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生命科学科・大学院生命科学専攻
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(大学院)
細胞生化学研究室
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細胞生化学研究室の最大の特徴は、生化学的実験系と遺伝学的実験系とを連関させながら研究を進めていることです。細胞の増殖・分化・癌化・死に関わる新規遺伝子産物の同定と解析を進め、全体を細胞機能制御のための新しいシステムとして統合的に理解することを目標に研究を展開しています。いまだ未解明な点の多い細胞レベルの基礎研究から、医療を含めた様々な応用研究へと新領域を開拓することを目指しているのです。
所属教員
川原 裕之・教授
横田 直人・
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 大学院受験希望の方は、是非、研究室を見に来て下さい。
研究内容
(1)プレエンプティブ品質管理を介した膜タンパク質の選択的分解機構
 タンパク質生合成に至る遺伝子発現プロセスには、mRNAスプライシングの不良や各種オルガネラへの配送異常など、多岐にわたるリスク要因が存在しています。正常な立体構造の形成に失敗した不良ポリペプチド群は、本来は分子内部にパッキングされるべき疎水性残基がタンパク質の分子表面に露出し、細胞質で凝集しやすい傾向を持ち得ます。これら不良構造をとった新合成タンパク質の多くは、生成した直後にその異常性が認識され、分解系にターゲットされるのですが、不良ポリペプチドの認識・分解がうまくいかないと、その蓄積・凝集体形成から、神経変性疾患や免疫異常など種々の病理的現象が誘導されます。このように、新合成不良タンパク質の認識・分解系は、私たちの体の恒常性維持にきわめて重要ですが、その分子メカニズムにはいまだ不明な点が多く残されています。

 細胞質リボソームで新合成された膜タンパク質(あるいはインスリンなどの分泌タンパク質)は、そのN末端にシグナル配列を持ち、シグナル配列認識粒子(SRP)とトランスロコンの働きを介して、粗面小胞体内腔へと輸送されます。一方、意外なことに、このプロセスの成功効率は必ずしも高くありません。特にストレス条件下では、シグナル配列の認識不良などが誘起され、シグナル配列をN末端に保持したまま(正常な小胞体内プロセシングを受けないまま)の不良膜/分泌タンパク質が「細胞質」に蓄積します。これら凝集性の高い不良タンパク質の蓄積を防ぐため、新しい「細胞質性」分解経路の存在が予見され、「プレエンプティブ(pre-emptive:予防的)」なタンパク質品質管理と命名されました。

 私たちは、プレエンプティブ品質管理の中心的な因子としてBAG6を初めて見出しました。BAG6とそのコファクターUBQLN4は、不良インスリンなどをはじめとする新合成不良タンパク質を認識し、プロテアソーム依存的分解系に導くのです(Suzuki et al., EMBO Rep. 2019)。

 BAG6は、ヒト第6染色体MHCクラスIII領域にコードされるユビキチン様タンパク質として1990年に記載されていたものの、長らく機能不明の遺伝子産物として注目を集めることはありませんでした。私たちは、2005年にプロテアソームの結合因子としてBAG6を見つけてから実験を続けてきた結果、BAG6が不良構造を持つ新合成ポリペプチドを特異的に認識して、これらをプロテアソーム系にリクルートする役割を持つことを世界で初めて見出したのです(Minami et al., J. Cell Biol. 2010)。

 ヒトゲノムにコードされた全ポリペプチドの約1/3が、膜タンパク質(あるいは分泌タンパク質)です。健康な我々の細胞でも、膨大な数量の不良ポリペプチドが日常的に産生され、BAG6(プレエンプティブ品質管理)の顧客として処理されていることがわかってきました。一方、このシステムがうまく働かないと、神経変性疾患や知的障害、1型・2型糖尿病、免疫疾患、発癌リスクの上昇など、多くの病態と関係することもわかっています。現在、研究室では、BAG6を中心としたプレエンプティブ品質管理機構の作動メカニズムと生物学的意義について、研究を進めています。

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(2)ユビキチン化を介した低分子量Gタンパク質の新しい機能制御
 BAG6の機能を解している過程で、私たちは低分子量Gタンパク質群が、プレエンプティブ品質管理システムの新しい標的となっていることを見つけました(Takahashi et al., EMBO Rep. 2019)。

 Rabファミリー低分子量Gタンパク質は、メンブレントラフィックを制御する単量体GTPaseです。Rabタンパク質は、GTP結合型とGDP結合型をサイクルすることにより、その立体構造や機能、細胞内局在が変化します。低分子量Gタンパク質の活性制御は、ヌクレオチド交換(GTP-GDP交換サイクル)から説明され、世界中の教科書にもそのように記載されています。

 一方、出発オルガネラと到着(目的)オルガネラが物理的に隔たるRabファミリーGタンパク質の場合、到着地で不活性化(GTP加水分解)されたGDP型Rabタンパク質が、その後どのような運命をたどるのかは、ほとんど理解されていませんでした。さらに、GDP型の蓄積が小胞輸送に重篤な障害を引き起こすことが、かねてより種々のRabファミリータンパク質について報告されていました。これらの結果は、細胞質のGDP型Rabタンパク質は低い量的水準に抑えられ、GTP型に平衡が偏っている可能性を示唆しています。

 一般に、GTP型(あるいは野生型)RabファミリーGタンパク質は長い半減期を示します。そのため、RabファミリーGタンパク質の選択的分解に関連した研究は、これまでほとんど存在しませんでした。ところが、私たちは最近、低分子量Gタンパク質の一つRab8aが、GDP型特異的にプロテアソームによる急速分解を受けることを見つけたのです(Takahashi et al.,EMBO Rep. 2019)。

 重要なことに、GDP型Rab8aの分解は、BAG6を中核としたプレエンプティブ品質管理システムが担っていることが判明しました。BAG6は、GDP型Rab8aタンパク質を認識し、これをポリユビキチン化することで、プロテアソーム依存的分解系に導いています。これらの知見は、低分子量Gタンパク質Rab8aに、タンパク質分解を介した全く新しい制御システムが存在することを示しています。

 低分子量Gタンパク質Rab8aは、主にゴルジ-エンドソーム間の小胞輸送を制御しています。そこで、これらのオルガネラに局在するタンパク質群をマーカーに、BAG6がメンブレントラフィックに与える影響を検討したところ、BAG6ノックダウンによって、Rab8aのクライアントとして知られるオルガネラに重篤な異常が生じることも見つけました。

 真核生物ゲノムにコードされる100種を超える低分子量Gタンパク質は、GTPaseドメインにおいて高いアミノ酸配列の相同性を示します。これらの低分子量Gタンパク質は、その機能異常が多くの疾患と結びつくことが報告されており、私たちはBAG6の機能不全時に誘導されるオルガネラ恒常性の破綻が、多くの病態と直結する可能性に着目し、これらの実験を進めています。
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(3)RNA結合タンパク質を介した細胞周期の調節機構
 mRNAの品質管理は、遺伝子発現の量的・質的制御と密接に関連しています。私たちは、モデル生物線虫を用いて、卵減数分裂の進行を司る新しいRNA結合タンパク質を同定してきました(Shimada et al., Genes Cells, 2002)。それが、CCCH型zinc-fingerタンパク質ZFP36ファミリーです。

 最近、私たちはヒト細胞に発現するZFP36が、細胞増殖の制御、特にG1期からS期への進行のプロセスに重要な役割を果たしていることを見出しました。例えば、ZFP36ファミリータンパク質が機能できないと、細胞はDNA障害チェックポイントの実行に異常を生じます(Noguchi et al., Biol. Open, 2018)。ZFP36ファミリータンパク質の量は、細胞周期依存的な変動を示し、G1/S期で極大を示すのですが、シスプラチン処理などでDNAに障害が生じた条件下では、ZFP36ファミリータンパク質の発現はさらに増強されます。増大したZFP36ファミリータンパク質は、G1サイクリンmRNA群の蓄積を抑制し、G1/S期停止を促します。

 最近、ZFP36ファミリータンパク質が、これまで知られていた細胞質だけでなく、核内にも多く蓄積すること、その蓄積はG1/S期にピークを示すこともわかりました(Matsuura et al., J. Biochem., 2020)。今後、ZFP36ファミリータンパク質の新しい核内機能が見つかってくることを期待しています。
最近の論文出版
Recent publications (2010-2020)
1. Matsuura, Y., Noguchi, A., Yokota, N., and Kawahara, H. (2020) Nuclear accumulation of ZFP36L1 is cell cycle-dependent and determined by a C-terminal serine-rich cluster.
J. Biochem. in press(本研究室の大学院生による論文)

2. Mimami, S., Yokota, N., and Kawahara, H. (2020) BAG6 contributes glucose uptake by supporting the cell surface translocation of the glucose transporter GLUT4.
Biol. Open. 9, bio047324.(本研究室の大学院生による論文)

3. Takahashi, T., Minami, S., Tajima, K., Tsuchiya, Y., Sakai, N., Suga, K., Hisanaga, S., Obayashi, N., Fukuda, M., and Kawahara, H. (2019) Cytoplasmic control of Rab-family small GTPases through BAG6.
EMBO Rep. 20: e46794.(本研究室の大学院生による論文)

4. Kamikubo, K., Kato, H., Kioka, H., Yamazaki, S., Tsukamoto, O., Nishida, Y., Asano, Y., Imamura, H., Kawahara, H., Shintani, Y., and Takashima, S. (2019) A molecular triage process mediated by RING finger protein 126 and BCL2-associated athanogene 6 regulates degradation of G0/G1 switch gene 2.
J. Biol. Chem. 294, 14562-14573.

5. Hayashishita, M., Kawahara, H., and Yokota N. (2019) BAG6 deficiency induces mis-distribution of mitochondrial clusters under depolarization.
FEBS Open Bio. 9, 1281-1291.(本研究室の大学院生による論文)

6. Demizu, S., Asaka, M., Kawahara, H. and Sasaki, E. (2019) TAS-203, an oral phosphodiesterase 4 inhibitor, suppresses goblet cell hyperplasia and MUC5AC production in rodent models.
Eur. J. Pharmacol. 849, 22-29.(本研究室の大学院生による論文)

7. Noguchi, A., Adachi, S., Yokota, N., Hatta, T., Natsume, T., and Kawahara, H. (2018) ZFP36L2 is a cell cycle-regulated CCCH-protein necessary for DNA lesion-induced S-phase arrest.
Biol. Open 7, bio031575.(本研究室の大学院生による論文)

8. Kondo, M., Noguchi, A., Matsuura, Y., Shimada, M., Yokota, N., and Kawahara, H. (2018) Novel phosphorelay-dependent control of ZFP36L1 protein during the cell cycle.
Biochem. Biophys. Res. Comm. 501; 387-393.(本研究室の大学院生による論文)

9. Xuan, X., Matsumoto, S., Endo, S., Fukushima, A., Kawahara, H., Saeki, Y., and Komada, M. (2018) Deubiquitinases USP5 and USP13 are recruited to and regulate heat-induced stress granules by deubiquitinating activities.
J. Cell Sci. 131, 1-11. doi: 10.1242/jcs.210856.

10. Yamamoto, K., Hayashishita, M., Minami, S., Suzuki, K., Hagiwara, T., Noguchi, A., and Kawahara, H. (2017) Elimination of a signal-sequence uncleaved form of defective HLA protein through BAG6.
Sci. Rep. 7, DOI:10.1038/s41598-017-14975-9(本研究室の大学院生による論文)

11. Suzuki, R. and Kawahara, H. (2016) UBQLN4 recognizes mislocalized transmembrane domain proteins and targets these to proteasomal degradation.
EMBO Rep. 17, 842–857.(本研究室の大学院生による論文)

12. Tanaka, H., Takahashi, T., Xie, Y., Minami, R., Yanagi, Y., Hayashishita, M., Suzuki, R., Yokota, N., Shimada, M., Mizushima, T., Kuwabara, N., Kato, R., and Kawahara, H. (2016) A conserved island of BAG6/Scythe is related to ubiquitin domains and participates in short hydrophobicity recognition.
FEBS J. 283, 662–677.(本研究室の大学院生による論文)

13. Takasugi, T., Saito, T., Asada, A., Kawahara, H. and Hisanaga, S.-I. (2016) Two degradation pathways of the p35 Cdk5 activation subunit, dependent and independent of ubiquitination.
J. Biol. Chem. 291, 4649-4657. doi: 10.1074/jbc.M115.692871

14. Yamaki, Y., Kagawa, H., Hatta, T., Natsume, T., and Kawahara, H. (2016) The C-terminal cytoplasmic tail of hedgehog receptor Patched1 is a platform for E3 ubiquitin ligase complexes.
Mol. Cell. Biochem. 414: 1-12.(本研究室の大学院生による論文)

15. Kuwabara, N., Minami, R., Yokota, N., Matsumoto, H., Senda, T., Kawahara, H. (co-corresponding author), and Kato, R. (2015) Structure of a BAG6 (Bcl-2-associated athanogene 6)-Ubl4a (ubiquitin-like protein 4a) complex reveals a novel binding interface that functions in tail-anchored protein biogenesis.
J. Biol. Chem. 290, 9387-9398.(本研究室の大学院生による論文)

16. Kawahara, H., Minami, R. and Yokota, N. (2013)
JB Review: BAG6/BAT3: Emerging roles in quality control for nascent polypeptides.
J. Biochem. 153, 147-160. (全著者は本研究室の教員・大学院生)

17. Kagawa, H., Shino, Y., Kobayashi, D., Demizu, S., Shimada. M., Ariga, H. and Kawahara, H. (2011) A novel signaling pathway mediated by the nuclear targeting of C-terminal fragments of mammalian Patched 1.
PLoS ONE  6: e18638.(本研究室の大学院生による論文)

18. Sato, K., Minegishi, S., Takano, J., Plattner, F., Saito, T., Asada, A., Kawahara, H., Iwata, N., Saido, T.C., and Hisanaga, S. (2011) Calpastatin, an endogenous calpain-inhibitor protein, regulates the cleavage of the Cdk5 activator p35 to p25.
J. Neurochem. 117:504-515.

19. Minami, R., Hayakawa, A., Kagawa, H., Yanagi, Y., Yokosawa, H. and Kawahara, H. (2010) BAG-6 is essential for selective elimination of defective proteasomal substrates.
J. Cell Biol. 190: 637-650.(本研究室の大学院生による論文)

20. Ojima, K., Y Kawabata, Y., Nakao, H., Nakao, K., Doi, N., Kitamura, F., Ono, Y., Hata, S., Suzuki, H., Kawahara, H., Labeit, S., Toyama-Sorimachi, N., Suzuki, K., Maeda, T., Abe, K., Aiba, A., and Sorimachi, H. (2010) Role of dynamic distribution of muscle-specific calpain in physical-stress adaptation and muscular dystrophy in mice.
J. Clin. Invest. 120: 2672–2683.

21. 川原 裕之 (2021)
「プレエンプティブ品質管理を介した不良タンパク質のサーベイランスとその意義」
月刊「細胞」ニューサイエンス社 印刷中

22. 川原 裕之、南 雪也、宮内 真帆、高橋 俊樹 (2020)
「ミニレヴュー:プレエンプティブ品質管理を介した膜タンパク質の選択的分解機構」
生化学 第92巻第2号, pp.1-6.(本研究室の大学院生による論文)

23. 川原裕之(2018)
「膜/分泌タンパク質の生合成プロセスを監視するプレエンプティブ品質管理」
医学のあゆみ

24.川原裕之(2015)「ユビキチンによるタンパク質品質管理と疾患」
The World of UBIQUITIN Vol. 3

25. 川原裕之, 南亮介 (2011)「BAG6を介したタンパク質品質管理の新機構」
実験医学、第29巻、7月増刊号「細胞内のリノベーション機構:タンパク質分解系による生体制御」(村田茂穂,反町洋之編), 羊土社(本研究室の大学院生による論文)
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