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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 都立松原高校アウトリーチ -ニワトリ胚の培養-
実 施 者: 武政智恵(発生プログラム研究室)
実施場所: 都立松原高校(東京都世田谷区桜上水)
実 施 日: 2007年 12月 13日
対  象: 生物選択の高校2年生 144名

<概要/目的>
 発生プログラム研究室のOBが生物教員をしている都立松原高校の高校2年生を対象に、ニワトリ胚を用いた生物特別授業を2日間に亘り行った。
 この授業では、生物学についてある程度知識は持っているものの実際の大学の研究については全く触れる機会を持たない高校生を相手に、実験を通じてサイエンスへの興味を持ってもらうことを目的とした。一方、この企画で実験を教える側の私は、特別授業の企画・実施を通じて、計画を立て準備する企画力と、高校生相手に分かりやすく、かつ興味を抱かせるような授業を行うという説明能力を向上させる目的で企画・実施した。
 また実験に加え、2日目には福田公子准教授による消化管に関する講義を行うことで、大学での最先端の研究にも触れてもらった。

<方法/企画としての特徴>
 私が研究で用いているニワトリの有精卵は、通常21日間孵卵器であたためると孵化する。約48時間あたためた2日胚では、心臓、目、耳などの元となる基本的な構造はできているが胚は動かず‘生き物’という実感はない。しかし、2日胚をさらに24時間あたためた3日胚では血液が造られ、心臓の拍動によって血液が血管を流れている様子を観察できる。また、眼にはレンズが、胴部には翼・肢の原基ができる。
 このようにニワトリ胚が24時間で劇的な変化を遂げる様子を自らの手を動かし、実験することで実感してもらった。今回の特別授業ではニワトリの2日胚を、1日目に卵殻内から取り出し卵殻外で培養を行い、24時間後にどのような変化が起こったかを観察した。
 ニワトリ胚の培養を行うことで、楽しみながら生物学への興味を持ってもらうと同時に、詳しく観察する過程で、ただ単に「面白い」と思う気持ちから一歩踏み込んで、ひとつの卵細胞から個体が形態形成されていくことについて何を思うか、各自に考えてもらった。
 

<当日のスケジュール>(4クラス、各40分)
1日目:大学院生による授業・培養実験
2日目:前半-実験の続き  後半-福田先生による講義



<成果>
 本企画は都立松原高校で行った。そのため、高校の備品・設備、大学から持っていく必要のあるものなどを正確に把握し、準備する必要があった。また、1コマ40分という短い授業時間内にスムーズに実験を進行させるために当日のスケジュールを考え、綿密に計画を立てる必要があった。この企画の実施によって企画力・実行力が向上したと考えられる。
 企画実施の段階では、生物学について極めて基本的な知識しか持たない高校生を対象としたため、実験方法や、ニワトリ胚の発生について易しく説明する必要があった。そのため、相手が必要とする情報を分かりやすく伝える説明能力が向上したと考えられる。
 一方、特別授業を受けた高校生には、比較的身近な動物であるニワトリの胚を各自が取り出し、成長する様子を観察することで、個体が形態形成していく面白みを感じ、生物学への興味を持つとともに、生命の大切さを学んでもらえたようだ。(アンケート参照)
 
<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
 企画実施前は研究で用いているニワトリ胚の扱いには慣れていたが、実験を‘教える’側に立ったのは初めてだったため、私の説明で高校生が実験に成功してくれるかとても心配だった。結果的には7割ほどの生徒は自分で取り出した胚を培養することに成功したが、私自身の説明不足による生徒のミスもあり、説明能力の不足を感じた。これは今後の課題である。一方で、高校生が非常に興味を持って熱心に取り組んでくれたことはとても嬉しく、やりがいを感じた。
 また、準備段階では、指導教官である福田公子准教授の多くの助言を必要とし、当日もかなり手伝っていただいた。今回は私一人での企画・実施であったため仕方がない点もあったが、今後このような企画を実施する際は自身の力だけでできる限り成し遂げられるようにしたいと感じた。




<アンケート結果より>
(原文)
・あんなに簡単に観察できるのかとびっくりしたと同時に感動もしました。命をつぶしたみたいで、最初はいやだったけど、だんだんかわいくも見えてきて、1つの命で気づくことがたくさんあるんだと、ひとつの卵に感謝の気持ちも抱きました。最後に話してくれたお話も、非常に興味深いものでした。
・すごいおもしろい実験でした!心臓が動いているのが見えたときは、「本当に生きてるんだな」って思いました。心臓が止まったときにあたためたら動いたのでそのときはなんとなく嬉しかった!
・初めて有精卵を使った観察をしてみて,胚っていうのはこういうのなんだー。って素直に実感しました。今回は首都大の人が来てくれなかったら、経験することのない講義でした。2日目に心臓が動いているのを見て、なんか嬉しくなった。生物は不得意だけど興味を持ててよかったです!
・今回卵を使った実験で成長途中の姿を見ることで、普通の生物とは違ったおもしろさを持った授業を受けることができました。また、この前のような実験ができて生物への興味が前より持てるようになったと思います。ありがとうございます。
・生命ってすごいなぁーって思いました。もっと自分も友達も家族も生き物全てを大切にしていきたいと改めて思いました。いい体験になりました。
・卵の実験もすごくおもしろかったけど、消化管の話がとても印象に残っています。分泌因子が出てるかどうかを調べるときに、その実験方法とか過程とかを自分で考えてやるというのがすごくおもしろそうで、自分も大学に行ったら、自分で考えて色々な実験をやってみたいと思った。
・わたしは、理科があまり好きではなく、実験もいやだなと思っていたけど、今回の実験はとても楽しかったです。“胚”は、私が思っていたのとは、ぜんぜん違くて、びっくりしました。またこんな実験したいです!!



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