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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 宝仙学園中学校 生物学特別実習―動物たちのひみつ―
実 施 者: 鈴木祐美子・粕谷雄志・太田雄一朗
実施場所: 首都大学東京南大沢キャンパス8号館 287室、247室、イニシアティブスペース
実 施 日: 2009年 1月 30日
対  象: 宝仙学園中学校1年 37名

<協力者>
学部生:阿部清加、渡辺健太

<概要/目的>
 実際の生物から学ぶことのできる実習は生物教育において重要であるが、中学校で行える実習内容には制限がある。本企画では大学院生の専門知識や大学の機器・試薬を利用し、中学校では実施することの難しい実習を提供した。
 中学生の生物に対する理解および興味の向上とともに、実験器具や試薬の使用法を学ぶことを目的とした。また大学院生の説明能力の向上を目的とした。

<実施内容>
 生徒37名を2グループに分け、以下の2つの実習を行った。

1.ニワトリ胚の観察(担当:阿部、渡辺)120分 生物学基礎実習室
 産卵後3.5日のニワトリ受精卵を中学生に自ら開けさせ、ニワトリ胚の観察をさせた。
 ニワトリ胚はタイロード液(生理的塩類溶液)に浮かべ、双眼実体顕微鏡を用いて観察させた。
 

2.アメフラシの解剖(担当:太田、粕谷、鈴木)120分 生物学専門実習室
 アメフラシ外部形態の観察後、中学生に自ら解剖させ、中枢神経系をはじめ各種器官の観察をさせた。
 麻酔は塩化マグネシウム溶液を注射し行った。標本は濾過海水中に浸し、双眼実体顕微鏡や明視野顕微鏡を用いて観察させた。
 

※実習には解剖道具や注射器を用いたため、中学生への注意を促すとともに全ての班に眼が行き届くようにした。

昼食はイニシアティブスペースでとり、中学生と大学院生(および学部生)間の交流を深めた。

<昨年度からの改善点>
 昨年度も宝仙学園中学校を対象に類似の企画を行った。(2008年2月13日実施:宝仙学園中学校1年生-ネイチャープログラム)
 今年度は実施項目を減らし、各項目をより深く学べるようにした。実施項目は中学生が自らの手を動かし主体的に関われるものを採用した。

<感想/課題など>
太田:実習の実施までにアメフラシの採集、具体的実施内容と時間配分の決定、配布資料の作成と多くの準備を研究活動の間を縫って行った。時間的制約の中どれだけ質の良い実習を行えるかを試行錯誤したことはとても勉強になった。
実習では自分の思惑と子供たちの興味の方向性の相違に戸惑ったが、教わることよりも感じることの方が大切ではないのかと思った。教育者ではなく大学院生として実習を提供することの意味、ひいては自身の研究内容をどのようなアプローチで一般の人々に伝えるかということを考えるきっかけとなった。

鈴木:普段見ることのできないものを観察させ、印象に残るような内容の実習にしようと考え、アメフラシの解剖をすると決めた。しかし、中には解剖が初めてだという子も多く、解剖道具の扱い方への注意や、動物に触れるのをためらっている子への対応へは特に気を遣った。1人1人の質問に答えつつも、解剖の作業は手伝わず、生徒たちが自らやるように促した結果、最後には生徒は各自夢中で観察していたので、生徒たちのいい経験になったのではないかと思う。時間配分と顕微鏡をもっとうまく使わせることができれば、もっと細部の観察ができただろうというところが、課題である。
発生プログラムで担当していただいたニワトリ胚の観察も生徒たちは驚き、楽しんでいたようで印象に残すことができたのではないかと感じた。

粕谷:今回の実習で、当初の「生物に対して興味を持ってもらう」という目的は、個人差はあっても達成できたと思う。中には、アメフラシの貝がらや、消化管内の構造物をお土産にと持ち帰る生徒もいるなど、楽しんでもらえたという実感がある。
今回の実習は2班に分かれて行ったが、同じ内容であったにも関わらず、2班の反応には明らかな違いがあった。1班目は、とても積極的で、質問も次々に出され、実習時間が足りなくなった。2班目は、1班目と比べ、質問はそれほど多く出ず、最後の方では、早く帰りたそうな生徒もいた。
1班目が良かったのは、積極的に実習に参加する生徒が1〜2人いて、周りの生徒もそれにつられる形で楽しんでいたからではないかと思う。
こういった実習を行う上で、積極的な生徒を巻き込んでいくことも重要だと感じた。
©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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