生態学研究室 岡宮久規)

生徒のみなさんには、身近な場所にも多種多様な生き物がいることを体感してもらえるよう心がけた。採集に関しては、なるべくたくさんの種類の生き物を採集すること、目につく大きな生き物だけでなく小さな生き物にも注目して採集すること、を特に意識して指導を行った。採集後の観察では、動きや形の類似点や相違点に着目してもらえるように声掛けをした。生き物の採集や観察自体は楽しんでくれている様子だったが、そういった興味、経験をより学問的な思考に結びつけるにはどのように指導していく必要があるかが課題であると感じた。(動物生態学研究室 M1 伊藤睦実)

磯採集では安全を第一と考え、班がばらばらになって目の届かない場所へ行ってしまわないよう気を付け、怪我なく無事に終えることができた。まだこの生物を採集してないから探してみて、といったことを積極的に呼びかけた。蛸や魚の捕獲に夢中な生徒や生きものが苦手な生徒も、多種多様な生物の存在を感じてもらうことができたように思う。採集後の解説で少し時間をもてあました。スケッチの仕方や意義をもう少し丁寧に解説すればよかったと思う。 (環境微生物学研究室 M2 神谷直毅)

磯採集では生徒にとって今までに見たり触れたりしたことのない生物ばかりだったようで、生物がどんなところに生息しているのか、どのような特徴のある生物かを注意して観察するように指導を行った。また、生物に触れることに戸惑う生徒には積極的に触れられるようにまず自分が触るなどして興味を持ってもらえるように心がけた。生物が苦手な生徒も実際に触れることや観察することで多様な生物を知ってもらえる良い機会になったと思う。質問等は積極的に出てきたが、採集などを生徒がもっと自発的にできるような工夫が必要だと考える。(進化遺伝学研究室 M2 市川里紗)

昨年もこの企画に参加をした経験や反省を活かし、分かれて行動したがる高校生を見失わないようある程度誘導したり、見つけにくい生物を積極的に探して採集してもらったりする点に気を配った。また、スケッチを行う際にはその重要性や取り組み方についても解説し、全体をぼんやり描くのではなく、特徴を捉えてその部分だけでもきちんと描くことを訴えた。その結果、放っておいたら目に触れなかったような構造を認識してもらうことができ、生物に対する興味が少しでも向上したのではないかと期待できる。(進化遺伝学研究室 M2 秋山)

昨年に引き続き、臨海実習に参加しました。今年の学生は、元気が良すぎて手に余る行動が多かったですが、実際の生物に触れ、生息場所を肌身で感じてもらえることはできたと思います。しかし、去年同様、スケッチの時間が短すぎるため、各生物の詳細を観察することは難しかったように思います。その中でも全体像をぼやっと描くのではなく、特徴的な一部分をしっかりと描くなど、スケッチの指導ができたことはよかったと思います。
(神経分子機能研究室 D1 高橋美由紀)

今回2回目の実習参加であり、自身の経験を生徒の方々に伝えるためどんなところに生物が見つかるか、見つかった生物はどんな系統か、見つかった生物の特徴はどのようであるかの3点に注意し指導した。生徒達は元気であったが非常に熱心な印象を受け、写真やスケッチをしていた。昨年よりも自身が担当した班は種にバラエティがあったため、自身の経験が活用され非常に良かったと感じる。
(環境微生物学研究室 M2 堀口航平)





©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
TOKYO METROPOLITAN UNIVERSITY