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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 植物生態学研究室オープンラボ「たまにしま ~多摩の緑地は全部島!?~」(17/11/3)
実 施 者: 秋元勇貴、志村綱太
実施場所: 8号館2階263室
実 施 日: 2017年 11月 3日
対  象: オープンラボ来場者

<企画協力者>

卒研生:中越智也、西脇花恵、田中紫苑、金城薫


<概要/目的>

本企画は、オープンキャンパスの参加者を対象に、当研究室・当大学への理解の深化を図るとともに、生態学についての関心を高めることを目的とした。「都市の残存林」をテーマに、研究室紹介の展示、残存林としての松木日向緑地に関する複合展示を行った。また、各種の展示物について口頭説明を行った。


<方法/企画としての特徴>

実施場所は8号館2階263室とした。展示は壁面にポスター類を配置し、実験卓上にハンズオン形式で実物資料を配置した。これにより、視覚・触覚情報と文章情報を統合して理解できるようにした。
また、備品の大型ディスプレイを利用し、当研究室の調査地の一つ、小笠原の自然に関する映像を放映した。小笠原は世界遺産に登録されるなど都市の残存林とは対象的な側面を持つ。一方で、人間活動の影響を受けるという点では共通しており、生態学的な視点を学ぶには有効な比較材料だと考えられる。


<活動内容/具体的成果>

1. 研究室紹介の展示
当研究室の紹介として、(1)(植物)生態学とはどんな学問か?、(2)小笠原諸島での食害と植生回復の研究例、(3)ハツカダイコンを用いた密度効果の実験例 に関する3枚のポスターを展示した。
(1)で生態学の概要を掴んでもらった後、(2)(3)というスケールの全く異なった研究を紹介し、材料や方法の幅広さを知ってもらえる構成にした。
また、小笠原の自然に関する映像としては、南硫黄島での調査記録、当研究室教授による小笠原諸島に関する講演記録 の2本を時間ごとに入れ替えながら放映した。

2. 残存林としての松木日向緑地に関する複合展示
かつて南大沢キャンパス周辺には森林が広がっていたが、ニュータウン化の影響を受け、松木日向緑地だけが「都市の残存林」として取り残されている。このような孤立化した森林は都市部に浮かぶ島に例えられ、島と同様、面積が小さかったり他の緑地(大陸)との距離が遠いと種数が少なくなりやすい。また、松木日向緑地はかつて薪炭林や屋敷林として利用されていたものの、現在では生活利用されていない。そのため、いわゆる里山の雑木林の環境は十分に維持できていない。これらのことから、松木日向緑地は種数が少ないと考えられていた。そこで、実際の緑地にはどのような植物がどのように生息しているのか、研究例を交えながら学べるようにした。
具体的には(1)代表的な植生とそこに見られる植物、(2)松木日向緑地に見られる植物群集構造の解析例 について展示を行った。
(1)では、当緑地において植物を採集・同定し、解説タグをつけてハンズオン形式で展示した。本企画は多くの植物が開花を終えた秋に実施したこともあり、果実や種子を形成する植物を中心に展示した。また、いくつかの植物についてはクイズ形式のシートを用意した。昆虫との共生が見られるイヌビワとその比較対象として用意した虫こぶについては、実体顕微鏡を用意し、植物中にいる昆虫の姿を観察できるようにした。
(2)では、昨年度まで当研究室で進められていた研究成果をまとめたポスターを展示した。この研究により、松木日向緑地は面積の割に複雑な地形を持つなど環境不均一性が高く、種数も他の緑地と比して少なくないことが示されている。また、落葉樹林から常緑樹林への遷移の可能性が示された一方、複数の要因によって遷移が制御されており単純に遷移しないことが示唆された。


<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>

ポスター等は前回とほぼ同じの展示を行った。今年度オープンラボを実施するのは3回目のため、皆説明が慣れてきた。
今回の展示では、顕微鏡を用いた展示など、新たな手法を取り入れた。実物を大きく見ることができるという魅力はあるようで、来場者の多くが観察していた。来場者の興味関心を惹くような展示ができたのは成果の一つだと思う。
毎回恒例になりつつある緑地の植物コーナーは、初めて果実や種子を中心に展示した。夏のオープンラボとは違い、多くの種類の果実や種子を入手できるためである。散布様式がわかるようにし、植物のタネの旅がわかったのではないだろうか。
まとめると、本研究室や松木日向緑地の植物の多様性を来場者に伝えることができたと思う。(M1  志村)

前回のオープンラボでは体験・参加型展示の少なさが課題に上がったため、その反省を生かして今回はクイズや顕微鏡観察を取り入れた。特に顕微鏡観察では、生きた状態の昆虫と植物の共生関係を観察することができ、生体行動展示としても意義のあるものだったと思う。
他の植物の展示に関しても、種子散布様式をカラータグによって識別できるようにしたり、展示の趣旨を解説したシートを用意するなど、わかりやすさを意識した展示にできた。また、実施場所以外にもポップな案内ポスターを貼るなど、オープンラボに参加しやすい環境作りにも取り組めたと思う。
来年度以降は、研究室で現在取り組んでいる研究についても発表できるよう、学生各自でポスターなどを作成していきたい。(M1 秋元)



ヌルデに寄生したヌルデノミミフシ



展示の様子1



展示の様子2
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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