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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 緑地観察会
実 施 者: 鈴木智之、坂本信介、白井剛、中村亮二、土屋香織、萩原陽介、伊藤兼敏、小林まや、武智玲奈、松田尚子、石神唯、鈴木観、常木静、小林健人
実施場所: 松木日向緑地など
実 施 日: 2008年 10月 30日
対  象: 小中高の学生

<概要/目的>

小中高の学生を主な対象とし、自然観察会を行う。
 参加者に対しては、自然観察を通じて身近な自然の中にも多様な生命の営みがあることを実感してもらうとともに、自然観察の楽しみ方や都市に残る緑地の重要さなどを知ってもらうことを目的とする。
 実施者においては、自然や生物についてわかりやすく興味を持ってもらえるように話をすることで、話し方や説明の仕方などの技術を磨くことを目的とする。


<企画としての特徴>

本企画は、実施者らが昨年度作成した首都大キャンパス内の松木日向緑地のハンドブック「ひなたブック」を用いて、観察会を行うことが特徴である。
観察会を企画するということで、実施者の企画経営能力の向上が見込まれる。また、話し方や説明の仕方などの技術を磨くことで、アウトリーチ活動においてのみならず、研究の場面におけるプレゼンテーション能力の向上も期待される。


<観察会の対象と内容>

実施期間中に以下の4つの観察会を企画した(Cについては実施予定)。

@青少年相談センター中学生支援教室「大地」(生徒11名、引率スタッフ2名)
この観察会は「大地」における総合学習の時間(理科)として行っており、理科(特に生物学)への興味を持つきっかけを対象者に提供することも目的としている。
・実施日:10月30日
・松木日向緑地内を全員で歩きながら自然観察を行なった。
・観察会の主なポイント
(1)五感を通じて様々な角度から自然を体感してもらうための工夫(鳥の鳴き声を聴く、木の匂いを嗅ぐ、木の実を味見する)
(2)実施者の研究内容(動物生態学:武智)の簡単な紹介。

A宝仙学園一年生(約50人)
この観察会はImpGrad企画「宝仙学園中学校1年生-ネイチャープログラム」の一環で行った。
・実施日:2月13日
・生徒たちは4班に別れ、順番に松木日向緑地内を歩いて自然観察を行なった。
・観察会の主なポイント
(1)イモリ池でのヤマアカガエルの鳴き声と卵の観察
(2)赤外線センサーカメラを使った哺乳類撮影の解説
(3)モミジの種子散布
(4)冬芽の観察

B首都大生命科学コース入学予定者
この観察会はImpGrad企画「生命科学コース入学予定者への研究紹介」とともにゼミナール入試の入学前授業の一環で行った。
・実施日:2月16日
・松木日向緑地内を全員で歩きながら自然観察を行なった。
・観察会の主なポイント
(1)松木日向緑地の特徴の解説
(2)イモリ池でのヤマアカガエルの鳴き声と卵の観察
(3)緑地のめずらしい植物について

C東寺方小学校出張観察会
・実施予定日3月12日
・東寺方小学校内にある緑地において観察会を行う。
・冬芽やフィールドサインなどを中心に観察を行う。


<具体的成果>

@について
・アンケート結果(概要下記)によれば、対象者からは全体的に良い評価を得た。その上で、「違う季節に」あるいは「機会があれば」「また参加したい」という意見や、「登下校の時にも少し植物を見てみよう」と思ったという感想があった。このようにして、観察を通じて自然に対する興味を引き出すことができたのは、本企画の成果の一つとして挙げられる。

・アンケート結果概要(回答数=10):
‐全員が、「楽しかった」、「面白かった」または「自然への興味が湧いた」と答えた。
‐実施者の説明が「分かりやすかった」という回答が5件あった。一方、「分かりづらかった」という回答は無かった。
‐「実物を見つつ触りながらだったので、説明だけではきっと分かりにくかっただろうものもとても分かりやすかった」という感想があった。
‐ドングリやむかごを食べるという体験が「初めて」で、予想外に「おいしかった」という感想が4件あった。一方、ドングリやむかごの試食を勧められた際に「困った」との感想が1件あった。
‐鳥の鳴き声を聞き分けられたことを印象的な体験として挙げた回答が3件あった。
‐大学で行なっている研究について「もっと詳しく聞かせてほしい」という感想が1件あった。

A、Bについて
参加者らの多くは、楽しそうに観察をおこなっており、実施者らの話も熱心に聞いてくれていた。


<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>

@について
・ 日程調整や当日の段取り決めといった企画運営自体に主に関わった。観察会を滞りなく行なうため、現地下見および段取り確認を実施者間で行なう機会を観察会前日に設けたが、それにより当日の解説や観察のポイントを明確にすることができた。アウトリーチにおける事前準備は企画者間での段取り確認だけが目的ではなく、「対象者に何を伝えるか・感じてもらうか」を明確にするという意味においても重要であることを学んだ。今後行なう観察会で活かしていきたい。(中村)
・ ドングリやむかごを試食してもらうことを目玉企画の一つとして行なったが、多少強引に勧めてしまった場面があったことをアンケートから知った。対象者が単に恥ずかしがっているのか、それとも本当に嫌がっているのかについての見極め(少なくともそれに対する配慮)が必要だったと反省した。(中村)
・今回の活動では、対象者に対して十分なスタッフ数で臨むことができ、十分な対応が出来たように思う。本参加者の中には以前に行った出張授業に参加した方もおり、今までの活動が自然に興味を抱いてもらうきっかけとなっていることを実感した。(伊藤)
・ひなたブックを活用した観察会に参加するのは今回で2回目であったが、対象者が中学生ということで、いろんな動植物の名前や特徴を教えるというよりは、見て、聞いて、嗅いで、触って、食べる、体験型の観察を意識して行なった。この工夫により、身近な自然に対して好奇心を持ってもらえるようになったのではないかと思う。一方で、体験させることに集中してしまい、生徒が反応に困るという例もあったので、今後の観察会ではもっと生徒の反応に気を配りたいと思った。(小林)
・この観察会では、秋の実りを実感してもらおうと下見や準備を入念に行ない、なるべく五感を使って体感できるような企画を工夫した。おおむね反応は良好で身近な自然に興味をもってもらうきっかけを提供できたと思う。触るなどの体験型のプログラムでは、受けてによってはいやがることもありうるので無理強いするようなことはせずに、個々の生徒の反応をよく見極めて、無理のない範囲での観察をさせるように気をつける必要があると感じた。(土屋)
・この観察会では、参加してくれた中学生に身近な自然より興味を持って欲しいと思い、知識を単に伝えるのではなく、参加型の観察会にしたいと考えた。例えば、食痕の観察から食べた動物の特徴を推測してもらう、といった内容を盛り込んだ。特に、事前授業で私の研究(アカネズミによるオニグルミ種子採食行動)の話に触れていたので、実際にアカネズミが食べたクルミを野外で拾ったときには、ネズミが上手に食べているだろうかと興味を持って観察していた。野外での実体験や、研究の話を通して、自然への関心が高まったことが伺えて嬉しかった。(武智)

Aについて
・ 慌ただしいタイムスケジュールであったので、対象者に対して自然観察についての印象づけができていたか、若干不安が残った。ただし「ネイチャープログラム」の一環として行なった今回のような“短時間”観察会は、これまでの観察会には無かった新たな形式であり、参加したことは良い経験となった。対象者の様々な事情に対応できる形で自然観察会を企画運営していく柔軟性や創造力、企画力は、多様な方々を対象とするアウトリーチ活動において重要であり、今後身につけていきたいと感じた。(中村)
・各グループ45分間の短い時間の中で、いかに自然に興味を抱くのかを考慮した。担当した2グループで少し内容が異なってしまったが、概ね予定通りに行えた。ただ、もう少し最後のまとめの時間をしっかりと取るべきであったように感じたのが今後の課題である。アウトリーチ活動は何度か行ってきたが、今回の活動では他研究室との交流ができ、視野が広がった。(伊藤)
・ 事前準備で説明すべきポイントがTA間で十分に打ち合わせが行われており、TA各人が説明ができる状態になっていたことで観察会スムーズに行えた。特に、班の中に遅れるグループがでたりしたときに、TAが遅れたグループにもついて説明をできていたのは良かったと思う。(鈴木智)
・下見を数回行い、確実にここで解説するというポイントを明確し、また、観察シートを活用して、生徒が興味をもちやすいように工夫してあり、短い時間だったが充実した内容のプログラムになったと思う。複数のグループを担当したが、それぞれのグループの特徴にあわせた解説を行なうことができ、対象者の関心にあわせた柔軟な解説を行なうことができた。(土屋)

Bについて
・生命科学コース入学予定者が対象者であったため、全体的に生物に対する関心が高く、緑地の中を歩きながら、それぞれ違ったものに興味を引かれている様子だった。観察会の時間が約1時間と短かったこともあり、全員で遊歩道を歩きながら説明をする時間が多くなってしまったが、個々の関心に沿って自由に観察できる時間などを設けることができたら良かったのかもしれないと感じた。(石神)
・生物に対する関心は高く説明はしやすかった。対象者らは来年度より首都大の一年生として入学するので、今回の体験を機会に自ら緑地に散策に行くようになってもらえればと思う。(鈴木智)

©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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