トリエチルアミンによる麻酔法

麻酔剤

 トリエチルアミン(triethylamine)。ごく一般的な薬品で、試薬を扱っている業者から購入できます。値段もさほど高いものではありません。500ml入りが1本あれば、普通のところでは、何年も使えるはずです。なお、間違っても、トリメチルアミンを注文しないようにして下さい。悲劇が起こります。

使い方
 
 ポリエチレン製の洗浄ビンを使うと便利です。洗浄ビンのサイズは、100mlか200ml位のものが扱い易いでしょう。この中に、図に示したように、少量の綿を入れます。脱脂綿でもかまいません。なお、洗浄ビンのチューブが綿に接していると、トリエチルアミンの液体が直接吹き出す恐れがあるので、チューブの先端を切り取るか、あるいは引き出して、綿から充分離れるようにします。
 以上の準備ができたら、トリエチルアミンを1ml程度駒込ピペットで吸い取り、綿に染み込ませ、しっかりとフタをします。使う人数にもよりますが、普通は、1回補充すると1ー2日間は効果が持続しますので、1日のうちに何回も補充することは避けます。
 麻酔用の容器には、ガラス管ビンを使うと便利です。まず、麻酔したいハエを管ビンに移してから栓をします。穴付きスポンジ栓を用いれば、作業がしやすくなります。次に、洗浄ビンのチューブの先端を、図のように、管ビンの中に差し込んでから、洗浄ビンの胴を1ー2回押し込んで、気化したトリエチルアミンを管ビン内に送り込みます。
 トリエチルアミンは空気よりずっと重いので、管ビンの底に溜まります。このため、ビンの上の方にいるハエには効果がありません。トリエチルアミンを吹き込んだら、直ちにビンの底を叩いてすべてのハエを底に落とすようにし、上に登ってこようとするハエも、ビンの横を叩くようにして、下に払い落とします。さらに、ビンを小刻みに揺り動かしながらハエの様子を見守るようにし、全部のハエが動かなくなったら、できるだけ素早く選別板の上に出すようにします。 
 ビンから外に出したとたん、少し動き回るハエもいますが、飛んで行ってしまうようなことは、まずありません。もし、両翅を上にあげてバンザイをしているハエがいるようだと、麻酔が強すぎです。こういうハエは永久に目を醒ましません。このようなときは、送り込む麻酔剤の量を減らすか、時間を短くします。
 うまく麻酔が効いた場合、30分から1時間後には、すべてのハエが覚醒するはずです。麻酔状態で飼育ビンにハエを入れると、餌の表面にくっついてしまうことがありますので、起き上がるまで、飼育ビンを横に寝かせておくようにします。なお、ハエを空きビンに入れたままにしておくと、乾燥して死んでしまうことがあります。

注意点