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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 日米大学院交流企画―日本の自然勉強会―
実 施 者: 武智玲奈、松田尚子、白井剛、土屋香織、前田尚子(動物生態学研究室)、鈴木智之、石神唯、張替鷹介、水谷紘菜(植物生態学研究室)、常木静河、森啓悟、須貝杏子、山本薫(植物系統分類研究室)、西谷真一、山本浩平(環境微生物学研究室)、鈴木祐美子、粕谷雄志(神経生物学研究室)
実施場所: 首都大学東京南大沢キャンパス、高尾山、井の頭自然文化園、鎌倉市
実 施 日: 2008年 10月 14日
対  象: 生命科学専攻の教員及び院生、アリゾナ大学のコプロウスキー博士の研究室

<概要/目的>
 動物生態学研究室は2008年10月12日〜19日に渡り、John L. Koprowskiと彼の研究室に所属している5名の大学院生(E. Munroe, Sandra L. Doumas, Seafha Blount, Nichole L. Cudworth, Rebecca Minor)を首都大学東京に招き、13日および14日には本研究室の大学院生が主体となって、小型哺乳類の行動と保全生態学に関する国際シンポジウムと国際セミナーを開催した。これに付随し、本大学の院生の英語でのコミュニケーション能力を高め、アリゾナと日本の自然や文化の相互理解を深めるために、他の研究室に所属する生命科学専攻の大学院生も積極的に関われるような国際交流企画イベントを複数行った。

<企画としての特徴>
 日米の自然と文化の国際交流企画など5つの院生企画の行事を開催し、他の研究室から多数の学生が参加し、John L. Koprowskiおよび5名の院生と交流すると共に、日本の自然や生態系について議論することができた。

<実施内容/成果>
10月14日(火)
 「キャンパス内の自然観察会と飼育棟の案内」という院生企画を実施し、総勢15人が参加した。南大沢キャンパス内の松木日向緑地に生息する動植物を観察しながら、生き物に関する解説や、野生生物の調査方法(カメラトラップなど)を紹介した。また、8号館北側の飼育棟に案内し、ナマコ類やアメフラシ類などの海の生物を紹介した。

10月15日(水)
「高尾山での自然観察会」という院生企画を実施した。植物生態学研究室、環境微生物学研究室、植物ホルモン機構研究室の大学院生も参加し、総勢17名で高尾山を訪問した。登りは高尾山特有の温帯林の樹木が茂るコースを通り、植物や鳥、野生動物のフィールドサインなどを観察した。下りは薬王院を経由して、さる園でニホンザルを観察した。


10月16日(木)
 「井の頭自然文化園の見学会」という院生企画を実施した。総勢16人で、日本固有の動物を多数展示している井の頭自然文化園を訪問した。ニホンリスの飼育施設や展示施設については、アリゾナで絶滅が危惧されているリス類の繁殖にも適用できるのではないかと熱心に見いっていた。
 夕方から「日本とアリゾナの自然に関する座談会」という院生企画を実施した。イニシアティブ交流スペースにおいて、日本やアリゾナの自然の特徴や、そこで行われている生態学の研究などについて、分野外の院生にもわかりやすいように英語で発表を行い、20名ほどで議論を行った。プログラムは以下の通り。

16:00-16:05 はじめに
16:05-16:35 アリゾナの自然について(アリゾナ大学の院生)
16:35-17:00 東京の自然とアオサギの生態について(白井剛、動物生態)
17:00-17:30 小笠原諸島の特徴と研究紹介(常木静河・植物系統)
17:30-17:45 小笠原諸島の外来種問題について(石神唯・植物生態)
17:45-18:15 南硫黄島ビデオ上映 (中村朗子・植物系統)
18:15-20:00 食事会

10月18日(土)
 「鎌倉でのタイワンリス観察会」という院生企画を実施し、総勢13人が参加した。外来種であるタイワンリスを実際に観察しながら、外来種問題と固有種の保全について議論した。まず佐助稲荷へ行き、タイワンリスの巣を見ることができた。次に銭洗い弁天に行き、タイワンリスの姿を確認することができた。タイワンリスは捕食者の種類(ヘビ類、哺乳類、猛禽類)に応じて警戒音声を使い分けることが知られている。ここでは哺乳類の捕食者に対する警戒音声を聞くことができた。最後に訪れた大仏(高徳寺)では、10頭を超えるタイワンリスを観察することができた。タイワンリスの分布拡大の起点となった江ノ島を眺め、帰路に着いた。

<感想/課題>
○14日に行った松木日向緑地観察会では、自身が緑地内で実際に調査を行っていた地点に行き、コプロウスキー博士とその学生に実験内容について紹介した。15日の高尾山における観察会では、山道に設置された高尾の野生動植物に関する掲示板について説明をし、さる園では飼育員の方のニホンザル郡の社会構造と順位関係に関する解説を受け、この通訳を試みた。16日には座談会に参加し、その後の懇親会で両国の大学院生の生活、進路について議論を交わし、18日には鎌倉の大仏の脇でタイワンリスが採餌する様子を、リス研究者である彼らと共にじっくりと観察した。私の英語はたどたどしいものであり、伝えたいこと・聞きたいことは山ほどあったが、実際に話すことができたのはほんの一部であった。しかし、上記のように全日程で学術的な議論や説明を行うことができたので、非常に刺激的であった。今後もバイオカンファレンスなどで英語を使う場面が続くが、この経験を活かしてより多くの人と話し、自身の英語力を鍛えたいと思った。(松田)
○14日(火)の緑地観察会では、アカネズミのオニグルミ種子食痕を見つけ、自身の行っている採食技術の上達について話をした。英語での緑地観察会は初めての経験で、企画も前半ということもあり、なかなか伝えたい英単語が出てこずに苦労した。15日(水)の高尾山では、高尾山の自然を紹介したが、植物に関する知識が乏しく、充分な解説ができなかったのが残念である。今後の自然観察会のためにも、自然に関して幅広い知識を身につけられるようにしたい。また、予定よりも時間が大幅に遅れてしまったので、適切な登山ルートに変更するなど、柔軟な対応が必要であったと感じている。16日(木)の井の頭自然文化園の見学会では、そこで行っているニホンリスの繁殖や教育普及の取り組みなどを紹介し、とくにアリゾナ大学の人たちに高い関心を持ってもらうことができた。ここでの反省点は、時間配分がうまくいかず、ニホンリス以外の動物をじっくり観察する時間が少なくなってしまったことである。夕方の座談会では、アリゾナと日本の自然について、お互い興味を持って議論し合うことができた。企画を全体を通して、英語で説明をすることに慣れることができたと思う。また、本企画では、全体のとりまとめ役の一人として携わり、全体の指揮をとることの難しさや、情報を共有することの大切さなどを学ぶことができた。課題も多くあるので、この経験を活かし、今後の研究活動やアウトリーチ活動に役立てていきたいと思う(武智)。
○14日の飼育棟の案内で、英語による水生生物の紹介を行った。これまでに、何度か日本語での説明を行ってきたが、英語での説明は初めてだったので、準備が必要だった。生物の一般名や、エサなど、英語では知らないものが多く、辞書で調べながらの準備になった。そのことによって、研究を行う上でも必要な単語を身につけることができた。しかしながら、準備を行ったのだが、当日の案内は思うようにいかなかった。それぞれの動物を順番に説明していく予定だったが、参加者をうまく統率することができず、それぞれが自由に飼育棟内の動物を見て回ることになった。全ての説明を全ての人に行うことはできなかったが、興味のある生物を長い時間見ていられたので良かった面もあると思う。次に同じような機会があれば、飼育棟に入る前に簡単に全ての動物の説明を行ってから、飼育棟内を自由に見てもらうなどの工夫が必要だと感じた。(粕谷)
○15日の高尾山自然観察会に同行した。メインが動物の調査であるため、専門的な話は中々出来なかったが、コミュニケーションの取り方や対応の仕方の勉強にはなったと思う。自分としての課題は山積みではあるが、問題点が分かった分だけためになった企画だった。この問題点を少しずつ解消し、次回に繋げていきたいと思う。(山本浩平)
〇15日の高尾山自然観察会に同行した。植物や動物の知識に乏しく説明するとまでいかなかったことが残念である。しかし、高尾山に祭られている天狗や地域のお祭りなどについて説明することができ、英語でのコミュニケーションにおいてはたいへん勉強になった。この経験を次の企画等に生かせるように努力していきたい。(西谷)
○14日のキャンパス内の緑地観察会および15日の高尾山での自然観察会に参加した。英語で動植物を説明するために事前に英名や表現を調べたり、アリゾナの大学院生の会話を通して、英語での動植物に関する語彙・表現を学ぶことができた。しかし、説明したかったことがうまく説明できなかったことも多く、日ごろから英語での説明を意識して英語を勉強したり自然観察を行っていく必要があると感じた。(鈴木智之)
○16日の「日本とアリゾナの自然に関する座談会」で小笠原諸島の外来種について発表しました。英語でプレゼンテーションを行うのは初めての経験だったので、スライド作りや話し方などすべてが非常に貴重な経験となりました。発表後、アリゾナ大学の方からいくつか質問をしていただき、それにつたない英語ながら答えることができたことがとても嬉しかったです。今後も、アウトリーチ活動などを通した国際交流に積極的に参加し、英語での研究コミュニケーションスキルを磨いていきたいと思います。(石神唯)
○14日のキャンパス内の緑地観察会および16日の井の頭自然文化園の見学会に参加した。緑地での観察会はこれまでにも何回か行ってきたが、動植物の名前や特徴を英語で伝えるのは初めてであり難しかった。しかし、学名や英名を調べて伝え、アリゾナの植生などについても会話をしながら緑地を散策できたことはよい経験になった。井の頭自然文化園では、動物についての知識が乏しく、専門的な話をすることがあまりできなかったのが残念だったが、リスをはじめとした多くの動物の観察を通してアリゾナの学生と交流を深めることができた。今後も様々な企画や授業などを通して英語でのコミュニケーションに慣れていきたいと思う。(水谷)
○16日の「日本とアリゾナの自然に関する座談会」で、『小笠原諸島の特徴と研究紹介』を担当しました。英語でのプレゼンテーションでは、みんなで完成したプレゼンテーションを予行演習しながら、持ち時間内にどのようにわかりやすいことばで伝えるのかを考えながらつくりました。発表後に、アリゾナ大学の方々が、すべておもしろい発表だったと言ってくださっていたので、発表者の一人としてとてもうれしかったです。今回の経験を今後、国際学会などで生かしていければと思います。(常木静河)
○14日の飼育棟の案内で、英語による水生生物の紹介を行った。飼育中の動物の中でも、特に自分の実験動物について詳しい英語での説明を準備して望んだ。しかし、こちらから一方的に紹介した後、動物に実際触れてもらうことにとどまり、実験動物の生態についてディスカッションすることはほとんどできなかったのが残念だった。もっと紹介の仕方を工夫する必要があると感じた。だが、16日の座談会にも参加することができ、そこで研究の話も含め、たくさん英語での会話をすることができたので、とてもいい経験になった。この経験を今後のアウトリーチ活動に生かしていこうと思う。(鈴木祐美子)

©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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