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生命科学専攻
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「大学院教育改革支援プログラム」:アウトリーチ

タイトル: 都立大付属高臨海実習2009
実 施 者: 鈴木祐美子、粕谷雄志、王穎真(神経生物学研究室)、戸井裕子(環境微生物学研究室)、小林正明、山澤拓実、渡辺健太(発生プログラム研究室)
実施場所: 神奈川県葉山町鐙摺海岸
実 施 日: 2009年 5月 26日
対  象: 同高校2年生 生物選択者64名

<協力者>
小林まや(動物生態学卒業生)、武智玲奈(動物生態学研究室)、山田沙佳(神経生物学研究室)

<概要/目的>
東京都立大学附属高等学校では、毎年首都大学東京の学生と共同で、臨海実習を実施している。
海には、ほぼ全ての動物門が存在し、生物の多様性を学ぶ上で非常に重要なフィールドとなっている。その中でも潮間帯には、多様な生物が生息している上、干潮時には潜ることなく、容易な観察が可能である。
本実習では、磯に生息する様々な動物から藻類まで、その周りの生息環境も含めて、自分の目で見て、触り、多様性を学習する。そして、普段見ることの少ない動物門についても観察することにより、生物の多様性を学んでもらう。
 

<方法/企画としての特徴>
2008年5月15日に同高校で臨海実習に先立つ事前授業を行っている。
授業では、当日の注意事項、生物の系統分類などの説明を行った。


<活動内容/具体的成果>
◎指導員の事前勉強会(5月22日)
事前授業で生徒に伝えた内容を共有した。また、これまで鐙摺海岸で採集した生物のリストを改訂し、実習で見つかる生物の名前や特徴などを確認した。

◎臨海実習(5月26日)
・採集準備(9:30〜10:30)
生徒の到着前に、指導員で、事前に磯の下見を行った。前もって、生物のいる場所や危険な場所の確認を行った。生徒が到着したら、5〜8名の生徒につき1名の指導員の担当を決め、お互いに自己紹介をし、注意事項などの説明を行った。
・磯採集(10:30〜12:30)
班毎に磯に出て、採集を行った。指導員は、班員の安全を確認しながら、なるべく多くの動物門を採集するように促した。生徒は、初めて見る生物に驚きながら、積極的に生物の採集を行っていた。自分とは違う班の生徒と、珍しい生物を見せ合う光景もよく見られた。潮が最も引く時間に合わせて、沖に出るように指示し、満ちてくる時間帯に、採集を終えた。
・採集後の解説(12:30〜13:30)
各班毎に、採集した生物をバットに移し、生物の分類・同定を行った。図鑑で調べることと並行して、指導員による解説を行った。他の班が採集した生物も互いに観察し合い、多くの門にわたる多種多様な生物を観察することができた。
観察や簡単なスケッチの後、採った生物を海に戻させた。


採集の様子@


採集の様子A

<感想/課題など(企画力/評価力/自主性等の向上を含む)>
私は本臨海実習への参加は3回目だったため、一方的な知識提供のみでなく、より対象者の自主性を尊重するよう心がけた。特に「これは○○だよ」ではなく「何だと思う?」と考えさせ、答えてもらい、記憶に残りやすい指導ができたと思う。事前授業で紹介した動物の事を覚えていてくれた対象者も多く、嬉しかった。
また、共同企画者・協力者に対しては、初参加の指導員を例年より多い4人とし、新指導員の育成を目指した。事前勉強会で知識の共有を活かし、各自積極的に指導してくれたので、大きな怪我などもなく、無事終えることができてよかった。ただ、班ごとのまとまりに欠け、目の届かない部分もあった。次回からは対象者に班を明記した名札をつけるなどして、自分の受け持つ班員の把握をしやすくするとより良いと感じた。(鈴木祐美子)

 私は本臨海実習への参加は4回目であり、前回までの経験を生かしてより良い指導をしようと考えた。
具体的には、昨年来、自分の担当グループの把握が行き届かず、また細かい指導(磯の生物の見つけ方、採取方法等を、対面で伝える)もより良く行えればと思ったので、この点を改善出来ればと考えた。だが実習の場では、やはりグループの把握が余り上手く行かなかったように思った。
 だが同時に、積極的に担当する生徒を採集に誘った為か、生徒達が良いサンプルを多数採取して来てくれて、その為に、採集後の解説の際、生徒達は、自分達が実際に採集したサンプルを熱心に観察・質問し、説明をよく聞いてくれたように思う。また、事前授業で薦めた通り、スケッチをしている生徒も多かった。また事前授業で親しみを持って貰うよう心がけた為か、生徒達は親しく話しかけてくれて、より密度の濃い交流が図れ、生物学の一端の紹介というこの実習の目的のひとつをよく果たせたようにに思う。(反面、指導員と生徒という立場の違いを弁えないやりとりもあった(軽口が過ぎた)面もあったかも知れず、それについては反省している。)
  また今回は、採集などに極めて積極的な余り、沖の方に出ようとする生徒もいて、それらの人に対しては、以前より効果的に注意が出来たように思う。(戸井裕子)

 今回の臨海実習は、生徒にとって非常に有意義で、貴重な体験になったと思う。多くの生徒が主体的に、いろいろな生物を採集しようとしていた。班単位での採集のつもりであったが、時折ばらばらになり、こちらが把握しきれない場面もあった。しかし、班以外の人の採集した珍しい生物を、見せ合ったり情報を交換する場面も多く見られたことは良かったと思う。また、実習では、それぞれの生徒の個性が強く出ていた。採集にひたすら熱中する生徒や、珍しい生物ばかりを探す生徒、岩場でよく休憩する生徒など色々な生徒がいて、興味深かった。
 指導する立場として、もう少し、生物の知識があれば良かったと思う。そうすれば、解説の際に、生徒がもっと興味を持ってくれるような説明ができたと思う。(粕谷雄志)

 今回受け持った生徒達は自ら進んで採集を行ってくれたので、採集するように促す努力はあまり必要無かった。ただし、生き物の分類や生物学的な特徴を説明しても、軽く返事をするだけであまり興味が無い様子だった。系統分類や進化などの概念的な学問に興味を持つ学生は少なく、高校生には難しいのかもしれない。生き物の体の造りや生態等を、より興味を持たせる工夫をして説明し、そこから系統分類の話に持っていくと理解されやすいかもしれない。(小林正明)

 本実習への参加は今回が初めてだったが、指導員側の打ち合わせが充実していたこともあり滞りなく終えることができた。生徒たちは率先して採集に取り組んでおり、指導員が採集へ促すような場面はほとんどなかった。ただ採集に熱中しすぎて、班がばらばらになってしまうことも多かった。生徒一人一人興味の対象は違い、班が入り乱れてしまうことはある程度仕方のないことなので、合図を取り合って危険な場所への侵入を防ぐなどの指導員側の対処の改善も検討すべきであると感じた。(渡辺健太)

私はこの臨海実習に今回初めて参加したが、短い時間で多くの生き物に触れることができる良い機会だと感じた。始めのうちは、どこを探すべきなのか生徒達は分からない様子であったが、時間が経つにつれて自発的に採集をすることができていた。しかし実習後半になると、班がばらばらになってしまい、全体を監督することが困難になってしまった。生物の解説をするだけでなく、ある程度班をまとめた状態で実習を行わせるよう指導すべきであったと感じている。(山澤拓実)

臨海実習は私にとってはじめてだったが、このうち色々な生き物の系統分類と生態等を復習して生徒たちに紹介した。臨海実習は生徒の勉強にとって非常に意義があると思うので、指導員として生徒たちに声をかけられた時基本の知識から一々教えて、より興味があることを紹介した。後半の時、班がばらばらになってしまったので、全体的に管理するのは大変になった。次回は、指導員側の事前準備をもっとしっかりしてから自分がやるべきことを把握できるようになりたいと思う。(王 穎真)

©2015 Department of Biological Sciences, Tokyo Metropolitan University
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