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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 植物生態学研究室オープンラボ「たまにしま ~多摩の緑地は全部島!?~」(17/07/16)
実 施 者: 秋元勇貴、志村綱太
実施場所: 8号館2階263室
実 施 日: 2017年 7月 16日
対  象: オープンラボ来場者

<企画協力者>

卒研生:中越智也、西脇花恵、田中紫苑、金城薫


<概要/目的>

本企画は、オープンキャンパスの参加者を対象に、当研究室・当大学への理解の深化を図るとともに、生態学についての関心を高めることを目的とした。「都市の残存林」をテーマに、研究室紹介の展示、残存林としての松木日向緑地に関する複合展示を行った。また、各種の展示物について口頭説明を行った。


<方法/企画としての特徴>

実施場所は8号館2階263室とした。展示は壁面にポスター類を配置し、実験卓上にハンズオン形式で実物資料を配置した。これにより、視覚・触覚情報と文章情報を統合して理解できるようにした。
また、備品の大型ディスプレイを利用し、当研究室の調査地の一つ、小笠原の自然に関する映像を放映した。小笠原は世界遺産に登録されるなど都市の残存林とは対象的な側面を持つ。一方で、人間活動の影響を受けるという点では共通しており、生態学的な視点を学ぶには有効な比較材料だと考えられる。


<活動内容/具体的成果>

1. 研究室紹介の展示
当研究室の紹介として、(1)(植物)生態学とはどんな学問か?、(2)小笠原諸島での食害と植生回復の研究例、(3)ハツカダイコンを用いた密度効果の実験例 に関する3枚のポスターを展示した。
(1)で生態学の概要を掴んでもらった後、(2)(3)というスケールの全く異なった研究を紹介し、材料や方法の幅広さを知ってもらえる構成にした。
また、小笠原の自然に関する映像としては、南硫黄島での調査記録、当研究室教授による小笠原諸島に関する講演記録 の2本を時間ごとに入れ替えながら放映した。

2. 残存林としての松木日向緑地に関する複合展示
かつて南大沢キャンパス周辺には森林が広がっていたが、ニュータウン化の影響を受け、松木日向緑地だけが「都市の残存林」として取り残されている。このような孤立化した森林は都市部に浮かぶ島に例えられ、島と同様、面積が小さかったり他の緑地(大陸)との距離が遠いと種数が少なくなりやすい。また、松木日向緑地はかつて薪炭林や屋敷林として利用されていたものの、現在では生活利用されていない。そのため、いわゆる里山の雑木林の環境は十分に維持できていない。これらのことから、松木日向緑地は種数が少ないと考えられていた。そこで、実際の緑地にはどのような植物がどのように生息しているのか、研究例を交えながら学べるようにした。
具体的には(1)代表的な植生とそこに見られる植物、(2)松木日向緑地に見られる植物群集構造の解析例 について展示を行った。
(1)では、当緑地において代表的な植生である常緑樹林、落葉樹林、竹林から植物を採集・同定し、解説タグをつけてハンズオン形式で展示した。また、各植生の特徴や生態学的な位置付けについてまとめたポスターを1枚ずつ作成、展示した。
(2)では、昨年度まで当研究室で進められていた研究成果をまとめたポスターを展示した。この研究により、松木日向緑地は面積の割に複雑な地形を持つなど環境不均一性が高く、種数も他の緑地と比して少なくないことが示されている。また、落葉樹林から常緑樹林への遷移の可能性が示された一方、複数の要因によって遷移が制御されており単純に遷移しないことが示唆された。


<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>

昨年度までは8号館5階西側エレベーターホールで実施していたが、今回は同館2階の263室で実施した。263室は壁面や実験卓が十分にあり、展示物、特に実物資料が配置しやすかった。レイアウトの自由度こそ低いものの、順路もわかりやすくできるため解説のフローを作りやすかった。ただし、順路の構造が出口をあまり意識していなかったため、最後の展示から出口に向かいづらくなっていた。また、入口付近に入りたくなるような看板や仕掛けがなかったため、入室の際に多少の抵抗があったかもしれない。
研究ポスターなどの展示に関しては内容把握が(特に卒研生に対して)相互確認できていなかったため、解説内容にムラが大きかったかもしれない。今後は確認をしっかり取りたい。また、下見が不十分で、オープンラボ当日に採集した植物を同定していた人もいたため、種名のタグの作成が十分だった。植物に詳しい来場者に種名を教えてもらうことになってしまっていたので、可能な限り同定は早めに済ませるようにしたい。加えて、せっかく実物を取ってきているので、もっと有効活用したい。例えば、今回2種のタケを見たり触ったりして違いを確かめてもらえるようにしたが、もっと触ってもらって質感や重さ、形状の違いを体感して欲しいと思う。そのためには、化学的な刺激性や棘、害虫の付着の有無をより徹底して確認・管理をしたい。
ハンズオン展示にも繋がるが、今回は体験・参加型の活動はほとんどできなかった。以前は「生存戦略ゲーム」などを実施したこともあるが、それほど盛り上がらないこともあり、採用されない回も多かった。何かしら能動的に参加できるような展示がないと記憶にも残りづらいし、興味も湧きにくいと思われる。クイズなりゲームなり、簡単に用意できそうなものでも良いので何かしら用意しておきたい。
来場者数は例年とさほど変わった印象はないが、学部学科やカリキュラム、学生生活に関する質問があまり出なかったように思う。オープンラボに来る前にどこかで疑問を解決しているのかもしれないが、ラボでは研究の話しか聞けないと思っている可能性もある。よりオープンに研究・学部学科・学生生活の話を聞けるということを、パンフレットに書いてもらったり、口頭で伝達するなど、来場者に発信していく必要があるかもしれない。(秋元)

植物生態学研究室としては、初めて実習室を利用してオープンラボに参加した。研究室の活動に関わるポスター展示や緑地の植物を展示した。
実習室の強みともいえる、実習机を利用して緑地の植物の展示を行えたのは効果的だったと思う。ひなたブックとの対応を考えた展示を行えば、より松木日向緑地の植物について興味を持って頂ける展示を行えるだろう。実物を用いた展示の反省点は、展示した植物の統一性がなかったことである。採取した環境ごとに展示を行ったが、それぞれで展示する植物の種類にばらつきが出てしまった。植物を材料にして緑地を紹介するという目的に対して、適切な種を選定しなかったことが原因であると思う。季節の特色や歴史的背景を含めて、より緑地の特色を生かした展示を今後は検討したい。
ポスターについては、一般の方へ、ポスターの内容を補足できるような解説ができたと思う。一応、読めば概要がわかるよう意識して作られているが、どれだけポスターのみで伝わったのかはわからない。聴衆者の反応を見た対応が大切だと改めて痛感した。ポスター発表は学会でもあるので、プレゼン能力の向上を意識して取り組みたい。
今後のオープンラボでは今回出た反省を生かして、実物の展示、ポスター展示の改善に努めたい。(志村)

来場した方によって、聞きたいことやその深さにかなり差があるな、と感じました。中学・高校生の方はあまり質問などをしてくることはなく、その保護者の方々から展示していることの内容や大学全体の質問などがあったように感じます。せっかくのオープンラボなので、もう少し中高生にも体験できるようなことがあればいいのかな、と思いました。植物生態学なので実際に体験するのが難しいと思いますが、今回の植物の展示の他に少しでも考えるような機会があれば面白くできるのではないか、思います。例えば、志村さんの実験の説明を軽くして、簡易なモデルで実際に植物を水に浸す経験をして、このようにして育てたらどうなると思うか?ということを問いかけてみるのも面白いと思います。実際の経験という点を重視するのであれば、葉面積測定機などを実際に使ってもらうのも面白いのではないかと思います。(中越)

オープンラボを通して感じたのは、来られる方々の興味は生徒とその親で少し異なるということです。今回のオープンラボで私たちはキャンパス内で見られる植物を展示しました。そして親の方々によく聞かれた質問が、これらの植物はこの後研究に使われるのかというものでした。実際はそれらの植物はこのオープンラボのために用意したもので、何か研究に使われるわけではありませんでした。植物自体に興味があってその特徴などについて知りたいというよりは、大学の研究室としての研究に対する興味が大きいのだろうと思いました。一方、生徒の方々はまだいろいろな面で迷いがあるようで、受験や大学生活に関する質問の方が聞きやすいようでした。ただ、興味の程度やその対象は人によっても様々で、そんな中その興味に答えつつ研究室に新たな興味を持ってもらうのは難しいと思いました。何か印象に残るような展示や話が用意できたらよかったです。(西脇)

場所が二階の実験室だったこともあり、立ち寄りやすかったと思う。冷房が効いていてよかった。
内容に関して、ポスターの他に緑地で採集した植物に関心を持つ人も多かった。自分が採集した箇所は説明できるが、全体について網羅していなかったので生かし切れなかった。個人的な準備不足だと感じている。
受験生はなんとなく生物や化学に興味を持っている人から既に植物や動物の生態に関心を持ってきた人まで様々だった。後者は稀で、前者のような受験生がいかに興味を持ってくれるか、受験のモチベーションになるかを意識した。
また、どこの研究室でどんな研究をしているのか?ということに興味を持つ方が多かった。オープンラボを実施している研究室との情報の共有があった方がよかったかもしれない。(植物生態学研究室のオープンラボの場所の都合上、聞く人が多かった可能性がある。)(金城)
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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